どこにでもある小学生の上履き。これは2年生の息子のものだ。この「足の甲に幅広ゴム」のデザインは私が子供の頃から変わらない。今から4年前、息子のお姉ちゃんの小学校入学当時、久しぶりにこの上履きを見てふと思ったことあった。
「あー、今でも小学生の上履きのデザインは変わらないんだ。でも、何で、昔からこのデザインなんだろう?」
その答えとして、当初、私が思ったのは、「このデザインが一番履きやすいからだろう」だった。確かにそれは間違いないだろう。でも、毎週のように、この上履きを洗い続けて4年ぐらい経った一ヶ月ほど前、突然、別の理由に気がついた。
上履きに限らず、スニーカーなど靴を洗うときは、写真のような、柄の付いた靴洗い用のブラシで洗うのだが、子供の上履きは一週間毎日履くしとても汚れる。その汚れをゴシゴシ洗っていると、靴内部のつま先部分は洗えるのだが、どうしても足のカカトの部分、靴のカカトではなく、足のカカトが踏む靴の中の底の部分が洗いにくく、その部分の汚れがどうしても残った。ブラシ先端の狭い部分を靴のその部分にあて、ブラシを立てて擦るのだが、うまく擦れないのだった。
軽いストレスを感じながら、「しょうがないな」と思い、4年が経った。
そして一ヶ月前のあるとき、気がついた。ブラシを反対向きにして、つまりつま先の方から幅広ゴムの下を通して、カカト方向に向かってブラシを擦ればいいんだー、と。それが冒頭の写真である。こうすると、ブラシの広い部分を使いながら、足のカカトが踏む部分を容易に擦ることが出来た。
もう50年も前からこの上履きを見てきて、この上履きのデザインの意味を初めて知った思いがした。先述のとおり、履きやすさもあろう。でもそれはこのデザインの半分で、もう半分は、洗いやすさだったんだ、と思った。
思えば、私が小学生の頃は、上履きを含め、自分で靴を洗うようなことは一度もなく、親に洗ってもらっていた。数十年後、今度は自分が子供の靴を洗うようになって、その汚れに苦労している。その段になって初めて、洗い方を考え、ハッとあるとき、「なんだ、こうすればいいじゃないか」と気がつく。そして、改めてこの上履きのデザインを眺めてみると、別なモノに見えてくるから不思議だ。「よーく、考えられているなー」と、今さらながら感心した。
この上履きのデザインの場合、何年か洗い続けたことがキッカケで気がついているのだが、何年も洗い続けるまで気がつかなかった自分がいるのも事実だ。そう思うと、こういうことって身の回りにたくさんあるような気がしてきた。昔から身近で見慣れたようなものながら、それまでその意味や価値に気がつかずに、または部分的にしか気づかずに、長い時間が経過してしまうことって。それに気がつくだけで、便利や、ときには幸福感まで享受できるというのに‥‥。
気づいていないことに気づくこと。それは難しい。人間にとって、気づいていないことは無に近いからだ。「近い」というのは、潜在的には、「きっと気がつく」という希望的観測から。だから、ただの「無」なのかも知れない。
下の子が、小学校を卒業するまでに、あと5年。上履きを洗う度に、自分に問いかけてみる。「ここにブラシを突っ込んで洗うことに、何年も気がつかないぐらいなんだから‥‥」、身の回りに、保護色になって見えないことはないのだろうかと。未だに気がついていないだけで、必ず、あるんだと思う。
2015年6月22日月曜日
醤油小屋
3月17日のエントリで、搾り師の醤油搾りというのがあった。そのときは、文字通り、醤油を搾った際のもの。で、搾り終わって、一升瓶に詰めると、樽が空く。そして、4月、次の、つまり今年の仕込みが終わった。
で、3月の搾りの際、搾り師の天野次郎さんは、搾る前のモロミを味見した後、アドバイスしてくれたことがあった。
「夏場の温度が少し足りなかったかも知れないですね」
2014年4月25日のエントリ、手造り醤油でも触れたが、この萩原忠重さんが考案した醤油仕込み方法の最大の特徴はここにある。通常の醤油仕込みは、夏場の温度上昇を抑えるため、冷暗所で行われるが、私たちが行っている製法では、夏場は、直射日光に当てる。いや、直射日光に当てるだけでなく、温室内などに置いて、さらに温度を上げるのだ。
またもう一点。搾り師の方々は、冬場、軽トラに搾り器を積んで、いろんなところへ搾りに行く。だから、それらいろんな状況で仕込まれたいろんなモロミを見てきている経験が蓄積されている。だからこそ、こうしてアドバイスしてもらえるのだ。今年の搾り後、私は天野さんに「いろんなモロミを見ると勉強になりますよ」誘われて、他のモロミの搾りを見学に行ったことがある。夏場は陽に当てるなど、製法の概要は共通だが、あまりにも違うモロミで驚いた。つまり、搾り師は、搾るだけでなく、仕込みのアドバイザーでもあるのだ。
去年まで、私たちは、南向きの軒下に仕込み樽を置いた。雨もよけなければならないので、軒下だった訳だが、一番陽が高い頃だと(つまりちょうど今頃から)、しばらくの間その軒下は軒の影になってしまっていた。その軒下を貸してくれている友人もそれに気がついていた。さらに、閉じた空間ではなかったので、天野さんの「温度が少し足りないのでは?」にはとても説得力があった。そして、その言葉が耳にこびりついた。でまぁ、梅雨前でかつ「これから暑くなるぞー」という5月末についに冒頭の写真の醤油小屋を作る運びとなった。
こうして、偉そうに私は「醤油小屋」だの「夏場の温度」だのと書いてるが、場所は、その友人宅だし、原材料の手配や仕込みの段取り、普段の攪拌もほとんどはその友人にお願いしている。なので、「こんなときぐらいは‥‥」ということで、5月末に私も参加して、その小屋(温室)作りに携わることになった。幸い、その友人は非常に器用な人で、役目を終えた古い枕木を主材料にして、でっかい自分の家までも作っちゃった人。この醤油小屋も私の猫のような手が加わっただけで、すんなりと出来上がったのだった。
冒頭の写真は、私がその友人宅を後にした際のもの。あとは横壁のビニールシートを貼って完成というところまでこぎ着けた。そして、下の写真が、後日の完成後。中に、モロミの樽が鎮座されてる。
私はベトナムで「カンホアの塩」という塩を作っているが、それにも少し似ているところは、自分が望むものを作るためには、それを作る設備を作らねばならないこと。私の場合は、「カンホアの塩」を作るための塩田などある訳だが、それを作っていると、塩を作っているんだが、塩田を作っているんだか分からなくなるときがある。この醤油もそれに似て、醤油を作っているのだが、せっせと小屋を作らなければならない。
余談だが、「カンホアの塩」に【石窯 焼き塩】といういわゆる焼き塩があるが、その石窯は、この醤油を仕込んでいる「友人宅」のその友人本人に、設計から施工、そして焚き方指導までお願いしているのだった。彼の名は、黒澤有一。陶芸家でもある。上の写真の醤油小屋の裏手には、彼自作の登り窯がある。(クイズ:チラッと煙突が見えているけど、どれかな?)
来年春先の搾りには、出来たら、今年来てくれた搾り師・天野次郎さんにまた来てもらいたいなー。今から、「今年のはどお?」ときいてみるのが楽しみだ。
で、3月の搾りの際、搾り師の天野次郎さんは、搾る前のモロミを味見した後、アドバイスしてくれたことがあった。
「夏場の温度が少し足りなかったかも知れないですね」
2014年4月25日のエントリ、手造り醤油でも触れたが、この萩原忠重さんが考案した醤油仕込み方法の最大の特徴はここにある。通常の醤油仕込みは、夏場の温度上昇を抑えるため、冷暗所で行われるが、私たちが行っている製法では、夏場は、直射日光に当てる。いや、直射日光に当てるだけでなく、温室内などに置いて、さらに温度を上げるのだ。
またもう一点。搾り師の方々は、冬場、軽トラに搾り器を積んで、いろんなところへ搾りに行く。だから、それらいろんな状況で仕込まれたいろんなモロミを見てきている経験が蓄積されている。だからこそ、こうしてアドバイスしてもらえるのだ。今年の搾り後、私は天野さんに「いろんなモロミを見ると勉強になりますよ」誘われて、他のモロミの搾りを見学に行ったことがある。夏場は陽に当てるなど、製法の概要は共通だが、あまりにも違うモロミで驚いた。つまり、搾り師は、搾るだけでなく、仕込みのアドバイザーでもあるのだ。
去年まで、私たちは、南向きの軒下に仕込み樽を置いた。雨もよけなければならないので、軒下だった訳だが、一番陽が高い頃だと(つまりちょうど今頃から)、しばらくの間その軒下は軒の影になってしまっていた。その軒下を貸してくれている友人もそれに気がついていた。さらに、閉じた空間ではなかったので、天野さんの「温度が少し足りないのでは?」にはとても説得力があった。そして、その言葉が耳にこびりついた。でまぁ、梅雨前でかつ「これから暑くなるぞー」という5月末についに冒頭の写真の醤油小屋を作る運びとなった。
こうして、偉そうに私は「醤油小屋」だの「夏場の温度」だのと書いてるが、場所は、その友人宅だし、原材料の手配や仕込みの段取り、普段の攪拌もほとんどはその友人にお願いしている。なので、「こんなときぐらいは‥‥」ということで、5月末に私も参加して、その小屋(温室)作りに携わることになった。幸い、その友人は非常に器用な人で、役目を終えた古い枕木を主材料にして、でっかい自分の家までも作っちゃった人。この醤油小屋も私の猫のような手が加わっただけで、すんなりと出来上がったのだった。
冒頭の写真は、私がその友人宅を後にした際のもの。あとは横壁のビニールシートを貼って完成というところまでこぎ着けた。そして、下の写真が、後日の完成後。中に、モロミの樽が鎮座されてる。
私はベトナムで「カンホアの塩」という塩を作っているが、それにも少し似ているところは、自分が望むものを作るためには、それを作る設備を作らねばならないこと。私の場合は、「カンホアの塩」を作るための塩田などある訳だが、それを作っていると、塩を作っているんだが、塩田を作っているんだか分からなくなるときがある。この醤油もそれに似て、醤油を作っているのだが、せっせと小屋を作らなければならない。
余談だが、「カンホアの塩」に【石窯 焼き塩】といういわゆる焼き塩があるが、その石窯は、この醤油を仕込んでいる「友人宅」のその友人本人に、設計から施工、そして焚き方指導までお願いしているのだった。彼の名は、黒澤有一。陶芸家でもある。上の写真の醤油小屋の裏手には、彼自作の登り窯がある。(クイズ:チラッと煙突が見えているけど、どれかな?)
来年春先の搾りには、出来たら、今年来てくれた搾り師・天野次郎さんにまた来てもらいたいなー。今から、「今年のはどお?」ときいてみるのが楽しみだ。
2015年6月15日月曜日
ネキリムシと家庭菜園
すると、その2〜3日後から、毎日のように、ゴーヤ、バジル、朝顔、フウセンカズラの苗が根元で茎が切られていた。冒頭の写真は、バジルの根元の茎が切られた様子。これが次から次へと毎日続き、植えた苗はどんどん減っていった。実は、去年も同じようなことがあったので、種からのものはポットで必要量の2倍ほどを育てておいた。一週間ほど毎日根元で切られると、週末それらを補うように、少しずつ植え足した。それでも、毎日切られる茎また茎。
去年は、そんなことしているうちに、何とか苗は育っていったが、今年はちょっとレベルが違う。だんだん気分も滅入ってきた。いったい誰の仕業だ。虫か、鳥か、はたまたのら猫か? まずは、薄めた木酢液なんぞをスプレーでシュッシュを何日か続けてみたものの効果なし。
そして、一昨日の土曜日の朝、ターニングポイントは訪れた。それなりに育って太くなっていたトマトの茎までもが、何と、無残にかじられていたのだった。これまでは、バジルやゴーヤなど概ね細い茎が切られていたので、虫か、鳥か、猫に「切られた」って感じだったのだが、これは明らかに「かじられていた」。それが下の写真。根を土から抜いて、葉っぱを落としてしまったが、3箇所かじられおり、一番下のところで「かじり切られている」。
このかじられた痕を見て、「このままいくと全滅だ」と感じた。いつもは「趣味なんだから」と、ゆるーい気分でやって何となくうまくいってた家庭菜園も、こうなると真剣になって、ネットで調べる気になった。
どうやらその犯人は、通称ネキリムシ。「根を切る」虫なので、ネキリムシなのだが、我が家のこのケースは、いくつかいるネキリムシの中でも、カブラヤガの幼虫らしい。ネットで調べたのは、昨晩、とっぷりと日の暮れた8時ぐらいだったが、日中は地中2〜3センチのところに潜み、夜行性とのことだったので、早速暗い中、懐中電灯を持って畑を見に行った。
小さな園芸用のスコップで土をちょいちょい掘ってると、いたー。出てきた出てきた、ネットで見たのと同じ虫。2匹捕獲。大きいので4センチぐらい。こりゃ木酢液なんかじゃダメなわけだ。一見ただのイモムシなんだけど、こいつらがこれまで1ヶ月ほど毎日のように、苗をかじっていたかと思うと、「ただのイモムシ」でなく、「害虫」に見えるから不思議だ。じぃーっと観察。色は土色、しっかり保護色だ。そして、翌朝、再び畑を見に行くと、またバジルが2本切られていた。そして、再び土を掘ってさらに2匹捕獲。それが下の写真。
無論、このカブラヤガの幼虫も、必死に生きているのだからと思うと、無碍に殺せない。‥‥と思いながらも、この4匹の幼虫を、どうしようかと2年生の息子と相談すると、「夕方に、近くの疎水にいる鯉にくれてやろう」と話しがまとまった。
サムライ菊の助「畑日記」を読んでると、最近のエントリでは、「アナグマに食われてジャガイモ全滅」とか、「キャベツはモンシロチョウの幼虫に食べさせる(一個は残してください)」などあるが、頭が下がる。しかし、本当はそれを「頭が下がる」と特別視せずに済む世の中になって欲しい。「アナグマに食われたぁ〜? そんなのよくある話しよ」なんてね。何しろ日本は世界で一番農薬を使う国だと言うことを忘れてはいけない。
話しをネキリムシに戻すが、来年は、定植前に、土を注意深くふるいにかけよう。家庭菜園とはいえ、自分ちの作物が深刻な害にあうと、つい「ここに農薬を使う理由があるな」と思ってしまう。ここで心を一度ニュートラルにしてから、今夕、鯉のいる疎水にカブラヤガの幼虫を投げに行こうと思う。2年生の息子は何を感じるだろうか。
最後に、このカブラヤガの幼虫について、とても分かりやすいサイトがあった。文末は、「まずは日頃畑に雑草を繁茂させないこと。繁茂したら、土中のネキリムシが絶食死するよう、除草剤を撒く」なのだが、ネキリムシについて、とてもよく分かったので、ご参考まで。
●カブラヤガ・幼虫はネキリムシの真犯人
http://www.foocom.net/column/pest/3668/
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