2020年7月17日金曜日

ラッキョウの酒粕漬け


つい先日、「塩だけで甘いラッキョウ」というエントリを書いたが、きょうもラッキョウの話。そのエントリでも書いたが、去年、多めのラッキョウを漬けた。オーソドックスに塩水漬け(10%塩水)、醤油漬け、ちょっと洋風に、塩・ワインビネガー・少しハチミツ・ローレル・ディル・赤唐辛子のマリネ液漬けとやったが、一番多かったのは、シンプルな塩水漬け。

よくある甘酢漬けが、あんまり好きではないこともあり、塩水漬けを少し水で塩抜きして、アッサリとそのままバリバリ食べるなんてことをする。それでも余るので、どうしようかと思案してたら、カミさんが「酒粕漬けなんてどお?」と提案した。

それで連想したのが「塩粕」。10年ほど前だが、それをこのブログで書いたことがあった。酒粕に塩を加え、1〜2年寝かせたもの。最初は白色だった酒粕が飴色(茶色)になる。主に漬け床として使う。米・米麹・酵母で作る酒の粕だから、乱暴に言えば、塩麹に米と酵母を足したようなものだ。詳しくは以下のエントリだが、今は販売してないみたい。いいものなのだけど、元々酒蔵(久保田本家)のまかないで限定的に使われてたものなので。



酒粕自体には塩が含まれていないが、10%塩水に漬けたラッキョウには塩が多め。カミさんの「酒粕漬けなんてどお?」とは、(塩気のない)酒粕に(しっかり塩気のある)ラッキョウを合わせるという寸法だ。無論、「塩粕」の場合は1〜2年の熟成期間があるから、異なるものとなるが、この塩ラッキョウの酒粕漬けもなかなかよい。熟成してない分、複雑な旨味には欠けるものの、酒粕がフレッシュな分、香りがいい。

私にとってラッキョウは、口の中をサッパリさせる口直し的な存在なので、酒粕の芳醇な香りとともにパリッとした歯ごたえのラッキョウはいける。それまでもたない気がするが、置けば置くほど徐々に「塩粕」に近づくことになる。

6月頃に、塩水に漬けたラッキョウを、そろそろ塩抜きして漬け直そうかななんて思ってる方。塩抜きしないで、そのまま酒粕に漬けちゃうのもひとつの手です。酒粕の香りで一捻りした、サッパリな塩ラッキョウになります。

追記:
ただ、考えてみると、今は酒粕の季節ではないな。今どきは、保存技術が進歩しているから、この時期でもあるかも知れないが、普通に出回るのは11月頃だろうか。

2020年7月14日火曜日

ビリケンシュトック、車の運転用



上の写真は、私のサンダル、ビリケンシュトック。ビリケンシュトックは3つ目。履くのは夏場が主だが、これは3年ぐらい履いたもの。ビリケンシュトックのサンダルを初めて知ったのは、1983年の夏にヨーロッパを2ヶ月旅行したときだった。当時私は21歳。当然のことながら、出会うまたは見かける若い旅行者は、ヨーロッパ人がほとんどだった。そして、旅を始めて1〜2週間も経った頃、でっかいバックパックを担いで、足下はビリケンシュトックのサンダルというスタイルが多いことに気がついた。夏の短パン・Tシャツという服装も手伝って、このサンダルがやたらと存在感があった。当時はだいたいが踵にバンドが巻き付いてるタイプだった。それをその主にきくと、「旅行中は歩くことが多いから、踵にバンド付きがいい」なんて言ってた。私はというと、宿なんかでは、いわゆる便所サンダル。便所サンダルも悪くないが、歩き回るには心許ないので、普段歩き回るときはスニーカー。そうなると、どうしても計2足必要になる。しかし、ビリケンシュトックの旅行者たちは、それ1足でオールマイティ。「それにこのビリケンシュトックは修理も利くんだぜ」なんて言われると、「へぇー」なんて思いながら、憧れもした。

そんな思い出があるサンダルだが、話を今に戻そう。

半年ぐらい前のこと。冒頭のサンダルのソールを見たら、右足の踵だけが極端に削れていた。「なぜ右足だけ?」としばらく疑問のまま。「あれ、おれ最近歩き方が偏っているのかな?」とまで思った。しばらくモヤモヤしたが、つい一ヶ月前頃、「あー、この削れはアクセルだ」と、ふと気がついた。

車を運転するとき、ブレーキの方(左足)はいいのだけど、アクセルペダル(右足)は、床に付いた踵をを支点にして踏む。床に付いた右足の踵は尖っていて、サンダルだから、不安定。何ともアクセルペアルを踏みにくい。そして、こういうことがしばらく続くと、一年も経たないうちに、コルク状の踵がすり減ってしまったのだ。

先の思い出話にもあったとおり、ビリケンシュトックのサンダルは、「歩く」ことを主眼に設計されているだろうから、車の運転をするときは考えない方がいいのかも知れない。車の運転には、それ専用の靴を車内に用意しておくというのが正論だろう。しかし、出来たら1足オールマイティを目指したいじゃないですか。そこで私は考えた。

「この削れた部分に、ソールを貼ればいいんじゃないか」と。

私はホームセンターへ行って、ゴムのシートを探した。下の写真、厚み2mmのシートと革靴用の接着剤を使った。

そして、それを貼ったのが下写真の左側。(写真右側の左足の踵は、まだしっかりソールが残っていて、コルクも削れていない)


アングルを変えると、こう。


で、ですよ。
これ履いて運転してみると、何とも快適じゃ〜ないか〜。新たに貼ったゴムシートの踵が床にフィットして安定した。もしも、このゴムシートを貼らないで運転を続けると、コルク状の踵はすり減る一方だから、このサンダル自体の寿命も短くなったことだろう。しかし、ここまですり減ってしまった以上、逆に新たに出来てしまったその面を利用して、踵ソールを貼る。すると、この新しく出来た面ゆえに、アクセルペダルを安定して踏めるようになる。(ゴムシートを貼った右足踵の上端部分が少しせり上がっているのは、接着時にガムテープで固定した際についたクセ)

およそ40年前、自動車学校の学科授業で、運転に適した履き物は「踵がしっかりした靴」と習った記憶がある。しかし、今どき「踵がしっかりした靴」なんてまず履かない。

ビリケンシュトックは、おそらく最も歩きやいデザインについては熟知していることだろう。しかし目先を変えるように、毎シーズン、新しいモデルを出し続けている。見た目だけじゃなく、こうして構造的に、右足の踵部分が車の運転使用になっているモデルなんかを出してくれないかな。左ハンドル車でも、アクセルは右だろうから、右足だけでもいい。ビリケンシュトックのファンで、車を運転する人は少なくない気がするのだけど。

2020年7月2日木曜日

塩だけで甘いラッキョウ


不思議だ。何とも不思議でならない・・・・が、現実は真実しか語らない。

うちのカミさんの実家は昔から本場鳥取でラッキョウを栽培している農家なのだが、私はこれまで一度もラッキョウを漬けたことがなかった。しかし去年のこと、仲間内でラッキョウ漬けの話になり、それならと多めのラッキョウをカミさんの実家に頼んで送ってもらった。

数人で分けて、それぞれがそれぞれのスタイルで漬けたのだが、そのうちの一人のラッキョウ漬けには驚いた。去年漬けたので、ちょうど一年ものを、つい一週間ほど前に、数個頂いた。(冒頭の写真)それをひとつ頬張ってみると、

微妙な甘味と酸味、後味にやや苦味。

私は、よくある(例えば、カレー屋さんの添え物など)甘酢に浸かったラッキョウは好みではない。私にとって、その多くが甘過ぎで、飽きてしまう。ラッキョウは、パリパリ感のある歯ごたえが身上で、それには、甘さ無し、あっても抑えめのサッパリとした味が似つかわしいと思っている。

そのラッキョウを食べて、私はてっきり、よくあるラッキョウ漬けのように、塩水に漬けた後、糖分と酢の甘酢に漬けたのだと思った。しかしその甘味と酸味が、実に絶妙に抑えが効いてて、ほのか。よくある甘酢に漬けたラッキョウとは明らかに違う。サッパリと食べられて、おいしい。

常日頃、料理って、バランスとかハーモニーだと思っている。甘味、辛味、酸味、鹹味、苦味、旨味など、何か突出した味ではなくて、それぞれの味が調和した味。それがおいしい。料理してると、食べる人に何かを伝えたいという欲のようなものが出て、味に力が入り過ぎることがある。そうなっちゃうと、ある意味「分かりやすい味」にはなるのだけど、バランスとかハーモニーが難しくなる。おいしい料理って、素材の味・食感を感じさせながら、その周りでそれを補ってあげる。そのために、素材だけではなく、いろんな料理法、調味料がある。例えば、火を通しすぎてはなくなってしまうものは、余熱を含めてどこかで止めねばならないし、いい香りだからと使い過ぎると、辛(つら)い香りになってしまう。バランス・ハーモニーのためには、「程いい抑え」が必要なのだ。

私は、このラッキョウ漬けに何とも絶妙な「程いい抑え」を感じ、作り手に「いや〜、イケルね。甘味・酸味が絶妙に抑えられれるところがとってもいい感じ」と伝えた。すると、返ってきた答えは何とも意外。「それ、ただ塩水と唐辛子をちょっと入れて、流しの下に置いといたただけよ。甘味も酸味も加えた訳じゃないから、抑えたというもんじゃないなー」と。

「えー、この甘さと酸味は、加えたものじゃないの?」と、私は何度もきいた。抑えが効いているとはいえ、糖分と言える程の甘さを感じる。糖分を加えながらも、その程度が絶妙だと思ったのだが、そうではないと言う。失礼と知りつつ、しつこく、「一年前のことだから、砂糖加えたの忘れちゃっただけなんじゃないの?」とも。しかし、「何%かは忘れちゃったけど、塩水と少しの鷹の爪だけなのは確かだよ」と答えは変わらない。

酸味については、乳酸発酵した感じがあるので、「ちょうどいい塩分で、うまく乳酸発酵した」と思えたが、甘味については、加えていないのに、どこから来たのか。それが腑に落ちず、不思議でならなかった。ここはひとつ、これを本場鳥取出身のカミさんに食べてもらおうと思った。その晩、そのラッキョウ漬けをひとつ食べた彼女は、「やや苦味が強めだけど、おいしいね」と言った。そこですかさず私は、「それ、砂糖・みりん・ハチミツなんかの甘味が全く入ってないんだよ」と言ったら、「まさかー」。「いやいや、おれも驚いてね、それで少し持って帰ってきたのだよ」。

5分ぐらいすると、彼女は以前、野菜料理研究家の姉に「ラッキョウ(自体)って甘いんだよ、知ってる?」と言われたことを思い出したと言う。そのときは、「もう全部食べちゃって残ってないんだけど」と、実際にはその塩水に漬けただけの甘いラッキョウは食べてないらしい。しかし、意外なこと言われたので、記憶に残っているという。

二人に言われると、私も考えを改める方向に向かった。そもそも私は現物を食べたし、そう主張するひとりは、鳥取出身、それもラッキョウ農家出身の野菜料理研究家だ。考えてみると、(ラッキョウの仲間っぽい)玉ねぎやエシャロットなど、加熱すると甘くなる。新玉ねぎは、水にさらして辛味・苦味を取るとほんのり甘く感じる。この甘くなったラッキョウも、そういうことか。そう思うようになった。

ちなみに私自身は、同じラッキョウを、よくある塩分の10%で漬けたが、こんなことにはならなかった。しっかり漬かって、苦味は少なくなり、やや歯ごたえもよくなったものの、乳酸発酵もしないし、甘味も感じない。

『ラッキョウを、あるパーセンテージの塩水に漬けると、やや乳酸発酵しながら、ラッキョウの甘味が出てくる』

そのパーセンテージは、一体何%か? これが肝心なのだけど、そのラッキョウ漬けの作り手には「パーセンテージの記憶なし」。野菜料理研究家であるカミさんの姉は、「適当にやった」とのこと。使った塩は共通して、私が作る「カンホアの塩」。そんなところに「カンホアの塩」の違いが出るものか。冒頭の写真にもある現物の甘いラッキョウ漬けを食べて、私が感じる塩分は、3%ぐらいか。ラッキョウの水分も出ただろうから、漬けた塩水は5%ぐらいだったかも知れない。

ラッキョウは、去年たくさん漬けたので、まだ残っていて、今年は漬けていない。来年にはなくなりそうなので、3%、5%、7%ぐらいで、複数試してみようと思う。乳酸発酵の酸味とラッキョウ自体から出る甘味にによる、「程いい抑え」の効いた酸味と甘味。きっとちょうどいいその黄金比があるはずだ。今から楽しみだなー。