2016年7月6日水曜日

梅の塩漬け・失敗の巻

2週間ぐらい前、梅干しを仕込むにあたっての、最初の段階である、塩漬けに失敗した。結果、3キロ仕込んだ梅が半分になってしまった。

毎年梅干しを仕込み始めてから、18年たつが、これほどの失敗は初めて。(赤ジソを加えた後の)本漬け時に、若干のカビが生えたことは2〜3度あったが、今回は仕込んだ梅の半分がダメになってしまったので、規模が違った。「正統派・梅干しレシピ」なんてのを書いてる者としては、何とも格好悪く、ショッキングな出来事ではあるが、こういう事ほどネットに上げておかねばと思い、パソコンのキーを叩く。

どんな失敗かというと、梅の塩漬けの段階で、梅酢がなかなか上がらず(2〜3日で上がって欲しいところ一週間かかってしまった)、その間に重石と自重で梅が傷み、カビが生えてしまったのだった。

しかし、大事なこととして、2点。まず無農薬の「完熟梅」というちょっと珍しい梅を使ったということ。もうひとつは、「せっかく無農薬なのだから」ということで、「水洗いせずに塩漬け」をしたということがある。私としては、チャレンジの意味もあった。とは言うものの、2年前には「水洗いせずに塩漬け」で成功していたので、今回は軽い気持ちのチャレンジであった。

さて、2年前の梅干しに関するエントリで、以下を書いた。

●洗わない「完熟手もぎ梅」(2014年6月16日)

で、今年も、希少品である「完熟梅」で仕込んだ。ただし今年のは、2年前購入した大分の菊の助さんの「完熟手もぎ梅」ではなく、他の農家さんの(手もぎかどうかは不明な)「完熟梅」。どちらも無農薬だ。この「完熟梅」も以前2度使ったことがあるし、仕込むときに、「手もぎ」との大きな違い(主に見た目と香り)は感じなかった。が、今思い返すと、菊の助さんの「完熟手もぎ梅」は、送られて来た箱の中で、すでに数個の梅が使えないぐらい傷んでいた記憶がある。一方、今年の「完熟梅」はそれがなく、全部使えた。・・・・ということは、同じ完熟梅でも、「手もぎ」か否かだけでなく、厳密にはその完熟度に違いがあったかも知れない。

そしてもうひとつの大きなポイントは、「水洗い」工程の有無。ここで誤解してもらっては困るのは、「水洗い」するときれいになる、ということではなく、私の考えでは、「水洗い」することで、塩の浸透圧を促せるという点だ。

この「水洗い」を少し説明しよう。

梅干しの最初の段階で、通常は、主にアク抜きのために、塩漬け前に一度水に浸す。あんまり熟してない青みがかった梅は3〜5時間、完熟ものは浸しても1〜2時間、浸さず水洗いして陸上げでもいいと思う。いずれにしても、水を通すことになるので、(ある場合は)農薬や汚れもある程度落とすことにもなるのだが、それよりも大きなことがあると思っている。

我が「カンホアの塩」の「正統派・梅干しレシピ」では、こうして水に浸して水切りした後、「まだ梅の表面が乾かぬうちに塩をまぶす」と書いている。これはその表面に残った水分が呼び水になって、塩が梅に絡みやすくなるからだ。こうすることで浸透圧がより促され、梅酢が出やすくなり、傷んだりカビたりしにくくなる。

したがって、逆に「水洗いせず」の場合、塩が梅に行き渡りにくくなり、梅酢が上がるのにより時間がかかる。2年前の「完熟手もぎ梅」もそれを心配しながらだったのだが、3日目に梅酢が上がり、「あー、なんだー、心配するほどじゃなかったなー」と思った経緯があった。それで、今年も「まー、完熟なら大丈夫だろう」と高をくくっていた。

ところがドッコイ。

今年の「完熟梅」は3日たっても一向に梅酢が上がってこない。「あれ〜?」とは思ったものの、3日目まで来て今さら塩にまみれた梅を水洗いすることも出来ずに、時間は過ぎていった。そして、ちょうど一週間後(7日後)、ようやく梅酢が上がった。さらに一週間、不安はあったものの、赤ジソの入手までそのまま放置。(この時点で一度重石をはずして梅をチェックした方がカビは少なかっただろう) そして赤ジソの塩もみが終わったところで、恐る恐る重石を外して梅酢に漬かった梅を瓶から取り出した。それが、下の写真。左側が傷んでしまったりカビが生えたりしてしまった梅で、右側が辛うじて救出した梅。あー、ショックです。18年目にして初めてだし。これを育てて、完熟するまで待って収穫してくれた農家さん、ごめんなさい。半分になってしまいました。
決していい見た目ではないが、傷みカビが生えた方の写真をアップで撮ったものがこれだ。
 さー、ここから気を取り直して、現実的に、次は何をすべきかだ。

まず、梅酢自体、やや濁っていたので、茶漉しで漉した。コーヒーフィルタの方がより漉せたが、気持ちに余裕がなかったな。また、カビは確実に梅酢の中に混じっているので、茶漉しで漉した梅酢を、火に掛けた。ゆらゆらと湯気が立って、沸騰する前に火を止めた。(温度計を差すのを忘れたが、だいたい70〜80℃ぐらいだったと思う) そして、一晩置いて冷ました後、通常の梅干しの工程に戻り、塩もみしたシソの葉を挟みながら、残った梅を本漬けした。現在、それから10日ほど経過したが、カビは発生していない。

そして、つい2〜3日前、同じ「完熟梅」をハチミツに漬けたのに若干だがカビが発生しているのに気がついた。ハチミツ漬けにカビが生えたのは初めてだった。ハチミツに漬けたのは(ドサッと塩を撒いて)塩漬けしたのと同じタイミング。んー、やはりこの梅自体が、「完熟手もぎ梅」よりもカビが生えやすかったということが言えるかも知れない。同じ「完熟梅」でも、これが「手もぎ」か否かの違いなのか。

1.(手もぎではない)「完熟梅」の場合は、(手もぎと違い)水洗いした方がいいようである。ただし、完熟なので、時間は短めに。
→見た目は概ね同じだが、2年前に一度だけだが、「手もぎ」は「水洗い」しなくてもよかったので、(手もぎではない)「完熟梅」の場合は、それが無難そうだ。くどいようだが、それは洗浄の意味ではなく、呼び水という意味だ。

2.厳密な完熟度が影響している可能性
→今年の「完熟梅」だって、見た目は完熟だった。一年をまたいで厳密に比べることは難しいが、完熟度が高いほど、梅酢が上がるのは早いハズだ。今回のカビの原因は、この点も大きく影響したように思っている。

3.品種・産地の違いはあるのか?
→梅の見た目からして、それはないように思っている。

来年は、改めてもう一度、菊の助さんの「完熟手もぎ梅」で、あえて「水洗いせず」にやってみようと思う。

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