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そして、この店を一歩出ると、右の写真のような町並み。分かるかな〜、どの家の屋根にも煙突があるの。軒下には、樫や楢みたいないい薪がたっぷり積んであった。これからの季節、ここは雪景色になる。
2つ前のエントリ、「南イタリアのゴミ箱と中空都市」で、イタリアの古い町はみんな山や丘の上にあることを書いた。このカステルメッザーノも山の上。だから、伏流水が集まるような水源はない。しかし、右下の写真のように昔っから使われている雰囲気の水場がある。
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もちろんイタリアの建物はみな石造りだから耐用年数が長い。それにしても、薪の生活なども含め、このカステルメッザーノでは古い慣習を残しながら、新しいものを少しずつ加えていってる雰囲気がある。そしてその少しずつさは、小ぎれいに商品が陳列されたバールのように、「丁寧さ」を伴っているように映る。そこには決して無闇に新しいものに変えない、凝縮された時間さえ感じる。
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そして、上の写真。何の変哲もない扉のドアノブ。これは、トリヴィーニョのアグリツーリズモ、La Foresteria di San Leoのもの。全館古ーい石造りの中、ちゃんと周りの雰囲気に馴染んでいて、カッコいい。こういう場合、得てして、石造りと同系の色や材質を使いそうだが、機能的にしてかつきれいな赤色が使われている。この材質・色を「浮いている」とは感じず、「潔く」感じるのは、それが丁寧にデザインされたものだからだと思う。
イタリアの景気は決してよくないと言われる。そんな中、こうして少しずつ変えていくことは、雇用の創出やGDPをグッと引き上げることにはならないだろう。でも、逆に昔からの生活を「少しずつ」しか変えないことは、急に不景気のどん底にも陥らないような気がする。そしてそれを知っていてそうしているようにも感じる。
こういうことを、例えばエネルギーにあふれた若い人なんかはどう思っているのだろう。とか、新しいものより3倍かかる古い建物を残す費用は、修繕の技術を高めるだろうがそれは社会的な雇用に繋がるものなのだろうか。とか、新興住宅地に住む人たちはどう思っているのだろう。いろいろ考えてしまう。
日本は最近、「ダウンサイズな暮らし」がしばしば提唱される。私も同感だ。しかし、イタリアの田舎では、暮らしのサイズを少しずつしか変えないことで、大事なものを守っているように思える。
景気が悪い日本では、「消費を増やさないといけない」と盛んに言われる。それは「丁寧に」「少しずつ」ということとは反駁しているようにも思える。長く使えるものを、「丁寧に」「少しずつ」消費していくことは暮らしを悪くするのだろうか? 昔から「モノは大事に使いなさい」と教わってきたことは今の世の中に合わないことなのだろうか? もちろんそんなことはないはずだ。今の日本こそ、大事なものの転換期なような気がしてならない。
最後に、お許しを得て撮らせてもらった、カステルメッザーノのおばあちゃんの写真で、今回のイタリア旅行編をおしまいにします。
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