2018年11月19日月曜日

タンドールへの道・その10(終わりに)


 先週の金曜日、近くまで行ったこともあり、ランチしに立川のムガルキッチンを再訪。「タンドールへの道・その1」でも書いたように、今回、モバイル・タンドールを作るにあたり、タンドールを見学させてもらったレストランだ。金曜日は、バイキング・スタイルとのことで(1,080円)、カウンターに白飯から3種類のカレー、スイーツまでがずらりと並んでいる。12時まで20分ぐらいあったせいか、客は私一人。ちょうどいいと思って、話かけた。

「こないだ、1〜2ヶ月前、タンドールを見せてもらった者ですが・・・・」

「あー、ナンね。もう少し待って」

「・・・・そうですか。えーと、1ヶ月前、私、キッチンの中に入れてもらって、タンドールを見せてもらったんですが・・・・」

「あー、タンドリーチキンね。もーちょっと待ってねー」

バイキング・スタイルのランチ時間が、まだ始まったばかりのタイミング。焼きたてがおいしい、ナンやタンドリーチキンは、最後にバイキング皿にのせるようで、私が催促してると解釈されたようだった。私が期待したように「あ〜、あのときの人ね」とはなかなかならず、料理中でもあるし仕方ない。入店後、私はすぐにタンドールに目が行ったが、やはり「巾着パンチ」が脇にあった。直径20〜25センチぐらいか。タンドールが大きい→ナンも大きい→「巾着パンチ」も大きい。

バイキングの料理を皿にとり、テーブルについて食べ始めた。やはり、ここの料理はおいしい。味付けや料理法に感じるデリカシー。3種類のカレーは各々特徴があって、何気に切られているチキンや野菜(ナス・じゃがいも)の大きさもちょうどいい。町中にインド料理店は増えたが、よくある店とは一線を画している。スイーツも食べ終わった頃、ナンやタンドリーチキンを出し終えたシェフのお兄さんが話しかけてきた。

「あー、思い出した。あなた、来たよね。きょうも来てくれてありがと」

「あー、思い出してくれましたか。よかったー。あのときは、タンドールを見せてくれて、ありがとうございました。近くで見せてもらったおかげで、私、このぐらいの小さいのですが、タンドールを作りました。それに、ここの料理をまた食べられて嬉しいです。とてもおいしい」

「そーですか」

と、微笑んでくれた。ただ、「私がタンドールを作った」ということについて、彼はピンと来てない様子。いくらモバイルだからと言って、ここへ持ってくるまでもないので、まあ仕方がない。最初は諦めかけたが、思い出してもらったおかげで、お礼も言えて、私個人的にはホッとした。

会計を済ました後、カウンター越しにキッチン内のタンドールの写真を撮らせてもらった。それが冒頭の写真。下の開閉式の空気孔も見える。「巾着パンチ」がタンドール左側に置いてある。お客さんも私の他に一人だったので、気になってたことをきいてみた。

「ナンを焼く前、脂を手に塗りますか?」

「ん〜、そうね」

「(打ち粉の)粉は?」

「粉、付けるよ」

「粉を付けると、タンドールから剥がれませんか?」

「そう、だから粉は片面だけ、ほんのちょっとね」

ちなみに、バイキングに出ていたナンは、生地自体に結構脂が含まれている。ナンというよりは、パラータに近い。これだけ脂が入っていれば、生地が手にひっつくようなこともないだろうし、もしかしたら、この脂ゆえに、タンドールから剥がれることもあるかも知れない。さすがにこれ以上詳しくはきけなかったが、2〜3ヶ月、彼に付いて研修(修業)させてもらえたら、きっと面白いだろうななどと、ふと思ったりもする。

また、上の写真は、シークを撮った。十数本が、換気扇のフード(向こう側)のフチに掛けてある。シークの片方の先っちょは、私がやったように尖らせてあるが、逆側は、「J」を逆さにした形に曲げてある。焼き上がったチキンが刺さったシークをタンドールから出すと、最初に「J」字の箇所を流水で冷やした後、換気扇のフード(手前側)に掛けた状態で、チキンを抜き取っていた。なるほど、これは抜きやすい。また、シークの太さは、私が作ったシーク(9mm)よりやや細かった。たぶん5〜6mmほど。

ところで、今さらながら、「タンドール」をwikiってみた。その「起源」の欄には、

タンドールの最古の例は古代インダス文明のハラッパーとモヘンジョ・ダロの遺跡に見られる。・・・(中略)・・・現在の形のタンドールはアフガニスタンで発生し、ムガル帝国のインド征服とともにインドに伝わった。 

とある。この記述を鵜呑みにすると、元々はインダス文明の産物で、インドへはムガル帝国のアーリア人が伝えたということになる。すると、チャパティは、ドラヴィタ文化のものなのか。インド北部からヨーロッパまでの地域の主食は小麦だと思うが、タンドールは現在、インド北部から中東までで使われているらしい。おそらく、タンドール(窯)がアフガニスタンから西に伝わっていく過程で、オーブンという天火の窯に変わっていったのだと思う。トルコあたりでは、普通にオーブン(天火)が使われている。

ところで、wikipedia「タンドール」には、下記のような記述も。

大きさは家庭用の小さなものから、人間の背丈より深い業務用の大きなものまで様々であり、・・・・

おっと、そっかー、「家庭用の小さなもの」もずいぶん昔からあるみたいだ。私が考えるぐらいだから、それもそうだよな。これじゃ、家庭用モバイル型タンドールをインドで販売という私の妄想は、やっぱり妄想に過ぎない。

閑話休題。

気がつけば、「タンドールへの道」のエントリも今回で「その10」を数えてしまった。この間、何度も書いているが、今回タンドールを作って使ってみて、つくづくタンドールってすごいなと思うのは、

「こんなに簡単に作れて、こんなに少ない燃料(炭)で、こんなにもおいしく焼ける」

ということだ。この根本には洗練されたシンプルで素直な構造にある。これが熱効率の良さ、施工のしやすさ、そしておいしさを生んでいる。ハラッパーやモヘンジョ・ダロの時代から今に至るまで、小麦を主食とする地域で使われ続けている理由はここにあると思う。

例えば、数十年前に考案された電子レンジは、百年後に存在しているだろうか? と、ふと想う。電子レンジではなくとも、きっとこれまでの長い間に、いろんな窯が考案されてきたことと思うが、タンドールは今でも使われ続けている。便利なもの、手軽なものはいつの時代でも人気があるのだが、それらとは異なるところで、何千年も役に立ち続けるものもある。ここに私はそこはかとない価値を感じてしまう。

1〜2時間前に点火しておかねばならないタンドールは、1分間のチンよりも時間がかかる。しかし、そのおいしさの違いは言うまでもない。何でもそうだが、おいしさには必要な時間があるものだ。また、分単位の時間に追われる暮らしの方が便利なはずもない。よーく考えてみると、電子レンジよりもタンドールの方が、本当は便利なんじゃないかと思えてくる。こういうものを考え出し、作り使い続けることが、今の私たちに最も必要なことなんじゃないかと、タンドールは私に語りかけているように感じる。

2018年11月16日金曜日

タンドールへの道・その9(お勘定編)

きょうのエントリは、お勘定。

タンドールへの道・その2(準備編)」では、あらかたの部品代を示したが、その時点から材料の変更・追加があったので、きょうのエントリで、最終的な材料の確認とその費用計算をしてみる。これは私にとって、情報の整理という意味もある。改めて、まずは完成品(外観)の写真。ちなみに、この重さ23kg。


米びつの蓋を取ると、
(厳密には、上の写真の収納時、真鍮の蓋は、裏返しで取っ手側は下を向いている)


さらに、真鍮の蓋を取ると、(タンドール底に、底網がチラリと見える)


次に、「タンドールへの道・その2(準備編)」冒頭の写真と重なるが、大ざっぱな材料の写真。この中でフルイの網(右下)は、ダッチオーブン用底網に変更したので、使ってない。


さて、ここからリストアップを始める。大物から書き出します。価格は全て税込み。

1.米びつ(ジョイフル本田・瑞穗店)
直径370mm・高さ(内側)390mm、5,950円。

2.テラコッタ鉢(カインズホーム・昭島店)
直径270mm・高さ180mm(タイ製)、単価1,080円が2個で、2,160円。

3.バーミキュライト(カインズホーム・昭島店)
単価498円(18L)が2袋で、996円。
※3/4袋余り。

4.赤レンガ・はんぺん(カインズホーム・昭島店)
単価105円が4個で、420円。

5.ダッチオーブン用ロストル底網(カインズホーム・昭島店)
※下写真。これにステンレスの針金を足した。
500円ぐらい。


6.真鍮の板(ジョイフル本田・瑞穗店)
0.5mm x 200 x 300mm、1,100円。
※タンドール本体の蓋(円形)、米びつ下の空気孔の蓋、両方に使用。

7.タンドール本体の蓋の取っ手・セラミック製(カインズホーム・昭島店)
500円ぐらい

8.鉄の丸棒(ジョイフル本田・瑞穗店)
※下写真は、購入した2本を2つに等分に切って4本。
径9mm、長さ91センチ、単価176円が2本で、352円。


ここまでの合計が、

11,978円也。

その他、以下のもの。私の場合、たまたま自宅に残ってたんだが、使った材料として、

9.耐火モルタル
数年前だったので値段は忘れたが、ジョイフル本田・瑞穗店で買ったのが、25kg入りでだいたい三千数百円だった気がする。でもさっきネットでみたら、モノタロウで4kg入りが、1,580円っていうのがあった。使うのもちょうど4kgぐらいと思うので、ここでの費用計算上は、1,580円とします。

10.ステンレス製の針金(太め)
※下は、ステンレス針金を使った完成写真。
「5.ダッチオーブン用ロストル底網」に加える分。これは500円とします。


もちろん、グラインダーなど電動工具や諸々の道具を使うけど、それは計算に入れません。
9番と10番を含めて、「米びつコース」と称します。その合計は、

14,058円也。・・・・米びつコース

節約するのであれば、米びつ(5,950円)をペール缶(1,350円・ジョイフル本田)に。重さも、たぶん2〜3kgは軽くなるはず。ペール缶にすると、バーミキュライトは1袋で十分。また、耐火モルタルの使用量も半分ぐらいになると思うが、この場はペール缶とバーミキュライトで安くなる差額5,098円だけを反映させて、「ペール缶コース」と称します。改めて、その合計は、

8,960円也。・・・・ペール缶コース

と、グッとお安くなります。
こうして、金額を具体的に示すと、少し実感が湧くような気がするが、あとは耐用年数ですな。私の感覚では、10年20年使えそうな気分でいるが。

また、前にも書いたが、施工を簡単にするなら、空気孔を作らないこと。そうすれば、比較的デリケートな作業の植木鉢の穴開けと空気孔のトンネル作りをしないで済む。ただし、空気孔ナシはアリより温度は高くはならないだろう。ただ、タンドールとして使えはするんじゃないかとは思う。

七輪は、料理用コンロとして、すばらしい発明だとかねがね思っているが、窯としては、このタンドールもすばらしい発明だと思う。どちらも燃費・熱効率という意味だ。

世間一般的には、4人家族にひとつのタンドールはあり得ないと思われているだろうが、「そんなことはありません」とは言いたい。ただ、「小さいタンドール」という発想がないだけなんじゃなかろうか。インドのような大陸ではあり得ない発想も、もしかしたら、箱庭のような島国日本だからこその発想だったかも知れない。

モバイル・タンドール。どなたか、商品化する方はいませんか?

日本国内でアウトドア用として商品化するのではなく、インド・パキスタンあたりで販売するための商品化・・・・なんて、面白いんじゃなかろうか。販売開始したとたんに一時的にバンバン売れたものの、真似された格安版の登場で、結局うまくいかなかった。なんてシナリオか。でも、インド・パキスタンの人たちに喜ばれれば、それでいいんだけどな。と、妄想は弾む。

2018年11月14日水曜日

タンドールへの道・その8(チャパティ・秋刀魚・手羽先編)

 これまで、「タンドールと言えば、ナンとタンドリーチキン」ということで、まずはそれらを焼いたが、他にもいろいろと試したくなった。そして、チャパティ・秋刀魚・手羽先と焼いてみたので、その報告です。

まずは、チャパティ。「タンドールへの道・その6(ナン)」では、ナンを焼いたが、このタンドールでチャパティを焼くとどうなるか試した。チャパティ用の粉(アタ)は、アメ横・大津屋さんのもの。アタは、全粒粉。おそらくグルテンは中力ぐらい。


で、本来はここで、焼けたチャパティの写真をというところなのだが、撮り忘れちゃった。だけど、うまく焼けましたです。ナンのときも思ったが、思った以上に早く焼ける。したがって、焼き過ぎ注意。ナンは酵母を使って膨らますので、生地を寝かせる時間がかかるが、チャパティは酵母を使わないので、その分お手軽に出来る。また、ナンのときは、手に脂を薄くぬったが、全粒粉で発酵させてないチャパティは、脂をぬらなくても、大ざっぱに生地をのばせた。あと、ナンのときに書きそびれたが、焼き上がってタンドールの内壁から剥がすとき、剥がれにくいときがる。そんなとき、食事用のナイフを使えば、難なく剥がせる。それはチャパティも一緒です。

次に、秋刀魚。シンプルに塩焼き。これは、「タンドールへの道・その1」で書いたように、このモバイル・タンドールを作るキッカケになったのが、タモリ倶楽部だった。タンドールで和の食材をいろいろ焼いて試食してみようという番組内容だったが、タンドールソースに漬かった秋刀魚も焼いていて、それが出演者の評判がとてもよかった。で、私も塩焼きでやってみようと、あいなり、まずは、秋刀魚を2尾、シークに刺す。(ちなみに、その番組で一番好評だったのは、レンコンだったが、レンコンは試していない)


お気づきと思うが、秋刀魚は長い。なので、秋刀魚を丸のまま焼こうとすると、どうしても頭の部分が炭火に近くなってしまう。「タンドールへの道・その7(タンドリーチキン)」で、私は「炭火から10センチは離した方がいいと思う」と書いているが、秋刀魚の長さとタンドールの小ささ故に、秋刀魚の頭が炭火から5センチないぐらいになってしまう。なので、弧を描くように、秋刀魚を曲げてシークに刺した。単純に、秋刀魚を2つに切れば、この問題は解決するが、今回は初めてなので、あえて切らずに丸のまま2尾焼いてみる。頭は食べないので、焦げてもいっかーと思ったこともある。


で、1尾は、焼いてる途中で、頭が切り離されて炭火に落ちた。また、胴体も一部炭火に落下。ただでさえ脂が落ちてモクモクなのに、落下して一層モクモクと煙が立ち上る。慌ててトング型火箸で、取り出す。もう1尾は、頭はコゲコゲなものの、うまく焼けた。慌てたこのときも、焼き上がりの写真はなし。

注意点は、2点だ。

ひとつは、再三書いているように、焼き上がりが思った以上に早いこと。頭が落ちなかった1尾は、落ちる前にと、早めに取り出したのだが、すでにいい具合にふっくら焼けていた。時間にして、5分たったかたたないぐらい。どうも、私の潜在意識に、秋刀魚を七輪で焼く時間感覚があったようで、「まだだろ」と思っていたところ、すでにちょうどよく焼けていたのだった。七輪と違い、タンドールは閉じた空間で焼く。輻射熱も食材全体を覆うのだ。

もうひとつの注意点は、魚の場合、共通していると思う。チキンなど肉の場合、火が取ると身が締まるが、魚の場合は、火が通ると、反対に身がほぐれる。身がほぐれると、シーク(串)から落ちやすくなる。私は、秋刀魚をシークに刺すのに、2箇所を刺した。タモリ倶楽部で焼かれた秋刀魚は、3〜4箇所だった記憶がある。刺す箇所が多い方が落ちにくいだろうから、そこに意味があったのだ。先述のように、秋刀魚を2つに切るのは、半身の分、自重は半分になるが、刺す箇所数は少なくなってしまうので、「どうなるかな?」と思う。または、刺し方を変えて、秋刀魚の芯(背骨)に沿ってブスブスっと刺すと、シークと秋刀魚の身との接着面積が広くなり、落ちにくいかも知れない。でも、身が離れると全部落ちるな。魚のときは、径9ミリのシークではなく、バーベキュー用の細いステンレスの串がいいのかも知れない。

さて、次に手羽先。これもシンプルに塩焼き。


手羽先は、上のように、シーク1本につき2つにした。


手羽先は、もー、とてもコンガリおいしく焼けた。焼きの時間は、他の食材同様、思ったより短いことに変わりなし。私は普段、手羽先を七輪で焼くとき、「なかなか火が通らない食材だな」と思っているのだが、そこはタンドール様。早いです。無論、火加減によりるものの、これも5分かからないぐらいが、ちょうどいい。またまた、焼き上がりの写真はなしです。はい。

以上で、チャパティ・秋刀魚・手羽先をタンドールした報告ですが、火が通っての魚の身離れは、焼く前は思ってもみなかった。タモリ倶楽部で評判だった、レンコンもそのうちと思っているが、焼き芋もいいだろうなーと思っている。安納芋など、火が通ると、トロッとなる芋は、どうなるか。などと考えたりもするが、一通り焼き終わってからも、タンドールの余熱は、芋を焼けるぐらいは十分にある。

あと、タンドールの使い方バリエーションとして、思いついたことをつらつらと下記に。

点火後、タンドールを温めている最中には、ヤカンをのせておけば、湯も沸かせる。シチューなども弱火で加熱出来る、とか。(→ヤカンや鍋の底を蓋替わりにする感じ)

タンドールの蓋の替わりに網をのせれば、弱火の炭焼きが出来る、とか。餅なんかいいかも知れない。(→この間、蓋は全開状態になるが、空気孔をちょっとだけしか開けないことで調整出来れば)

桜のチップを炭火に撒いて蓋をすれば、燻製が出来るんじゃないか。(シークだと、その太さの分、蓋が開いてしまうから、燻製のときはシークに刺すのではなく、細い鉄の棒を口の直径線上に渡らせて、そこに吊した針金の先に素材を引っかける。シーク分、蓋が開いても大丈夫かも知れないが、とか。タンドールにスモーク臭が付いちゃうかな)

などなど、いろいろ思いつく。とまぁこんな風に、私のタンドール・ライフが始まりました。キャンプなど、アウトドアなんかには、確実にいいでしょう。

次のエントリでは、最終的に、使った部品などを整理して、かかった費用の集計をしようと思ってます。

2018年11月13日火曜日

タンドールへの道・その7(タンドリーチキン編)

 先のエントリ、「タンドールへの道・その6(ナン)」のお次は、タンドリーチキンだ。まず、タンドリーチキンの漬け汁はこんな感じのレシピ。5〜6時間漬けた。
  • ヨーグルト
  • ニンニクと生姜(すりおろしたもの)
  • カレーのスパイス(クミン・コリアンダー・ガラムマサラ・ターメリック・チリ)
  • レモン汁
  • 塩少々
タンドリーチキンがしばしば赤いのは、パブリカだと思うが、それはあいにく家になかったので省略。あと、チキンは、その日冷凍庫にあったモモ肉を使った。「タンドールへの道・その1」で見学させてもらったパキスタン料理店のシェフの説明では、「シーク(串)1本で、鶏一羽分の肉を刺す」と語っていた。いいですね。ちょうど一羽分が1本というのは。一物全体的でもあるし、余すところなくというのが。鶏一羽の命を食べという実感がより湧くように思う。ただ、このモバイル・タンドールの場合は、小さいので一羽分というわけにはいかない。シークの長さは45センチ。実際にチキンを刺しておける幅は15センチほどになる。

ということで、鶏のモモ肉の塊を2つ刺したシークをタンドールに入れたところが下の写真。ひとつの塊の大きさは、鶏の唐揚げ2つ分ぐらいの大きさ。このタンドールでは、このぐらいが適量と思う。これをシーク2本はいける。


ナンと違い、タンドリーチキンは、焼いている間、鶏の脂が落ちるので、ケムケムになる。したがって、タンドリーチキンを焼きながらナンを焼くのは止めといた方がいいと思う。フルサイズの本物のタンドールではどうしているのだろう。大きいと大丈夫なのだろうか。何しろ、タンドリーチキンを焼いているときの、タンドールはこんな感じで、煙モクモク。


蓋を取るとこんな感じのモクモク。


そして、焼き上がったタンドリーチキンは下。


ナン同様、とてもいい焼き上がり。火の通り具合が実にいい。この串刺しになったモモ肉を見て、お気づきであろうか。全体的に火が通っていて、焦げ目も片方に寄っているということもない。このシーク(串)は、タンドール内で立った状態でで焼かれている。つまり、上の写真で言うと、右がタンドール内の下の方で、左が上の方。私は焼く前、直火に近い下の方と、上へ行く熱気とで、どっちの方が温度が高いものだろうか? と考えていた。答えは、だいたい同じなのだ。私の想像になるが、下の方は、炭火に近いから熱く、上の方は、熱気が溜まるから熱い、そしてこの焼き上がったタンドリーチキンを見ると、同じぐらい熱いことが分かる。すばらしい。ただ、炭火に近い下の方は、炭火から10センチは離した方がいいと思う。例えば5センチとかだと、さすがにそこだけ先に焦げる気がする。

いや〜、改めて思う。タンドールとは、何と素直な窯なんだろう。今回、これを作り、使ってみて、素直さが魅力の素敵な人に出会ったような気分になった。

タンドールへの道・その1」でも書いたように、タンドールを見学させてもらって、非常に熱効率がよさそうと思った。その理由は、熱気が上に向かう性質をそのまま利用した窯の構造にある。・・・・と言うか、窯ってのは、元々はこれだったんじゃないかと思った。タンドールには煙突がない。(煙突を内包している構造とも言えるのだが) おそらく煙突のないタンドールが先で、その後、発展型として、窯の床に素材を置けるように、煙突を付けた薪窯やオーブンが考案されたのだと思う。その発展(便利)の分、燃費は悪くなる。薪窯や薪ストーブを焚くと、煙突も熱くなるが、その熱もタンドールは自分の熱にしてしまっている。薪窯や薪ストーブの煙突には、通気量を調整する弁(ダンパー)が付いてることがあるが、タンドールの場合、その弁は蓋そのものになので微妙な調整さえ非常に容易だ。つまりは、薪窯やオーブンは、焼きたいパンの形や料理に合わせて作られた窯。一方、このタンドールは、窯にパンの形や料理法を合わせる。だから、熱効率が断然いいとなる。

人間で言えば、素直な人ほど魅力的だ。いろんなことが出来る人の魅力というのもあるが、素直さの魅力にはかなわない。今回、タンドールを作って、使ってみて、「タンドールのような人に私はなりたい」と思った。

2018年11月12日月曜日

タンドールへの道・その6(ナン編)


タンドールが出来ると、すぐにでも使ってみたくなるってぇのが人情ってもんだぁな。上の写真は、焼きたてナン。タンドールが小さい分、ナンも小さくなるものの、とてもうまく焼けた。大きさは、男性の手の平ぐらい。子供たちもパクパク食べてた。

タンドール完成に至った日は、日曜日。朝からカミさんにお願いして、ナンの生地とタンドリーチキンの漬け汁を作ってもらった。ナンは、酵母で発酵させるし、タンドリーチキンも、汁に漬けとく時間が長い方がいいので、仕込みは数時間前が望ましい。

さてさて、まずは、タンドールに点火。

炭起こしで、炭に火を点けて、ロストルの底網の上にせる。炭の量は、炭起こし1杯分、男の両手で一杯分ぐらい。炭は、ホームセンターで売っているバーベキュー用。「日持ちがいい」と外箱に書いてあるが、だいたい日本の楢の炭に近いか劣るぐらいの火持ち。日本の楢炭と違うのは、ちゃんと炭化してないので、焚き始めに、煙がモクモク出ることと炭の大きさが極端にバラバラなこと。でも、タンドールには全く支障がない。煙モクモクもしばらくすると落ち着いた。

まずは、下の空気孔の窓を2センチぐらい開けて、上の蓋を1センチぐらい開けた。上の蓋の1センチは横長になるので、概ね下の空気孔2センチの面積と同じぐらいと思った。焚き始めなので、本当は、下の空気孔は全開でもよかったかも知れないが、実はこの後、私はプールへ泳ぎに行ったので、時間稼ぎで2センチにしてみた。1時間ほどして帰宅すると、タンドール君はしっかり熱くなってくれている。そして、中の炭火を覗くと、まだ半分も燃えてない。これはさすがタンドール様だ。立川のパキスタン料理店のタンドールを見せてもらった折に思ったとおり、燃料の量に対しての熱効率(燃費)が極めていい。これだけ炭が残っていればと思い、もう1時間、このままタンドール様を温め続けることにした。

そしてさらに1時間後。貝殻を貼った上面の耐火モルタル、米びつの胴体、米びつの底も熱くなっている。よ〜しと、ナンを焼き始める。焼いてる写真が下。焚き方は、今後の研究課題だ。もっと効率のいい焚き方があると思っている。


種明かしすると、これは実はうまく行きだした3枚目。1枚目は、ただただテキトーにやってみたのだが、生地をタンドールの内壁にくっつけたつもりが、バラバラになって炭の上に落っこちて、炭まみれになってしまった。また焼く前に生地をのばすとき、手に生地がくっついてうまくのばせず、生地の厚みにムラが出てしまい、バラバラになりやすくなっていた。

課題は2点。
うまく壁にひっつかない。生地がうまくのばせない。・・・・考える。

少し考えたら、アンコ(中身)を布にくるんだ巾着を平たくしたようなものを、タンドール料理人が使っているのを思い出した。「アンコ(中身)を布にくるんだ巾着を平たくしたようなもの」とは、下の写真のようなもの。


これは、半分ぐらいの古タオルをアンコ(中身)にしてサラシ布でくるみ、巾着状にしたもの。(仮にこれを「巾着パンチ」と呼ぶことにする) 本当は、もっとアンコが硬めの方がいいと思うが、とりあえず、この日は即席でこれを使う。で、この使い方。まず、平らにのばしたナンの生地を、手で一度タンドールの内壁にくっつける。1回目は、この数秒後、少しずつナンが壁から剥がれ始め、バラバラになりながら、炭の上に落っこちたのだが、今回は、手で内壁にくっつけた直後に、この「巾着パンチ」で生地をポンポン何度か押して、タンドール内壁に押しつけた。最初っから、「巾着パンチ」に生地をのっけて内壁にポンとひっつければよさそうなものだが、慣れない私は、狙いを定めないとならず、狙いを定めていると、手の甲が耐えられないほど熱くなった。なので、手がタンドールの中に留まる時間を最短にするため、最初はパッと素手で内壁にくっつけるだけにし、その後すぐに「巾着パンチ」で、フォローして3度ぐらいポンポンと押して内壁にひっつけた。ただし、この2回目は、生地をムラなくのばすため、生地の両面に打ち粉をしていた。

打ち粉をしたので、手にひっつくことなく、生地は確かにうまくのびたのだが、タンドール内壁にも、ひっつかず、再び生地が炭火に落下して失敗。でも、「巾着パンチ」は、使えそうと感じた。あとは、いかに生地をうまくのばすかだ。私は、麺棒を使って、チャパティの生地を丸く均一にのばすのは得意な方と思っているのだが、このナンはちょっと勝手が違う。チャパティは、ノシ板にも麺棒にも生地がひっつかないように、(蕎麦やうどんのように)生地の両面に打ち粉をして、麺棒でのばす。チャパティは基本的に両面を鉄板で焼くからこれでいい。だが、ナンは、チャパティのように両面に打ち粉をしてしまうと、ノシ板や麺棒にひっつかないと同時にタンドールの内壁にもひっつかなくなる。片面は「巾着パンチ」で押すので、打ち粉をした方がいいのだが、タンドールの内壁にひっつかせる面は、打ち粉をしてはならない。打ち粉をしないで、どうやって生地をのばすか。

また、・・・・考える。

油だ。と思った。何となく、タンドール料理人の手が、油でテカっているような気がしてきた。勘違いか? まあ、やってみよう。最初に、ノシ板に打ち粉をして、その上に生地を置き、薄っすら油を塗った両手で生地の上面をのばす。下面は打ち粉で台にひっつかない。上面は油で手にひっつかない。チャパティは麺棒でのばすから、円形になるが、ナンは大概、長い二等辺三角形の形をしている。その理由が分かった気がした。麺棒を使わず、(油を塗った)両手でのばすとこの形になるんだ。その説に確信はないものの、「巾着パンチ」と両手に薄っすら油を塗って生地をのばした3回目からは、上手に焼け始めた。サイズは、本家のタンドール・ナンより小さいものの、この日は計8枚焼いた。また、1枚焼く時間は、2分〜3分ぐらい。これは無論、タンドールの温度にもよる。1枚焼き始め、それが焼き上がる前にもう1枚焼くのも可能。試してないが、タンドールの内壁の面積からすると、3枚まではいけると思う。

あと、焼いている間、下の空気孔は1センチ開けて、上の蓋もそのぐらいの面積開けた状態にしていた。温度を上げたければ、下の空気孔をもっと開けた方がいいだろう。一時的に上の蓋を100%閉めてしまって、陶芸の窯で言うところの還元状態にして、グッと温度を上げるのも手かも知れない。このへんは今後の課題。

また、いいことばかりではない。タンドールが小さいせいで、ナンのサイズが小さくなることは仕方ないにしても、先ほども少し触れたが、もう一点。ナンをタンドール内壁にひっつける際、小さいせいで、チンチンに熱くなっている炭火と手の距離が必然的に近くなる。つまり手が熱い。溶接用の革手袋でもするか。いやいや、いちいち手袋を付けたり取ったりは煩わしい。それよりは、今は、熱さに慣れ、また作業にも慣れて手際よくなり、素手で出来ちゃうようになる方向でいこうと思う。

と言うわけで、課題は残るものの、めでたく、おいしいナンが焼き上がった。輻射熱ということだろうか、火の通り加減が実にいい。全体的に火が通っていると同時に、外がパリッとで、中がフワッとということです。焼き上がりの様子は、次のエントリでも触れる。

ナンの次は、タンドリーチキンだ。

2018年11月9日金曜日

タンドールへの道・その5(施工#3完成まで)

先のエントリでは、タンドール本体の下部分にあたる植木鉢を米びつ内に固定した。きょうはタンドール施工のいよいよ最終段階だ。

まずは、下の写真のように、固定したタンドール本体の下部分の植木鉢を、真ん中が高くなるようポリ袋で覆って、米びつと植木鉢の間にバーミキュライトを流し込む。


9割方流し込んだところで、はんぺんレンガの切れ端の駒(幅3センチぐらい)を等間隔に3箇所、米びつ内側と植木鉢外側の間にはさんで固定する。写真では分かりにくいが、このとき駒の下半分が植木鉢にかかっている。上半分は、この後この上にのっかる植木鉢にかかることになる。つまり、この駒で、上下の植木鉢両方を固定させる。次に、耐火モルタルを植木鉢のフチに盛る。駒の上半分の部分にも盛る。この部分は結構高温になるので、ここで盛った耐火モルタルは硬く固まり、駒は固定されると想像している。(下写真)


この後、上写真の耐火モルタルの上に、もう一つの植木鉢をのせることになるのだが、ここで注意しなきゃ〜ならないことがある。のせる前に必ず、ロストル底網を下の植木鉢に入れておくことだ。私は、うっかり入れ忘れた。逆山椒魚状態で「入れない〜」。上の植木鉢をしっかり設置したにも関わらず、外さねばならない事態に陥った。このときはさすがに凹んだ。本当にアホ。アホ過ぎの失敗談なので、わざわざ注意喚起するほどのことではないかも知れないが、せっかくの失敗なので、役に立つようなことがあれば幸いだ。

でまぁ、くどいが「底網を入れた後」、上の植木鉢をのせて、グッと押しつけて密着させ、上下の植木鉢の境目の内側と外側を耐火モルタルをなでるようにこすりつける。必要に応じて耐火モルタルを足す。


そして、この上にさらにバーミキュライトを充填したところが、下の写真。バーミキュライトは、18リットル入り袋で500円なのだが、1袋ではちょっと足りなかった。1袋と1/4使った。


この上に、耐火モルタルを盛ってコテで平らにして完成。というのが当初の予定だったのだが、まーた気がかりなことを発想してしまった。このタンドールを使い始めると、その平らにした耐火モルタルは、乾燥してヒビだらけになるだろう。そして、そのヒビだらけの耐火モルタルはやがて、ボロボロと取れまくるんじゃないかとの想像が私の頭ん中を駆け巡った。耐火モルタルを厚く塗ることも考えたが、重くなるのも嫌だ。

どうしよう。

しばらく考えて、「タイルみたいなもの」を貼れば、いくらかいいように思った。タイル? 最初に思いついた「タイルみたいなもの」は、目の前に転がっているレンガだった。レンガをスライスすれば「タイルみたいなもの」になると。でも、仕上がりとして、ここにスライス・レンガを貼ると、素焼きの植木鉢の色と似ているのであまり美しくないと思ったし、レンガをスライスするのは、レンガの粉が舞うのもちょっと嫌だ。カインズホーム昭島店では、「タイルは置いてません」と言われるし、ジョイフル本田瑞穗店には、貼りたいようなタイルはなし。

再び、どうしよう。

そこで思いついたのが、石。私は数十個の石のコレクションがある。でも「タイルみたいな」石はないし、そもそも、石は重い。次に考えついたのは、貝殻。これもいくらかベトナム・カンホアで集めたコレクションがある。でもやはりなかなか「タイルみたいなもの」がない。そこでカミさんに相談すると、「それなら、私がこないだ鳥取の海岸で拾った二枚貝の貝殻がある」とのこと。試しに、バーミキュライトの上に並べてみたら、大きさと数がちょうどいい。ちょっとフェミニンな感じの貝殻なのが気になったが、ここは彼女に敬意を表して、これにした。あと、ひとつ四角い飾りレンガを空気孔の位置に置いたが、これもカミさん所有のもの。

そして、空気孔の反対側の米びつの上端に数センチの切り込みを入れた。これは上面の掃除の際の吐き出し口。あと、植木鉢を1センチほど出っ張らせているのは、余計なゴミが中に入りにくくしたのと、平らな蓋がピッタリと閉まるように。

ということで、これで完成。


タンドールの蓋(セラミックの取っ手付き)をのせると、こんな感じ。今どきは、こんなシャレオツな取っ手が売ってる。カインズホーム昭島店で、500円ぐらい。ウラに細いボルトが埋まってて、ナットで止めるように出来ている。米びつの蓋を閉めるとき、この真鍮の蓋は裏返して、高さ3〜4センチの取っ手がタンドールの中を向き、1センチ出っ張ったボルトの裏面が上になる。


次に、米びつの蓋を閉めると、こんな感じ。この米びつ、少々高かったが、ちゃんとデザインされていて、今さらながら、見てくれもペール缶よりよかったように思うのだけど、いかがでしょう?


細かいことだが、この蓋の取っ手の周りが1センチほど凹んでいる。この凹みのすぐ下には丸い蓋の裏のボルト(1センチ高)。その間隔は1センチないぐらい。ここをピッタリにするために、「タンドールへの道・その4(施工#2)」で、先行して蓋を作ったり、植木鉢の上端を1〜2センチ削ったりしたというワケです。全体の重さは、持った感じでは、25キロぐらいか。

あと、大事な備品を忘れていた。インドではシークというらしいが、タンドリーチキンを焼くときにチキンを刺す串だ。これは、ジョイフル本田瑞穗店。直径9mm・長さ91センチの鉄製の丸棒。1本176円を2本購入。ちょうど半分に切った45センチぐらいがこのタンドールにちょうどいい長さで、4本になる。イメージとしては、2本ずつ焼いて、残り2本はスタンバイ用。この先っちょをグラインダーで鉛筆のように削って、刺しやすくする。


あと、この直径9mmを、やけに太いと感じるかも知れない。私がこの太さを選んだのは、「タンドールへの道・その1」で見学させてもらったパキスタン料理店のシーク(串)が、ちょうどこのぐらいの太さだったからなのだが、このぐらいがいいようだ。なぜなら、このシーク(串)は、普通のバーベキューのように、寝かせて使うのではなく、立てて使う。つまり、立ててもチキンなどが下にずり落ちないことが肝要だ。それにはこのぐらい太い方がいいということなのだ。たぶん、ある程度細くても、魚なんかはずり落ちないかも知れないが、チキンは落ちると思う。

長さ45センチのシークをタンドールに突っ込んでみた状態が下。


これで、ようやくこのモバイル・タンドールが使えるようになった。次のエントリでは、ナンとタンドリーチキンを焼いてみる。

2018年11月8日木曜日

タンドールへの道・その4(施工#2)


しばらく更新がおろそかになったが、タンドール作りの実況中継、前回の「その3(施工#1)」に続き、「その4(施工の#2)」。

前回のエントリでは、ロストルから空気孔のトンネルを、型紙で空洞を作ってその周りに耐火モルタルを盛り、耐火モルタルが乾いたところで、型紙を抜くと、最初に考えた。がしかし、耐火モルタルがしっかり固まるぐらい高温にならないんじゃないかとの考えがよぎり、そりゃぁ止めとこ、となった。で、はんぺんレンガで工作してトンネルを作ることにするぞー、というところまで書いた。

それでやってみて出来たのが冒頭の写真。いや〜、これはなかなか大変でした。でもまぁ私みたいな素人でも出来た、とも言える。何が大変だったかと言うと、立体的に丸くなってる植木鉢の面に四角いレンガを切って繋げるという作業に、立体感覚を必要としたところだ。どうも私はその感覚が乏しいらしい。逆に言えば、その感覚に優れている人だったら簡単なんだと思う。「その3(施工#1)」で、植木鉢の底近辺に、空気孔の長方形の穴を開けるのが大変だったというのがあったが、コッチもそれに負けず劣らず大変という感じ。したがって、この2点が、このタンドール作りの山場と言える。

混乱した私は、部品毎に簡単な図面を描いて、「これがこーなって、こーなるから、こういうことかな」などと確かめながらレンガを少しずつ削った。丸い植木鉢と四角いレンガの接面をピッタリつけるのが大変なんだけど、さらに、私は欲をかいて、トンネルのレンガに切り込み入れて、床・横壁・天井を組んだ。このレンガのトンネルの周りには耐火モルタルを盛って固定させるので、切り込みなんか入れずに積木のようにただトントンとのせればそれでよかったのかも知れない。

前にも触れたが、一番簡単に作ってしまいたい人は、このロストルから空気孔自体をを作らないこと。(→温度が上がりにくくなるとは思うが、それなりに使えるだろう) 二番目に簡単にするには、トンネルにはレンガを使わず型紙を使って耐火モルタルだけで作ること。(→温度があんまり上がらないと、次第に耐火モルタルがポロポロ崩れてくる可能性がありそうだが、耐火モルタルは成形が楽だから作りやすい) 三番目には、レンガに切り込みなんか入れないで、ただ積木のようにのせて耐火モルタルで固定。というところだろうか。今、思いついたが、ただ積み木のようにのせると、ずれる可能性があるが、こういうときこそ、型紙を使えばずれにくい。

後からいろいろ思うものの、せっかくやったのだから、もう少し詳しく、このレンガのトンネルをどんな風に作ったかを説明します。前のエントリで、米びつの底にレンガを敷いて耐火モルタルで固定した写真があるが、まずは、トンネル床のレンガの両側の耐火モルタルを、はんぺんレンガの厚み(幅30mm以上)削った。(下写真、クリックすると大きくなります) この削ったスペースに横壁が来る。トンネル床の上に横壁がのっかるんだったら、こうして削る必要はない。


そして、ここにトンネルの側面が来ると、こうなる。


次に、天井のレンガは下の写真。これ、裏返した状態。つまり、切り込みがある見えている面が天井の下面(内面)になる。この写真の下側の弧は、米びつに接する面で、上側の弧は、植木鉢に接する面。これを裏返して、側面の壁にのせると、冒頭の写真のようになる。


さて、空気孔はこのぐらいにして、次はロストル。「その2(準備編)」では、フルイ(金網)にしているが、そのエントリにもあるとおり、ちょっとそれでは心配になってきたので、ダッチオーブン用の底網(ステンレス製)に変更した。それが下の写真。(500円ぐらい) 大事なことして、この丸い網よりもタンドールの口は小さい。つまり、交換がきかない。もしもこの網が、取り出せるぐらい壊れたら、替わりに華奢なフルイ(金網)を折って、中で広げて使ってみようかと思っている。空気孔があるので、最悪、この底網がなくても、それなりに温度は上がるだろう。「タンドールへの道・その1」で見せてもらったパキスタン料理店のタンドールには、この底網はなく、そのまま空気孔になっていた。


ただ、このままでは隙間が開きすぎて、炭がボロボロ落ちそうなので、私の道具箱にあった、ステンレスの針金でを使って隙間を減らした。それが下。


最初の1〜2本はうまくいかなかったが、3本目ぐらいから慣れてきて、ピンと張れるようになった。

と言うわけで、仮にだが、さっきのレンガのトンネルに穴の開いた植木鉢をセットし、このロストルの底網も置いてみる。(下写真) 小技ながら、底網が接する植木鉢の内側には、円形にグラインダーで少し(1〜2mm)削って溝をつけた。これでグラグラしてた底網が何となく安定して置けるようになった。このロストル部分の掃除の際は、この底網を縦にするなどして外すから、固定させてはいけない。


この次に、タンドールの蓋を作った。(この時点での写真を撮り忘れた。完成時の写真で見てください) 空気孔の蓋と共通の材料(真鍮板)を金切りバサミで円形に切ったもの。この中心にセラミックの取っ手を付けた。セラミックの取っ手は、ボルトと一体化してて、ウラをナットで止めるようになっている。

蓋なんか最後に作ればよさそうなものだが、このタイミングで作ったのは、ひとつ気になってたことがあったから。この蓋に付く取っ手と裏側に出来るネジの突起の様子を見たかった。まず、この米びつには立派な蓋が付いている。使用後、このタンドールをしまうとき、いろいろな部品を重ねた末に、蓋が閉まるよう確認したかったということです。測ってみると、案の定、このままだとギリギリで閉まるか閉まらないかという感じ。

ギリギリはマズイので、植木鉢を2つ重ねる際に接する部分を平らに削った。元々は、丸くなってたところ。これで1〜2センチ低くなった。これで米びつの蓋はちょうど閉まりそうだ。無論、この部分は、後からでは削れない。後から削るとしたら、上部の植木鉢の一番上になる部分(タンドールの開口部)。ただし、ここを削れば削るほど、開口部は低くなると同時に大きくもなる。


次の工程は、タンドール本体の下の部分の植木鉢の固定だ。ここは慎重にやりたい。2つ上の写真(ロストル底網を置いてみた状態)から、いったんその植木鉢をどけて、まずはレンガのトンネルの周りを耐火モルタルで固定する。そして、トンネルのレンガと植木鉢が接するところにも耐火モルタルを塗る。さらに、植木鉢(窯の下半分)を置くはんぺんレンガの床にも耐火モルタルを多めに盛る。最後に、トンネルと穴を合わせながら、植木鉢をグッと押し、平らに固定する。(下写真は、固定した翌朝のもの) これでもう植木鉢は動かせないので、耐火モルタルがどうついているかは手て探って確かめるしかない。植木鉢の水が出る真ん中の穴もここで埋めて平らにしておく。


トンネル部分の周りに耐火モルタルを盛った箇所が少しだけ見えるので、そこを撮った写真が下。


これで一段落。数日間、乾燥させた。

あと、オマケ的に、空気孔の真鍮の蓋を作り直した。先のエントリ、「その3(施工#1)」では、いったん完成させているが、購入した真鍮の板でそれを作って、上記のタンドールの蓋を作ったら、真鍮の板が余った。その余りを眺めてたら、空気孔の蓋をもう少し改良出来そうに思えた。ということで、改めて作った空気孔の蓋が、下の写真。


全開したとき、蓋が取れないように、先を丸めて引っかかるようにしてあるのが分かりますか。この写真の右手になる。また、先に作ったのよりやや大きめにした。材料余らすのももったいないし、大きめの方が閉めたとき、いくらかでもより空気を遮断するように思えた。

完成までもう少しか。この後は、次のエントリで。