2007年6月21日木曜日

暑い里芋


3週間ぐらい前、ある料理屋さんへ行ったら、里芋の料理が出た。同席した人に、ぼくが「里芋、好物なんですよね〜」と言うと、「でも、今じゃないですよね」とつれない反応。確かに里芋と言うと、芋煮会とか秋のイメージかも知れない。でも、暑さを感じるこの季節になると、どうも里芋が恋しくなる。

それは、もう20年以上も前にタイにいたときのこと。何も特別なことはないある片田舎の食堂に入った。暑くてやや食欲がなかったので、カレーを注文。出てきたのは里芋のカレーだった。特に意識することなく食べ始めたが、「うまいな〜」と思いながら「こりゃ何だ〜」と意識したら、里芋だった。日本では、里芋もカレーもとてもポピュラーだけど、里芋のカレーはあまり見かけない。でも、これが大変うまい。里芋のネットリ感や土っぽい素朴な味わいがスパイシーなカレーととてもよく合う。その後、ちょっと調べてみると、里芋の原産地はどうもこの東南アジア界隈らしい。(思えば、カボチャだって「カンボジア」が原産とは有名な話?)このときを境に、ぼくの里芋感は変わり、暑い季節の根菜となった。だから、先日料理屋さんで里芋が出たときは、ちょっと嬉しかったんですね。ちょうど暑くなりかけてたし。

家に帰って、ときどき築地へ行くカミさんに「ねぇ、今築地に里芋って出てる?」と聞くと、「まだ高いけど、出始めてるよ」とのお答え。実は、3週間前に行ったその料理屋さん、川魚料理が売り。なのにぼくらが行った5月下旬は鮎の解禁直前。川魚は、鯉のあらいのカルパッチョだけだった。板前さん、気張ってハシリの早生の里芋を使ったんだろーなーと思うと、何となく板前さんと里芋が不憫に感じられた。その思いを引きずっていたぼくは、夕べ、オーソドックスに里芋を蒸して塩で食べた。「ん〜、やっぱりおいしい」 フーフーして食べる芋煮会もいいけど、暑い中、食す、キヌカツギやカレーもおいしいよな〜。

2007年6月14日木曜日

竹寺


1週間ほど前、埼玉の竹寺というお寺で昼食を食べた。埼玉にしては結構な山の中にある。精進のそば定食、1500円だったか。「きょうは天気がいいから竹寺行きましょう」ということで、地元のお客さんに連れてってもらい、おごってもらった。そばと言えど、精進だから、そばつゆも鰹の香りはしない。自宅でもたまに精進のそばつゆで食べるので、やや自分ちで食べてる感じもした。写真にあるとおり、そば切りは緑色。竹だか笹の粉末が練り込んであるらしい。ややつるっとした食感だった。この定食で一番印象深いのは、何と言っても写真のやや奥にある天ぷらだ。柿の葉・桜の葉・紅葉の葉・ウドetc.。この手の天ぷらはやっぱ塩だろー、ということで、塩を頼んだ。(頼まないと出てこない。)微妙な滋味深い精進ならではの味は、静かな感動があった。1週間前なので、細かには覚えてないが、その他聞いたことのない名前の山菜もとってもおいしかった。車でないとなかなか行けないところだが、県道から山道を入り、徐々に道が狭くなり、さらに舗装もなくなりで、盛り上がり感があった。このお寺の食事を語るには、このロケーションの説明は欠かせない。文字通り、周りを孟宗の竹林に囲まれた、小高い山の中腹ぐらいにある。受付はお札を売っているようなところ。そのとなりに宿坊のような木造の建物があり、その中で食べさせてもらう。初夏の風も非常に気持ちがいい。また、よほどの団体でない限り相席になるので、旅すがらに少しの縁のあった方々とちょっとした会話になる。これもこの竹寺での一興だ。仕事がらみで行ったけど、しばし仕事を忘れ、短い時間ながら、久しぶりにいい時間を過ごせた。仕事のそのお客さんには本当に感謝である。

ところで、何年か前、韓国へ行った際、知人に連れられ、光州から車で2〜3時間行ったところの尼寺へ行った。そこでも韓国風精進の食事を出してくれたのだが、竹寺で食事をしている間、その尼寺のことを思い出した。どちらも身近な葉っぱや草が食材で、料理屋とは違うホスピタリティー。それは何なのだろう。人や周りの雰囲気もそうだが、両方のお寺の料理にもそれを感じた。「おいしさ」について、また改めて考えさせられた竹寺だった。

2007年6月5日火曜日

空豆の丸焼き


空豆は大好物だ。寒さも遠のき、気持ちがゆるくなるこの気候にマッチしているせいかも知れない。ぼくの感覚で空豆は、冬野菜と夏野菜のちょうど間のようなもの。冬野菜の滋味深さと夏野菜の青さやみずみずしさが同居している感じだ。いつもはオーソドックスに軽く湯がいて塩をつけて食べるが、この日は「丸焼き」。空豆は思いの外、火が通りやすいので、湯がくときもそうだけど、火が通りすぎるとその魅力は半減する。この「丸焼き」のポイントは、強火で短い時間に火を通すこと。普通の魚焼きのグリルで十分おいしく焼き上がる。そとの皮が焦げれば、中はちょうどいい感じ。やはり茹でるより味が濃いし、塩茹ででは味わえないコゲの香ばしさも食欲をそそる。ん〜、やはり最初は塩だけで。おいしいなぁ〜。オリーブオイルもとってもあう。ビールだと枝豆感覚。お酒だと料理屋さんの突き出し感覚。

ところで、空豆にオリーブオイルと言えば、イタリアにも空豆とそっくりものがある。名前は忘れた。イタリアではそれを主に生で食すらしい。実は先日、それを入手して生で食べてみた。ほとんど空豆と一緒。その直後に、(日本の)空豆を生で食べてみた。「なんだ〜、同じもんじゃねーかー」って感じの味・食感だった。そして、2〜3日後の週末、日本の空豆と白シメジのスパゲティをアンチョビのソースで、その後日はフードプロセッサーで豆乳と合わせスープに。短い時期の食材だけど、その分、集中して食べる空豆。そのおいしさは限りない気になってしまう。