2015年8月19日水曜日

続・ベトナムの氷割り器〜「点、そして線と面」

8月3日のエントリで、ベトナムの氷割り器について書いた。その最後の方に、その氷割り器の弧が若干平らになっていることが気になると書いた。上の写真は、その部分をアップにして撮った写真だ。こっちの写真の方が分かりやすいと思う。端の部分がややせり上がっているとともに、端の弧の中央部分が2センチほど平らになっているのが分かるだろうか。これは両端ともそうだ。

この夏から使い始めて、何となく一ヶ月ぐらい使って書いたのが先のエントリで、それからさらに二週間余り毎日使い続けてきて、ようやくこの形の意味を感じるようになった。使い慣れてきたということなんだけど、レポートしたくなった。

氷を叩くとき、もしもこの端っこの弧が2センチの「平ら」でなく丸くなっていると、氷との接点は点になる。しかし、若干「平ら」になっていることで、その接点が線になる。短い線ではあるが、線が長すぎると力が分散してしまうので、きっとこのぐらいがちょうどいいのだと思う。タッパーで作った氷の固まりを、まずはその短い線を意識して下の写真のように叩く。写真を撮りながらなので、氷をボウルに置いているが、叩くときは氷を左手に持って右手で握った氷割り器で割った。
2〜3回、横に少しスライドさせながら、一の字に叩いて割れたのが下の写真。
真一文字に氷が割れた。当然のことながら、向きを90度変えて叩けば、この後さらに垂直方向にも割れる。そのようにして、上の2つになった固まりを、ちょうどコップに入るぐらいの大きさにしたのが下の写真。
こんな風に、純米酒を氷で飲むにはちょうどいいサイズ。
でまぁ、さらにキューブ状の製氷器の氷ぐらいのサイズにしてみよう。氷が上の写真の大きさぐらいからは、その短い線で割るよりも、その線のやや下の部分の(尾根の)平らになっているところで、手の平にのせた氷の概ね中央を叩いてみた。つまり、面で叩いたのだ。すると砕けるように、下のような写真の大きさになり、水筒にも入るサイズになった。
私はまだこの氷割り器ユーザー歴一ヶ月半ぐらいの初心者だが、それでも、最初の1個の氷の固まりを水筒に入るサイズまでにするのに30秒もかからなかった。

似たような役割のアイスピックの先は鋭く、小さな点だ。点の方が力が集中しやすい分、より大きな氷の塊でも割れるだろう。その代わりに、割る方向を定めるためにはある程度の熟練が必要になると思う。一方、このベトナムの氷割り器は、線で割るので、あまり大きな氷は割れないが、割る方向は定めやすい。さらに面で割ることも出来るので、氷を細かくする機能をも備えている。

バーテンダーのようなプロには向かないだろうが、アイスピックを使う一般家庭がどのくらいあるというのか。私を含めた一般家庭では、誰でも使えるこれで十分であり、とても優れている。無論、尖ってて危ないということもないし。

ベトナムは一年中暑いから、氷はいつも需要がある。ついでに言うと、ベトナムでは、ビールに氷を入れて飲むことも多い。季節を問わず、氷を毎日たくさん使うのだ。まさに気候は文化を作る。この氷割り器はその文化の表れであり、日本とは文化が違うのだ。この微妙に弧が若干平らになっている形も洗練されているように感じる。そして、「緩〜く(何となく)」うまく割れるこの感じがいい。物事極めることもいいが、この氷割り器を使っていると、南国ベトナムの「こんぐらいで、いいんじゃない」という「足るを知る」ような程よい感覚を感じるようで、楽しくもある。

それにしても、先のエントリでも書いたとおり、「この形って竹じゃない?」という疑問を思い出した。一番上の写真を改めて眺めて見ると、端に向かってややせり上がった部分が竹の節付近のようにも見えてきた。そうした方が力がかかりやすいだろうな‥‥。今度竹で作って、氷を割ってみたくなってしまった。

2015年8月11日火曜日

最近のかき氷

週末は学校休みの子供たちと遊ぶことが多いのだが、先週末その子供たちは、小学校の校庭に張ったテントに泊まるサマーキャンプというイベントに参加ということで、久しぶりに自由な時間が出来た。

最近は慣れてない自由時間。その朝思いついたのは、かき氷だった。
この暑さなのでね。

最近は、日光の天然氷とか、自家製のシロップや練乳のかき氷屋さんのことをよく聞く。そうした有名店は、夏場、長い行列ということも同時に聞くが、我が家の近くの立川辺りで「どっかないかなー」とネットで検索してみると、何とあった。

「雪の下」。大阪が始まりで、最近銀座にお店を出したらしい。「東京進出」っていうことだ。そして、今年4月に、何と立川にも出店したようだ。東京2号店が立川というのは?だが、地理的に東京の東(銀座)と西(立川)ってことかな。立川基地跡や駅周辺がどんどん区画整理されている立川はそれなりの場所なのか。

そんなことはどうでもいいとして、この「雪の下」、どうも最近流行りのパンケーキがメインらしいのだが、パンケーキの次あたりにかき氷も主張している。流行りと言ったら怒られそうだけど、日光の天然氷ではなさそうだが、天然水で作った氷らしい。まー、最近のかき氷初心者の私としては、これはちょうどいいと思って、早速行ってみた。

お昼過ぎ頃、店に入ると50人ほど入りそうな客席の9割方はうまっていたが、4人掛けのテーブルがひとつ空いていた。ラッキーだろう。言ってみれば、今どきの甘味処なので、ほとんどが女性客。2組だけカップルがいて、それで男性は2人。そこへ私が加わった。席につくと、目の前の目立つところに、20リットル入りの天然水の容器が3つほど積んであった。

かき氷を目指していったので、メニューのパンケーキのページは飛ばして、かき氷。迷わず、「京都森半抹茶氷(800円)」を注文した。それが冒頭の写真。従来のかき氷では、宇治金時が一番好きだからというのが理由だ。てっぺんに、豆かんの豆(赤エンドウマメ)のような甘く炊いた大きな豆が3粒。その下にアンコ。そして、抹茶を氷にしたもの(水+抹茶)を削った抹茶氷。これメニュー見たときからそそられました。はい。その氷を掘っていくと、中には、おそらく自家製であろう練乳の固まり(デカビーぐらい)が入っていた。

まずは、お豆をひとつ。あー、浅草の「梅むら」の豆かんが食べたくなった。やはり豆かんは「梅むら」よりおいしいのを知らない。あそこは特別中の特別だとは思うが。で、ここのお豆はやや皮がしおれた感じでやや硬いが、サイズがでかくてリッチな感じ。普段甘いものを食べない私が、珍しく自主的に甘いものを食ってるなー、と思いながら、抹茶氷をスプーンひとつ口に入れたときの食感は忘れられない。フワッと舌の上で溶ける。きっと氷の温度が極端に低くないのだ。水に抹茶が入っている分、氷点が低いこともあるのだろうか。氷の削り方も、初めてのもの。写真でも分かるかなー。カンナで厚く削ったような感じ。昔、お蕎麦屋さんが軒下に干していた、厚みのある鰹節のような(鰹ではないかも)削り方だった。これが舌の上にのると、フワッと溶けて、舌の上に広がる。これがとてもいい。

次に味の方だが、渋ーい。この抹茶、それは薄茶ではなく、濃茶の渋さだ。内部の練乳の存在を知るのは、後のことだったので、トッピングされた3粒のお豆と少量のアンコとのアンサンブルで、しばらくこの抹茶氷を食するのだが、お茶で言えば、濃茶ばかりを何杯もお代わりして、お菓子にありつけないような状況だった。いくら甘いものを食べない私でも、度重なる抹茶の渋さが途中で辛くなった。でも、その辛くなって耐えられなくなったタイミングで、中の練乳の固まりに出会った。それは光明が差した心持ち。そのスリルは、とことん追い込められた主人公が、最後の最後に救われる映画のようにドラマチックだった。

こんな大人向けのかき氷だけでないので(パンケーキがメインだし)、今度は子供やカミさんを連れてこようと、会計のときに、店員さんにきいてみた。

「何時頃が一番空いてるの?」
「そうですね。開店時(11時)か、夕方5時頃。4時だとやや微妙ですねー」

氷を食べ終わった野郎一人が落ち着く空間ではなかったので、そそくさと、35℃の炎天下へと店を出た。ちょっとした私の自由時間は終わった。作りかけの棚作りをこの日に完成させなければならなかったのでね。

2015年8月3日月曜日

ベトナムの氷割り器

「上の写真は、一体何でしょう? 長さは20センチぐらい。アルミ製です」

と、本当は、クイズにでもしたいところなのだが、タイトルで謳ってしまっているので、クイズにならないのがとても残念だ。ひっくり返して見たのが下の写真。
「TP」と文字が入っているが、それは○○印っていうぐらいの一つのブランド名で、特に深い意味はない。ベトナム・ホーチミン市のことを、「TP. HCM(ホーチミン)」と称したりするから、そこからとった「TP」ぐらいのことだろう。

何しろ、これ、ベトナム人なら誰でも使ったことがある、またはベトナムの家には一家に一つは必ずあるという、氷割り器なのだ。しかし、他の(氷をたくさん使いそうな)熱帯の国では見たことがない。私は初めてベトナムに行ったときから、これが気になっていて、10年ほど前にベトナムで購入し自宅の引出しの奥にしまっておいたのを、つい先日思い出してキッチンのすぐ手が届くところに置いた。この夏から、我が家で大活躍してもらっている。

使い方は何とも単純。

冒頭の写真で言うと、細長い下3分の1ぐらいのところを持って、「TP」の文字がある丸くなった面や上部の端で氷を叩く。同じような役割の道具としては、アイスピックになるのだが、ご覧のとおり、これは全く尖ってないから、とても安全だ。子供でも容易に使える。

我が家では、子供たちがだんだん大きくなってきて、この時期、氷を使う量も増えてきた。しかも冬場なら一日二回は作れる冷凍庫の製氷器も、この暑さになると一日一回になる。製氷器で作る氷だけでは足りない。そこで私は、タッパーに水を張って、製氷器とは別に氷を作るようになった。その氷の塊を割るのに、このベトナムの氷割りは実に便利だ。ほぼ一年中氷が活躍するベトナムでは、リヤカーなどで氷屋さんが大きな氷の塊を運びながら、売る直前に靴の箱ほどの塊にしてレストランなどに売っている。よく見かける風景だ。レストランはその塊をこの氷割り器で割ってグラスに入るサイズにするのだ。また、ベトナムの一般家庭では、我が家のように、タッパーで氷の塊を作って、割って使う家も多いと思う。

また、余談ながら、ベトナムへ行って、町中で、“チンチンチンチン♪”とリズミカルな金属音が聞こえたら、それはこの氷割り器を箸で叩いている音だ。それはフォー(ベトナムの米麺うどん)の出前の客引きだ。たいがい子供が歩きながら鳴らしている。その子供に、注文するとフォーを出前してくれる。

さて、この氷割り器。
私は、細かいことが気になった。
 上の写真、この丸くなった「TP」側の面の弧をよーく見て頂きたい。実物を手に取るととてもよく分かるのだが、手前から奥に向かっての尾根線が、2センチほどの幅で、田んぼのあぜ道のように平らになっているのが分かるだろうか。その部分はちょうど氷が当たるところだ。氷を割るには、平たくなってない方がよさそうだが、本当はこの方がいいのだろうか。もしかしたら、私が気がつかないだけで、ここにベトナムの科学が反映しているのかも知れない。何しろ、あえてそう作ってあるように見えるので、私はとても気になってしまう。

そして、一番気になるのは、「そもそも何でこの形なのか?」

「この形はどう見ても、竹でしょ」と感じるのは私だけだろうか? 確かなことは分からないが、昔は、こうして竹を切って縦割りにしたものを氷割りに使っていたんだろうと想像してしまう。しかし、製氷機が作られた頃には、このぐらい単純なアルミの成形も難しくなかったとも想像出来るので、本物の竹が使われていた期間はとても短かったに違いない‥‥などと、私の妄想は巡る。別にこの形でなくても、例えば、スリコギのような棒状でもいいような‥‥。でも裏側をくりぬいて軽くしたようなこの形が優れているのか‥‥。何でベトナム人は、今もこの形を使っているのだろうか?

「アイスピックなんていらないよ。そんな厳密に割る必要はないからね。尖っていると危ないし。昔はこれが竹で、それが使いやすかったら、今も同じ形なだけさ」

この形を見ていると、そんなベトナム人の言葉が聞こえてきそうな気がする。何となく、氷がアバウトに割れるこの形が、ベトナムのいい意味でのアバウトさを表現しているように、私は思ってしまう。