2011年11月30日水曜日

NYオリーブブレッド


先週末、うちのカミさんの両親、私の両親と私の家族4人、総勢8人で、うちの2人の子供の七五三のお祝いランチをした。2週間前に、近所の神社でご祈祷してもらって、そのとき境内で私が撮った記念写真を渡しがてらのランチだった。

実のところ、上の娘は満7歳、下の息子は数えで5歳(満4歳)なんだけど、無理矢理圧縮して、「一度にしちゃえ〜」と・・・・イカサマだけど、一度だし滅多にないイベント。その分パァ〜とランチしようということにした。そんなんで、場所は、パークハイアット東京のNYグリル。お天気にも恵まれ、52階からの眺めは最高で、東京スカイツリーも霞んで見えた。こういうメンバーでのアニバーサリーにはピッタリだった。

で、冒頭の写真は、このレストラン定番の食事パン、NYオリーブブレッド。近頃、このパンの粉の配合が17年ぶりに変わって、薄力粉が3割加わったという。「パンに薄力粉?」という方もいらっしゃると思うが、生地はややモッチリしてて、何とも素朴な味わいだった。

実はこのパンには我が「カンホアの塩」が使われている。その関係で、シェフからレシピまで教えてもらった。特徴は、ポーリッシュ種(水種、基本はフランス粉【中力粉】1:1水)の粉を薄力粉に変えたこと、とのこと。以下に記そう。

●NYオリーブブレッド●

薄力粉 300g
水 300g
イースト 0.5g
これを軽く合わせて常温で18時間かけてじっくり発酵させる。

そして 本捏ね。

フランス粉(中力粉)700g
水 340g
イースト 40g
カンホアの塩【石臼挽き】 15g
(普通20g程入るところ塩漬けオリーブが入るので少なめ)
オリーブ
バジルペースト

ところで、今から30年も前のこと。私は友人たちを訪ね歩きがてらに2ヶ月ほどヨーロッパを旅したことがある。そのとき食べた各地のパンには驚いた。あまりにいろいろあって、それぞれがあまりにおいしくて。

例えばパリの北駅のキオスクで普通に売ってた、チーズとハムのサンドイッチのバゲット。「キオスクで買ってこれかよー」と夜汽車のコンパートメントでしみじみ味わった感動は忘れられない。フランスのカレーの宿に泊まったときは、焼きたてのバゲットが朝食にふるまわれた。いくらでも食べられた。ウィーンで地元の人たちで賑わうパン屋の小ぶりで丸いライ麦パンには素朴な「粉のおいしさ」を教えてもらった。フィレンツェで、通りがかりに流行ってるパン屋を見つけたので買ってみたらパンに塩が入ってなくて驚いた。ローマの友人に連れてってもらった郊外のビザ屋のでっかい四角いピザも最高だった。「ピザはでかい方がうまい。焼きたてがうまい。だからお前にそれを食べさせるために、友だち10人呼んだ。みんなで食いに行くぞ」とイタリアらしくギューギューに乗った車3台で夜道を走った。なるほど大人数で食べれば、でっかいピザがすぐになくなるから、次から次へと常に焼きたてのいろいろなピザが食べられた。ワインが進む進む。(余談:ジュネーブの駅前にマクドナルドがあって、ハンバーガー食べたら、日本と全く同じだったのにも驚いた) チューリヒのテイクアウトのソーセージ屋でソーセージと一緒についてきたパン。ズッシリとうまかったな〜。ミコノス(ギリシャ)の港で、スバラキ(串焼き・羊肉だったと思う)の先っちょについてたパンのスライスもうまかったなー。何度か食ううち「スバラキにはこのパンがないと」なんて思いながらウゾを口に含んだ。

それら思い出に残ったパンたちにはみんな共通点がある。それは各地の料理・食材に合う、「素朴なおいしさ」だということだ。もちろんお邪魔した各友人宅で頂いたパンもしかり。30年も前のことながら、今でも記憶がすらすらとよみがえってくる。主食ってスゴイな。それが実感だった。当時私が日本で食べてたパンは何なんだとも思ったが、「日本ではご飯が主食」と疑わなかった。

しかし、時代は変わった。つくづく思う。日本でも、今じゃいろんなおいしさのパンにありつけるんだもの。それだけ、いろんなパンを求め始めたのだ。それは日本の人たちが好む料理・食材が変わってきたということ。私にとってパンは、ご飯の代わりというより、日本酒やワインに近い存在だ。発酵過程があるせいだろうか、いろんな料理・食材があっていろんな日本酒やワインがあるように、いろんなパンがあるのだ。

パンは、原材料・製法もいろんな選択肢があり、人の手がかかって出来上がるからこそ奥深く、いろんな顔がある。「とっても個性的でおいしいけど毎日食べるにはちょっと辛いな」というもの、また「毎日食べてられるけど、コレばっかりじゃつまらないな」とか。つまりは「きょうはこのおいしさ」、「明日はあのおいしさ」といろんな顔を楽しめる。

さて、強力粉が使われていない、モッチリ・シットリの食感の素朴な味わいのNYオリーブブレッド。

リッチなレストランのきらびやかさと、このパンの味わいの素朴さ。このコントラストが私的にはとっても気持ちよく、パンをお代わりした。そして4人のおじいちゃんおばあちゃんらも、「このパン、おいしい、おいしい」とお代わりしてた。この年配者4人は普段、パンといえば普通の食パンしか食べてない。そんな彼ら彼女らが、素直に「おいしい」と言える、NYオリーブブレッドだった。こんなところにも、このホテルのホスピタリティが密かに仕込まれているように思えた。

2011年11月28日月曜日

ピザの石窯、ただ今施工中


この間から、庭にピザ用の石窯を作り始めた。現在施工中。これで3代目だ。

初代は、簡単にレンガを四角く積んで、天井には鉄板をのっけただけ。窯というより、正確にはおくどさん(竈)だった。天井が鉄板なのは、ピザというより、チャパティが焼けるように作ったからだった。

その後、そのおくどさんでピザを焼くことを思いついたんだけど、ピザを焼くにはなかなか温度が上がらない。そこで、天井の鉄板の上にレンガを積んで、保温力をアップした。それで何とかピザも焼けたけど、熱が逃げるのが早くて、なかなか焼き続けるのが難しかった。

・・・・なんて思ってた頃、「カンホアの塩」の焼き塩の商品開発を始めた。これも石窯で焼く。「カンホアの塩」は私がプロデュースしてベトナムで作っている天日塩だけど、塩を焼く窯なんか、ベトナムでも日本でも世界中のどこでも、既製品なんてあるわけがない。だから、設計を含め自分で作るしかないわけだ。

・・・・ということで、石窯の勉強をせねばならなかった。特に窯の勉強なんてしたことのなかった私は、古くからの友人の陶芸家、黒沢有一氏に助けを求めた。陶芸用の窯は既製品もあるから、陶芸家さんみんなが自分で窯を作ってはいない。その点彼は自分で窯を作る上での知識・経験が豊富だったので、その知恵をお借りした。

彼には3回、カンホアへ来てもらった。それで窯を作ったり、焚き方の指導をしてもらったりして、「カンホアの塩」の【石窯 焼き塩】が出来上がった。

もちろん、彼だって塩を焼く窯を作ったのは初めて。窯の原理のようなことは、陶芸でも塩でも一緒だが、(粘土じゃなく)塩を焼くためにはそれなりの都合のようなものもある。その点も焼き塩用の窯には必要になったので、私も窯のことを知ってないとならない。

・・・・とは言っても、私はこういうことが好きなので、その設計から施工、窯焚きまでを含めて、楽しい仕事だった。そして、そのとき得た知識を応用して、我が家の庭のピザ窯の2代目を作ることにした。それがもう数年前だ。

2代目は、窯の中の対流を促すために、天井をアーチにした。アールのかかった園芸用のブロックを使ってね。これが簡単だった。そして、レンガを積むだけでなく、モルタルでくっつけた。普通のモルタルだけど。これで初代からすると飛躍的に温度が上がるようになり、ずいぶんと楽にピザが焼けるようになった。がしかし、温度を上げることを主眼にしたせいで、窯の入り口が小さくなった。ピザは直径15センチぐらいまで。また、普通のモルタルを使ったせいで、何度か使ううち、クラックが入って窯に穴が空いた状態になってしまったなどなど、少しずつ不都合が生じてきた。

そこで、今年の春、(隣にだけど)引っ越すことになったのを機に、思い切って3代目を作ることにした。

●ピザは直径30センチ
●窯の位置は壁際(煙突も壁際)
●天井のアーチはレンガで作る
●モルタルは耐火モルタルを使う

これで、ピザの直径は、15センチから30センチに。2代目と違い、窯の位置が壁際になったので、庭の中で場所をとらない。ただその反面、掃除の必要な煙突が壁際になったので、可動式にして掃除出来るようにした。天井のアーチは園芸用のブロックだと割れたので、木枠のアーチを作りレンガをのせてく工法にした。モルタルも耐火モルタルを使うことで伸縮性が出て、もう穴は空かないだろう。

・・・・てな具合に、3代目はさらなる進歩を遂げ、今年中には完成する・・・・かな。キッカケは塩を焼く窯作りだったけど、このピザ窯は趣味なので、楽しみながらゆっくり作ります。

2011年11月9日水曜日

カマンベールの味噌漬け


「乙(おつ)な味」という表現がピッタリだ。

先日、うちのカミさんが外で酒を飲んでたとき、メニューにあって頼んだ、カマンベール・チーズの味噌漬け。私は、その晩、子供の世話となったが、「こーれが結構イケルのよー」とうれしい土産話になった。

その飲んでた店は、東京・二子玉川のはせがわ酒店。私は行ったことがないので、酒屋さんと聞いて、「立ち呑みなの?」とついきいたが、女性でも気軽に寄れるオッシャレーなバーカウンターらしい。もちろん椅子もあるから立ち呑みとは言えない。

さて、そんなカマンベール・チーズの味噌漬け、早速自宅で作ってみた。

豆腐の味噌漬け、(カマンベールではない)チーズの味噌漬け。似たようなものがいくつかあるけど、カマンベールの味噌漬けは、何とも言えぬ「ほどほどさ」のようなものがある。その「ほどほどさ」が乙と言わせるポイントだと思う。

豆腐の味噌漬けのことを称して、「チーズみたい」という表現がしばしばある。そのときはそう思うのだけど、じゃあ実際にチーズの味噌漬けを食べてみると「それはチーズをそのまま食べた方がいいんじゃないの〜」と感じる。

おいしいチーズほど芳しいものだ。そこに味噌の香りをわざわざ付けることはない、ということだけど、この白カビで覆われたカマンベールチーズだと、その白カビのコーティングが味噌の香りを制御してくれて、「ほどほどさ」を感じさせてくれる。

だからと言って、同じ白カビでも、ブリーだともったいない気がする。ブリーは私の好物だが、それはそのまま食べたい。(カマンベールさん、ごめんなさい) つまりは、そんな高価なカマンベールではなく、どこにでもあるようなフツーのカマンベールでいいのです。そしてそのフツーのカマンベール・チーズが変身するのです。味噌で。

上の写真、やや白カビの層を通って味噌が若干中のチーズ部分に浸みてるの分かりますか。このぐらいで1週間。

さらーに、何てったって、豆腐と比べこのカマンベールの味噌漬けのいいところは、作るのが簡単なこと。豆腐の場合は、味噌に漬ける前に水抜きしないとならないけど、カマンベールならそのまま味噌塗ってラップにくるんで冷蔵庫にポン。それで1週間後には写真のようになる。3日でもいいかも。決して敷居の高いものじゃない。フツーのカマンベールと味噌さえあれば、誰でも気軽に作れる、カマンベールの味噌漬け。

いや〜、乙な味です。