2009年2月17日火曜日

塩たまご


 『殻をむくと塩味のついたゆで卵。どうすればうまく作れますか?』

去年の夏頃、ある新聞に載ってた読者投書の質問だ。その問いに鶏卵の性質に詳しい大学の教授が答えている。その切り抜きをしたことを今頃思い出し、実際にやってみた。これが思いの外、非常にうまい。

ポイントは、「温度差」を使うこと。

卵の殻は大理石と同じ炭酸カルシウムが主成分で、冷えてもあまり縮まない。一方、中身の卵白は約9割が水分なのでよく縮む。そして卵の殻には小さな気孔があるので、卵白が縮むとスポイトのように塩水(飽和食塩水)が吸い込まれるということだ。

飽和食塩水。塩を専門とする私からこの部分について説明すると、塩の主成分であるNaClは濃度25%まで水に溶ける。ただしこれは理論上なので、実際には20%なら楽に溶けるぐらい。だから、例えば800ccの水だったら、最初は200gぐらいの塩を溶かし、塩が溶け残っていなかったら少しずつ塩を足して、少し塩が溶け残るぐらいまでにすれば、飽和食塩水の出来上がりだ。またこの塩水(飽和食塩水)は、この後冷やす。だから、湯ではなく冷たいままの水に塩を溶かすようにした方がいい。塩は性質上、温度を上げてもほとんど溶けやすさは変わらない。

さて、実際にやってみる。上記のように塩水(飽和食塩水)を作り、冷蔵庫で冷やしておく。塩水の量は、卵の数と容器による。容器は、卵がすっぽり入る形だと、塩水は少なめで済む。例えば、卵1個で容器がコーヒーカップならば、塩水の量は100cc(概ね水75cc+塩25g)もあれば十分だろう。無論、卵は全体が塩水に浸からないといけない。卵を水からゆでて、沸騰後5分。素早く、冷やしておいた飽和食塩水に浸し、10分ほど置く。殻をむいて出来上がり。(上の写真、これでレア気味な半熟状態です)

飽和食塩水は相当塩辛い。(ちなみに海水の塩分濃度で約3.4%、人間がおいしいと感じる塩分は約0.9%) だから最初は「しょっぱ過ぎないかな?」と思ったが、実際に食してみると、これで「ほんのり」のとてもジャストな塩加減だ。ゆで卵に塩を振るのとは違い、卵との一体感がある塩気なところが、その絶妙さを後押ししている感がある。だからまずはこの「塩たまご」だけで食べて欲しい気がする。ラーメン屋さんには、味付け卵があるが、それはその「味付け」にウエイトがあるが、この「塩たまご」は、卵と塩だけ。つまり、卵の味もよく感じ、塩の味もよく感じる。そしてそのハーモニーとバランス。ん〜。だから、卵も塩もこだわって、究極の「塩たまご」を簡単に作りましょう。