2014年3月27日木曜日

生が終われば、死も終わる

先日、健康診断に行った。
内視鏡(胃カメラ)を入れるにあたり、その直前に鎮静剤という名の麻酔を行った。あらかじめ針を腕の血管に差して診療台に横たわった。「はい、これから鎮静剤入りますね〜」という看護婦さんの声は憶えているんだが、その5秒後からは記憶が全くない。もうろうとした中、起こされ、気がついたら、終わっていた。

たまたまだが、寺山修司の「幸福論」という本を読んでいて、その中に、以下のような下りがある。

「生が終わって死が始まるのではなく、生が終われば、死も終わるのだ。死はまさに、生のなかにしか存在しないのだから」

これを読んでたときは、「ん〜、なるほど。さすが寺山修司、いいこと言うなー」と観念的に思ったのだけど、内視鏡の麻酔から覚めた後、意識を失ったときのことを思い出した私は、「あー、あれが死んだときの感覚なんじゃないか」と思った。それは確かに生とか死ではなく、

「無」だった。

死に方にもいろいろあろう。でも、たとえどんな死に方でも、死は無なんだと思う。例えば、痛さを感じている間は生きている。でも、死を悟った瞬間、もうその痛さも苦痛ではなくなるのではなかろうか、とさえ思った。麻酔中の見事に何もない「無」の感覚を思い出すと、そう思われるのだった。

「生が終われば、死も終わる」

この言葉は、「死は恐れるに値しない」とも言える。恐れも生の中にした存在しないだろうから。天国も地獄も生の中にあって、生が終われば、「死」も含め全てが終わるのだ。つまりは、死は考えなくてもいいことだ。そう思うと肩の荷が下りた気がして、ホッとした。

それにしても、おかしなのは、こんなことを思う私が健康診断を受けていること。
一体、何てこった。

2014年3月18日火曜日

タンソンニャットのタクシー

先週一週間、ベトナムへ出張に行ってた。目的地は、仕事場であるカンホアの塩田なのだが、成田から乗った飛行機は、まずはベトナムの玄関口、ホーチミン市のタンソンニャット空港に到着する。町の中心までおよそ1時間のところだ。私がベトナムに通い始めて16年ぐらいたったが、国内線を含め年に2〜6回この空港に降り立つ。

ベトナムは私が知るこの16年の間、実にいろんなことが変わった。その変わった中のひとつ。この空港のタクシーのことを書いてみようと思う。

1.平和なタクシー時代

初めてベトナムを訪れた際、このタンソンニャット空港から町中までの交通機関はタクシーだけだった。だから空港を出たら迷わずタクシー乗り場へ。2〜3年は普通にメーターで行ってくれた記憶がある。ちなみにこの頃のタンソンニャット国際空港は、現在国内線用として使われている空港だった。

2.ぼったくり全盛時代

その後、新しい国際空港が隣の敷地に建設された。その頃には「普通にメーターで」は、夢物語になった。何となく、タクシーに乗るときから雰囲気の違いは感じつつも、町中の目的地へ着いて料金を払うとき、通常価格(町中で普通に走るとき)の10〜20倍など法外な料金をふっかけられた。タクシーメーターのことを言っても、「これは壊れている」など、とりつく島もない。さすがに10〜20倍となると、こっちも「なめんなよー」と腹が立った。タクシーの運ちゃんと喧嘩腰の言い合いになり、何とか3〜5倍ぐらいで「仕方ないかー」と折り合いをつけ、それはそれは疲れ切った上に嫌〜な気分になったものだ。そしてそれがその後何度か続いた。

3.タクシー・チケット時代

「この空港のタクシーは、この国の鬼門だな」と思い始めた頃、タンソンニャット空港の出口直前に、タクシーチケットのブースが設けられた。それが今から10年ぐらい前か。そのブースでは、町中へのタクシーチケットなるものを販売していた。ただし料金は通常価格の2倍ほど。ブースのお姉さんは、「これを買いさえすれば、あとはチップも要りませんよ」と売る気満々。購入すると、「この人について行って」と別のお姉さんが登場し、人混みの中を抜けて、契約している一台のタクシーまで先導してくれた。

タクシーの運ちゃんと頑張って喧嘩して何とか3〜5倍の料金を払って憔悴するより、2倍の料金を払ってでも穏やかに目的地に着いた方が、私にとって断然よかった。だから、それから何年かは、そのタクシーチケットを買って、町中へ向かった。

ここでひとつ断っておくが、これは何も不慣れな外国人だけがカモにされてたという話ではない。地元サイゴン在住のベトナム人だって、20倍とは言わなくとも、5倍、10倍は当たり前のようにふっかけられていて、サイゴン市民の中でも悪評高かった。お迎えの車などがある場合以外、他に交通機関がない。経済学では、「需要と供給で価格が決まる」という古典的な考え方があるが、まさしくここのタクシーは、売り手寡占市場になっていた。しかし、時と共に、公共の路線バスが走り始めたのもこの頃だった。ただ、大きな荷物を持っての路線バスはちと厳しい。

4.適正価格時代の到来

それで、です。つい先週のこと。いつものように、空港出口でタクシーチケットを買おうと思ったら、そのブースが消えていた。近くにいたホテルのインフォメーションのお姉さんにそのことを尋ねると、「タクシー乗り場へ行きなさい。メーターで行ってくれるから」と言われた。私はあっけにとられたが、「タクシーチケットもないことだし、騙されたと思ってタクシー乗り場へ行ってみるかー」と行ってみて、乗ったタクシーの中で撮ったのが冒頭の写真なのだ。

そのタクシー乗り場には、5〜6社のタクシーが一台ずつ一列に並んでいた。そして、ある会社のタクシーが一台出発すると、同じ場所に同じ会社の次の一台がやってきた。空港出口から一番近い場所には、昔から悪名高い「Saigon Airport Taxi」などが並び、一番遠い場所には、私がいつも利用する“Mai Linh”や“Vinasun”の乗り場があった。当然、私は客引きをくぐりながら遠く(と言っても20メートルほど)の乗り場の“Mai Linh”タクシーに乗った。

“Mai Linh”の乗り場脇には、緑色の“Mai Linh”の制服を着たお姉さんがいて、「このタクシーにどうぞ」と促してくれつつ、乗り込むにあたって、そのタクシーの番号と日付などを走り書きしたカードを手渡してくれた。この写真のは、タクシー番号が1183で、日付が3月8日。このカードは、例えば、「運ちゃんの態度が悪い」ぐらいも含めた苦情一切をタクシー会社に言うとき、また忘れ物をした際にも使う。

以上、大きく変わったと思いませんか? たったと言えばたった16年の間に、タクシーひとつがこうも変わった。これは人々の生活スタイルの急変、そして経済の急成長がもたらしてきたベトナムの変化のひとかけらだ。ぼったくりなどの金銭主義、常識や理性の感覚、交通インフラの整備など公の政策など諸々がもたらした現実そのものだったと思う。

タンソンニャットからタクシーに乗るのが楽になった。でもそれはひとかけらの現実だ。時を同じくして、町中の市場は徐々にスーパーマーケットに変わってゆき、路上のカフェもエアコン完備のカフェへと様変わりしてきた。全てはこの国の人たちが決めることだが、世の中、あまりきっちり整備されても人間味が薄れて面白くないんだけどな。そんなの、よそ者の戯言(たわごと)に過ぎないのは重々承知しているのだが。

私は、この緑のカードを手にしてタクシーに乗り込んだとき、運ちゃんとしたくもない喧嘩をしてた頃を思い出し、個人的に感慨ひとしおな気分になった。そして思わず記念撮影までしまった。まぁー、サイゴンへ行かれる方の参考程度にはなったかな。

※追記
およそこの10ヶ月後、私は成田からタンソンニャット空港へ降り立った。一年足らずのうちに、事情は変わっていました。その模様は、こちらまで。
●タンソンニャットのタクシー、2015年

2014年3月7日金曜日

ガスコンロの部品交換

上の写真、何の変哲もないガスコンロに見える。

元々このガスコンロは10年ほど前に購入したものだった。まぁ、10年も使ってきたせいで、徐々にガタが来て、最近使いにくくなった。例えば、フライパンに油を敷き、油が熱くなるのを待っていると、だんだん油が手前側に片寄ってしまう。つまり、水平でなくなった。ソテーをするとき、とても困る。餃子を焼くとき、とても困る。その原因は、五徳の下の汁受け皿が腐食してボロくなったこと、またコンロの上部を覆う天板(写真ではグレイ色)の五徳を載せる部分がボロくなったりしたことだ。中華鍋もよく使うので、どうしてもその重みでその部分がポロくなったのだと思う。

平らでなくなったのが気になり始めた頃は、ガスコンロの足に厚紙を挟んだりしてごまかしながら、使っていたが、それも何年かすると、どーにもならなくなった。

「買い換えか?」と思いきや、困ったことがあった。それは、最近のガスコンロには、温度センサーが2口ともについていることだ。ちょっと調べてみたら、どうも数年前にそれが法律で義務づけられたらしい。ということは、「買い替え」は、「センサーは2口両方になること」を意味する。

10年ほど前のガスコンロは、写真でも分かるとおり、(右側の)片方だけだ。例えば、ミルクパンで、少量を火に掛けるとき、その軽さのせいで、温度センサーが引っ込まず、そのミルクパンは傾いてしまう。また、我が家では、七輪を多用するが、炭に火を付ける際、鍋の底に穴が開いたような型の火起こし器を使う。当然ながら、火を起こすまでは通常の空焚き以上に温度が上がるため、温度センサーが働いてガスが止まってしまう。無水鍋もしかり。

どー、しよー。

と思い悩みながら、ホームセンターに寄ったついでに、ガスコンロ売り場を見に行った。センサーが両方についたガスコンロがズラリと並んだ脇に、ガスコンロの部品売り場があった。それまで、ガスコンロの部品交換なんて考えもしなかったのだが、あるんですね〜。その部品売り場には、我が家のコンロに合うものはなかったが、帰宅後、調べてみると、結構しっかり交換部品が揃っている。しかし、決して安くはない。

ちなみに、我が家のはリンナイ製。
リンナイの交換部品販売のサイトは、以下。
http://www.rinnai-style.jp/

パロマさんの方もちょっと見てみただけだけど、ありました。
http://www.paloma-plus.jp/

そして、実際に私が注文したリンナイさんの部品とその価格は、以下で、合計6.300円也。

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  商 品 名    : トッププレート<フッ素コート>※排気口カバーが取り外せるタイプです。
  商品コード   : 001-977-000
  金  額    : 2,730円 × 1個=2,730円

  商 品 名    : しる受けカップ【左右共通】
  商品コード   : 009-252-000
  金  額    : 630円 × 1個=630円

  商 品 名    : ごとく(五徳)【左右共通】(グレー)
  商品コード   : 010-275-000
  金  額    : 1,050円 × 2個=2,100円

  商 品 名    : グリル焼き網
  商品コード   : 071-033-000
  金  額    : 840円 × 1個=840円
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  小  計    : 6,300円
  送  料    : 0円
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  総 合 計   : 6,300円
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6,300円が高いか安いかは人による。でも、先に書いたとおり、温度センサーが片方だけにしかついていないタイプの価値がとても高い我が家にとっては、安かった。これでほとんど新品のような気分。もちろん、フライパンに敷いた油も片寄ることはなく、火起こしも出来るし、ミルクパンはセンサーのない側で火に掛ければいい。グリルの焼き網も替えたから、魚の皮が網にへばりつくことも(当分の間は)なくなった。

あ〜、快適、快適。同じ悩みを持ってる人にはオススメです。極めて少数だろうけど。