2008年10月6日月曜日

東京・昭島の水道水

私は、東京の昭島(あきしま)市に住んでいる。昭島に住んでいる大きな理由のひとつに水がある。昭島の水道水は感覚的に軟水で、おいしい。100%地下水くみ上げの水なのである。初めて昭島の友人宅を訪れ、お茶をごちそうになったときの静かな驚きは今でも忘れない。

ときどき、市主催のイベントなどで、水道部の方々が「利き水」をしている。「○○のおいしい水」など数種類の市販のミネラルウォーターのラベルを隠して、昭島の水道水(蛇口をひねって出しただけの水)と比べる。「どれが一番おいしいですか?」の質問に、私は昭島の水道水を選ぶ。水は、その成分やクラスターも大事だが、それだけではないと思っている。私が数あるミネラルウォーターから昭島の水道水を選ぶのは、味だけでなくその新鮮さを感じてだ。「○○のおいしい水」も採水したばかりのものはきっと違うだろうと思う。

ちなみに、通常の井戸は5〜10m程度の深さらしいが、昭島の水道水源は、地下70mの深層地下水とのこと。いわば地層のフィルターを通っているから、水道法という法律で義務づけられている必要最低限の塩素が加えられているのみらしい。しかも水道料金が安い。詳しくは、昭島市水道部のサイトで。

水というのは、空気に似て、その味に慣れてしまう。とは言うもの、昭島の水の味に気づかされるときが年に2度ある。そのうちの一度がちょうど今、9月末〜10月初め頃(秋)だ。毎朝コップ一杯の水を飲む私は、1週間ほど前に「ん、うまい」と感じた。年に2度のもう一度は、5月末〜6月初め頃(春)。このときは、実は「ん、変わったな」と感じる。今の時期の「ん、うまい」より、春の「ん、変わったな」の方が説明がしやすい。それは、塩素の味・臭いだ。ちょうどどんどん気温が上がって暑さに向かう頃、これを感じる。このことを市のイベント会場で水道部の方にたずねたことがある。「暖かくなると、水道に塩素の量を増やしますよね?」ちょっと意地悪な質問だ。しかし、その答えは意外なものだった。「塩素の量は年間を通じて同じです。だた、暖かくなると水道水の温度が上がり、蒸発する塩素が増える。それを感じて同じことをおっしゃる方が多いんですよ」とのこと。塩素は蒸発する。金魚の水槽の水を一日置くのはきっとそのためだ。そしてその蒸発のスピードは、その水の温度で変わる。

一週間ほど前に、「ん、うまい」と感じたのは、水道水の温度が下がり、塩素の蒸発が抑えられ始めたということ。昭島の水道水はおいしいだけでなく、季節の変わり目も感じさせてくれる水である。