1983年の夏、私はユーレイルパスを使って2ヶ月、ヨーロッパを旅した。そのときビックリしたのは、どの大きな町にもペコペコの古い車が頑張って、それもたくさん走っていたこと。「いや〜、物持ちいいな〜」とも思ったし、何よりその風景がカッコよかった。古い話とは言え、その延長線上に今があると思うと、南イタリアの田舎なんぞに行ったらまだまだフィアットの古いのがいっぱい走ってるんだろうなー、と楽しみにしていた。
ということで、先のエントリ「ゴミ箱」に続き、今回は車です。
・・・・なんですが、その前に、ちょっとだけ椅子。写真は、日本からの直行便で着いたローマの空港の、国内線の搭乗口の椅子。この搭乗口でダラダラ待つ時間がいつも退屈ですね。そのとき撮ったもの。何と革張りなんです。もちろん、この椅子ひとつではなく、みんなです。設置して何年経ってるかは不明だけど、当然のことながら、一番こすれる箇所がすり切れてます。こんなこと設置する前から分かっちゃいるだろうに。でも、これが革製品を誇る国の意地なのか。ただただ革製品の寿命の感覚が違うだけなのか。私はイタリアの靴が好きなんだけど、長持ちしないのがやや気になっている。そのイメージが重なった。今どきの日本だったら「税金の無駄遣い」とやり玉に挙げられそうだ。でも長距離フライトで疲れた身体に、この座り心地はよかったぜ。
話の寄り道ついでに公衆電話。これは10年以上前からあると思う。この曲線が何となく、ルイジ・コラーニ風。コラーニはイタリア人じゃなかったかな。
さてさて余談はこのぐらいにして、今回、成田からローマに着いてすぐ、国内便で南部の町バーリへ飛んだ。夜11時頃、ヘトヘトで着いたホテルのロビーの真ん中に、1970年頃のベスパが展示してあった。たしかに塗装もピカピカで状態がよく展示するに値するものだったんだろうが、写真を撮る気にならない。
それ見て「あれ、やばいなー」と思った。「こいつはもう町では走ってないんだ」という、不安な気持ちの方が大きかったから。イヤな予感を引きずりながら、翌日から町を歩き出すと、案の定、古い車が全然走ってなーい。日本でもよく見る新しいフィアットやアルファロメオ、スマートなんかがいっぱい走ってる。「あれ〜、おかしいな〜」と完全に肩透かし。
ある知人の話だと、ヨーロッパはユーロ導入の頃、各国は古い車を一掃整理したという。日本で言えば、排ガス規制やエコカー減税といったところだろうか。
まぁ、それでも何とか少しは見つけたので、ルノーを含め載せます。ただ、これらの古い車は、以前のように普通に走っているのではなく、マニアの車といった感じです。古いといっても、それほど古くもないけど。
しかーし、今回新しい発見もあった。それはこのオート三輪(Monopoliという町の市場で)。新車っぽいのも走ってた。ベスパのメーカー、Piaggioが作ってるAPEというやつらしい。こいつはいっぱい走ってて嬉しくなった。イタリアの旧市街は石畳で狭く曲がりくねった道が多い。おそらく、この道を作った頃は馬車(またはロバ車)が闊歩してたんでしょうね。だからそれとちょうど同じような幅のこいつはどこの旧市街でも大活躍。もちろん小回りも効くしで、必需品の様子を呈していた。
もひとつ別のオート三輪の写真も載せちゃいましょう(オストゥーニ旧市街にて)。もーこんな道で走ってるんですから、いくらフィアットが小さい車たくさん作ってたって、こいつじゃないとダメな道がたくさんあるんです。タイのトゥクトゥク、インドのオートリクシャーなど、アジアではオート三輪は主にタクシーだけど、このイタリアのAPEは運搬車。今回乗ることは出来なかったけど、こういう車が走ってる町の風景は実にいい。無理して残しているんじゃないんです。必要だからあるのです。そこがいいでしょ。
イタリアは国を挙げて、旧市街を残してます。ということは、こいつはずぅーと必需品で、町の風景の脇役を担ってくれるようにも思えます。最後に、バジリカータ州カステルメッザーノでの写真。信号機がありますね。その道、オート三輪でさえすれ違えず、見通しが悪いからです。頑張れ、オート三輪!
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