2011年6月30日木曜日

ベトナム・コーヒーの流儀【上級編】


深煎りで濃ーいコーヒーが大好きなベトナムの人々。町中はもちろん、どんな田舎へ行ってもcafeは必ずあるベトナム・・・・。まさにコーヒー大国ベトナム、である。

「この濃ーいコーヒー、あ〜、カフェオレに合うだろなー」と私は思う。しかーし、そのベトナムで(コンデンスミルクではない)フレッシュミルクのカフェオレを飲むことは、一筋縄ではない。なので、偉そうだが今回は【上級編】ということにさせて頂きます。

まず、ベトナムではフレッシュミルクを飲む習慣がほとんどない。それはコーヒーに入れる用途においても然りだ。だから、フレッシュミルクはどこの店に行ってもあるものではない。変化の著しいベトナムなので、将来は分からないが。たとえあっても、いわゆる「ロング・ライフもの」、つまり何ヶ月も常温保存可能に加工されたミルク(味もやや違う)。さらーに、その「ロング・ライフもの」でも多くの場合「砂糖入り」なことを付け加えておこう。残念ながら、日本や欧米、インドにあるような加熱殺菌しただけのフレッシュミルクは、ベトナムでは見たことがない。パスチャライズ(低温殺菌もの)なんて夢の夢って感じ。

さて、このフレッシュミルク。ベトナムのcafeでこいつをコーヒーに入れてもらうには、ただ「ミルク」と言っただけでは用を足さない。何度も出てきてるけど、ベトナム語で「ミルク」は「スア」。これだけでは普通のコンデンスミルクになってしまう。なので、これに生(なま)の意である「トーィ」を加えて、「スア・トーィ」と言う。これで「(コンデンスミルクではない)生のミルク」になる。

ここで問題です。

【問い】
ベトナム語で、砂糖抜きの(フレッシュミルクの)ホット・カフェオレは?



【答え】
カフェ・スア・トーィ・ノン・コン・ドゥン
(コーヒー・ミルク・生・ホット・無し・砂糖)

冒頭の写真がコイツだ。コーヒーもミルクも温かい。ちなみに、この冷たい版(砂糖抜きのアイス・カフェオレ)は、

カフェ・スア・トーィ・ダー・コン・ドゥン
(コーヒー・ミルク・氷・ホット・無し・砂糖)

「ノン(ホット)」が「ダー(氷)」になる。もう皆さんお分かりですねー(って誰が?)。これは下の写真。
いや〜、我ながら、かなりマニアックな世界に入ってしまったことは否めない。それにこんな注文する人はベトナムにはほとんどいないので、これについてはこのカタカナ発音では通じないかも知れない。通じたとしても「コーヒーは砂糖抜きでも、スア・トーィは砂糖入りでいいか?」などときかれたりする。その場合は、「スア・トーィ・ノン・コン・ドゥン(ミルク・生・ホット・無し・砂糖)」と念を押さねばならない。

さらに、料金について。

基本的なこととして、何度も言うが、コーヒーにフレッシュミルクを入れる人は、まずいない。ゆえにフレッシュミルクはコーヒーと別料金になる場合が多い。つまり、ブラックコーヒーとフレッシュミルクの2品頼むことになり、料金も2品分になる。(上のアイス・カフェオレの写真は、2品の注文。このミルク、コーヒーに入れるためは立派過ぎるでしょ) ただ、決してこれに腹を立ててはならない。これがベトナムcafe文化なのだ。

元々料金が高い高級cafeなんかでは、通常の(コンデンスミルクの)ミルクコーヒーと同じ料金で、フレッシュミルク(ロングライフものだが)を出してくれたりするが、高級cafeの料金がそもそも高いので、かえって別料金のcafeの方が安上がりということも珍しくない。

何しろレアだ。cafeの人に「何だそれ?」という顔をされたら、仕切り直して、砂糖抜きのブラックコーヒーとフレッシュミルクを別々に2つ注文するのが堅い注文方法になる。

カフェ・デン・ノン・コン・ドゥン
(コーヒー・ブラック・ホット・無し・砂糖)

と一度言って、別に、

スア・トーィ・ノン・コン・ドゥン
(ミルク・生・ホット・無し・砂糖)

・・・・と、ここまでおつきあい頂いた方、お疲れさまでした。

しかし、私にとっては、まだ次のハードルがある。何とかして「ロングライフもの」ではないフレッシュミルクのカフェオレが飲みたーい、という思いが残っており、この話はまだまだ終わらないのであった。ん〜、今度のベトナム出張は、8月だ。

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2011年6月21日火曜日

ベトナム・コーヒーの流儀【応用編】

先のエントリの【基礎編】では、珍しい金属のコーヒー・フィルターの説明がなかったので、まずはそれから。

下の写真は私が自宅に持っているもので、【基本編】の写真のアルミ製と違い、ステンレス製だ。最近は、サイゴンなど都会を中心にこのステン製が幅を利かせてる。問題は、その構造だが、下の左側の写真が完成型、こうして使うというもの。そして、右側の写真は、ご覧のとおり3つのパーツをばらした状態。
3つのパーツは、フタ(右上)、フィルター上部(右下)と本体(左)からなっている。このステン製の本体はこれで1セットだが、アルミ製の場合は、本体の下部についてる円盤状の部分が本体と離れているものが多い。本体の底には小さな穴、そしてフィルター上部のパーツにはそれより少し大きな穴がたくさんあいている。コーヒーの粉を、本体の穴の上に入れ、フィルター上部のパーツをその上にのせる。つまりは粉をこの2つのフィルターでサンドイッチにする。お湯は2つのフィルターを通って少しずつコーヒーが落ちてくるという構造になっている。この穴のサイズが違うところも小さなキモだ。そしてそれを蒸らすようにフタをするのです。フタは【基本編】でも書いたとおり、飲むときは、ひっくり返してテーブルに置き、漉し終わった本体をその上に置く。こうして若干ながら残っているコーヒーの雫を受け止め、テーブルにコーヒーが垂れるのを防止する。

このフィルターのオリジナルは、仏領インドシナ時代にフランスから伝わったらしい。当時はアルミ製のみ。今じゃ本国フランスではほとんど見ないが、ベトナムでは現役バリバリだ。それどころかステン製になったりして、進化し続けている。言わずもがな、金属製だからとても長持ち。

さて、【応用編】というと偉そうですが、要は甘いコーヒーが苦手な「私の場合」ということ。

先の【基本編】では、ベトナムでコーヒーを注文するときは、通常、以下の4パターンと書きました。

1.カフェ・デン・ノン(コーヒー・ブラック・ホット)
2.カフェ・デン・ダー(コーヒー・ブラック・アイス)
3.カフェ・スア・ノン(コーヒー・ミルク・ホット)
4.カフェ・スア・ダー(コーヒー・ミルク・アイス)

この4つでベトナムのほとんどの人たちは、事足りてます。でも、私の場合、これでは終われない。ベトナムでコーヒーに入れるミルクは必ずコンデンスミルクなので、上記3と4の2つのカフェ・スアはその時点ですでに甘い。ついでに言うと、このカフェ・スアにさらに砂糖を加える人も珍しくない。また、たとえ上記の1か2のカフェ・デン(コーヒー・ブラック)を注文しても、しばしば(溶けやすいという意味で、サービスよく)グラスの底に砂糖が入れられ、そこにコーヒーが注がれてサーブされる。つまり、上の4つのコーヒーはみんな甘いのです。甘いコーヒーが苦手な人はベトナムにはほとんどいないということ。南国だから、カロリーとらないと、ってところでしょうか。インドから中近東のチャイもみんな甘いですね。

難しく考える必要もないが、「砂糖抜き」という言葉をオプションで加えるのだ。

「コン」が「“not”または“no”」で、「ドゥン」が「砂糖」。
ゆえに砂糖抜きは「コン・ドゥン」となる。

何しろ、甘いコーヒーが苦手な人はほとんどいないので、しっかりと念を押すように「コン・ドゥン」と言わなければならないところがポイントだ。たいがいは「コン・ドゥン?」と聞き返されることが多いぐらいのことだ。

例えば、
カフェ・デン・ノン・コン・ドゥン
(コーヒー・ブラック・ホット・無し・砂糖)

となります。これで砂糖抜きのホットブラックコーヒーにありつけます。もちろん、これのアイス版は、

カフェ・デン・ダー・コン・ドゥン
(コーヒー・ブラック・アイス・無し・砂糖)

ここで一息・・・・。

すでにお気づきの方もいようが、上記の「砂糖抜き」はブラックコーヒーのみ。え〜、ベトナムのコーヒーは、深煎りで濃いコーヒーなのに、フレッシュミルクのカフェオレ(砂糖抜き)は飲めないの〜。

・・・・ということで、私の場合、これでも話は終わらず、まだ続く。贅沢だけど、(コンデンスミルクではない)フレッシュミルクのカフェオレをたまには飲みたいと思うのだ。それはまたこの次に。

いや〜、かなりマニアックになってきたぞー。

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2011年6月16日木曜日

ベトナム・コーヒーの流儀【基本編】

きょうは、ベトナムのコーヒーのお話。
最初に、日本がコーヒーの生豆を輸入している相手国、ベスト5は以下のとおりだ。

1.ブラジル   96,406トン
2.コロンビア  84,809トン
3.ベトナム   55,055トン
4.インドネシア 52,030トン
5.グアテマラ  34,826トン
※全日本コーヒー協会調べ(2008年)

ジャーン! ベトナムが「第3位」ってちょっとビックリでしょ? あまり知られてないけど、私たちはベトナム産のコーヒーを実は結構飲んでるのだ。日本の喫茶店で、「ベトナム産コーヒー」とはほとんど聞かないけど、缶コーヒー、インスタントコーヒー、またコーヒー味のお菓子などなどを介して私たちは飲んでいるんです。

そのベトナムは、先のエントリ(ベトナムとパチンコ屋の静寂)にも書いたとおり、町中cafeだらけで、かなり田舎へ行っても必ずある。このブログのタイトルが“natural salt cafe”なのも、実は、私の仕事場ベトナムには、「cafe文化」と呼べるぐらいのcafeがあるからなのだ。そしてその本国ベトナムのcafeでコーヒーを注文したり飲むには、それなりの流儀がある。きょうはそのお話し。

まずは上の写真の説明から。これは私がプロデュースしている「カンホアの塩」の生産者のところでの、朝食のテーブル風景です。手前はバゲットのサンドイッチ(バインミー)。写真中央にアルミ製のコーヒー・フィルターがあって、下のグラスにコーヒーが落ちてる。コーヒーが全部落ちたら、フィルターの上蓋だけを裏返ししてテーブルに置き、その上にフィルター本体を移して、余ったコーヒーの汁がテーブルに垂れるのを防ぐ。上蓋に3つのポッチがあるのが分かります? それは裏返したときの足になる。コーヒーは、通常、かなり濃いのが少量(この写真のコーヒーもおおかた全部落ちている状態)。つまり、かなり深煎りでかなり細かく挽かれた粉に少量のお湯が注がれて出来ている。エスプレッソのようだが、圧力はかかっておらず、焙煎時、香りや味を若干つけているものが多い。それはエスプレッソとは違い、何ともベトナム・コーヒーなのだ。また、「薄めに」なんて頼む人はいなくて、少数派の薄め好みの人は、氷を入れたり、別にもらった小さなポットのお湯を足して飲んだりしている。

右側のアルミ製のポットは、ティーポット。小さな茶碗にお茶(ジャスミン茶)が注がれている。10年前はどこのcafeに入っても、コーヒーを注文すると一緒にこのお茶が(無料で)出てきたが、最近の大きな町では別料金のcafeが増えちゃいましたー。そして左には氷があって、コーヒーのグラスに入れれば、そのままアイス・コーヒーになるようサーブされている。

では、コーヒーの注文方法に入ります。
唐突ですが、このコーヒーは、ベトナム語の順番で「コーヒー・ブラック・ホット」。

一昔前の日本の喫茶店では、「ホット」と一言で注文が済むこともあるが、ベトナムではそうはいかない。それはcafeであろうが、誰かの家であろうが、注文の仕方にも共通した流儀がある。

ベトナム語の発音は難しいので、ここではだいたいの発音をカタカナで表します。(ベトナムのcafeで注文するシチュエーションだったら、このカタカナで何とか通じると思います)

まず、コーヒーには、通常、

・カフェ・デン(コーヒー・ブラック)
・カフェ・スア(コーヒー・ミルク)

の2種類がある。
「デン」は「黒」の意。「スア」は「ミルク」の意。「ミルク」と言っても、ベトナムでコーヒーに入れるミルクは通常甘〜いコンデンスミルクだ。

これだけ知ってれば、不自由なさそうだが、まだ先がある。私が最初にベトナムを訪れたとき、cafeに座って、「カフェ・デン」といくら言っても、しつこくその後を聞かれたことを今でも思い出す。

その後に「ノン」か「ダー」をつけないと、注文にはならない。「ノン」は「熱い(ホット)」の意。「ダー」は「アイス(氷)」の意。だから、「カフェ・デン」と言っただけでは、その後「ノンなのかダーなのか?」と必ず聞かれる。上の写真のとき、実は「カフェ・デン・ノン」(コーヒー・ブラック・ホット)を頼んだ。ただ、ここは知り合いのところなので、「もし、途中でアイスにしたければどうぞ」という親切な気持ちから、氷もサーブされている、という訳。

ここらでまとめてみましょう。つまりベトナムでコーヒーを注文するとき、通常、基本は以下の4種類になる。

1.カフェ・デン・ノン(コーヒー・ブラック・ホット)
2.カフェ・デン・ダー(コーヒー・ブラック・アイス)
3.カフェ・スア・ノン(コーヒー・ミルク・ホット)
4.カフェ・スア・ダー(コーヒー・ミルク・アイス)

単語としては、「カフェ」と4つの言葉の組み合わせだけ。そして覚えるのはまずは自分の好みの1パターンだけでいい。実際、ベトナムの9割以上の人たちは、この4つのいずれかでコーヒーを注文する。

・・・・と、ここまでが【基本編】。
次に【応用編】もと思ってます。【応用編】と言っても、それは単に私の場合ということだけど。「こんな話、役に立つかな〜」。「まっ、いっかー」。

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