2010年11月17日水曜日
南イタリアのアグリツーリズモ
先週一週間、イタリア南部、プーリア州とバジリカータ州に行ってきた。ブーツの形のイタリアの、カカトからクルブシの辺りだ。海沿いのプーリア州は延々とオリーブの畑が続き、内陸のバジリカータ州は、緩やかな稜線に畑と森が続く。上の写真は、プーリア州オストゥーニの町から撮ったもの。遠目に見える海はアドリア海。そこまで延々と続く木々はすべてオリーブだ。
今回の旅行は、「カンホアの塩」のサイトにもレシピを提供してもらっているカノウユミコさんが主役。「カノウユミコ先生と行くイタリアの食卓」というタイトルの総勢十数名のグループツアー旅行だった。このツアーを企画した旅行会社の方の添乗もあった。
私は、カミさんと子供2人とともに家族での参加。子連れ旅行という面はさて置き、私にとって、生まれて初めてのグループツアー旅行。通常のツアー旅行としては、ゆったりした日程だったらしいが、私にとっては駆け足だった。しかし、チャーターされたバスに乗るだけで次々といろんな場所に行け、レストランでも何も悩まずともいろんなおいしいものが食べられた。これはツアーならではです。ただその分、仲良くなるのは、ツアーグループのメンバーだけで、現地の人で仲良くなった人はひとりもいなかった。行く前から分かっちゃいたが、その点はちょっと消化不良。初めてだったからそう思うだけで、ツアー旅行とはそういうものですね。
さて、この旅行、言わずもがな「食」がテーマ。そして訪れた先には、アグリツーリズモと呼ばれるちょっと特別なところ2箇所が含まれた。アグリツーリズモという言葉は、アグリ(農)とツーリズモ(観光)が合わさった造語。農家に宿泊施設などが併設していて、農家に泊まる民宿と言ったらいいだろうか。ただ民宿とは言え、立ち寄った2箇所のアグリツーリズモはどちらもプールまであるとても立派な施設だった。このアグリツーリズモは基本的には農家だから、通常交通の便は悪く、イタリア人でもなかなか行き着けないことがあるらしい。その点、このツアー旅行では、バスに乗ってるだけで着くのだから、超楽チン。これは言っておかねばなるまい。
とりあえず、以下がその2つのアグリツーリズモ。
Masseria Salinola(プーリア州オストゥーニ郊外)
La Foresteria di San Leo(バジリカータ州トリヴィーニョ村の郊外)
アグリツーリズモはイタリアが発祥とされていて、もう100年とかの歴史がある。それがイタリアには1万を超える数があると言うから驚く。「1万って何かの間違えだろ?」と思って、帰国後ネットで調べてみたら、「シエナ県だけで4百軒近い数がある」という記述があった。シエナ県とは、トスカーナ州の10ある県のひとつに過ぎない。そしてイタリアには20の州があるから、全土で1万というのも、計算が合う。改めて驚く。
また、イタリア政府公認のアグリツーリズモには国の後押しがあるらしい。おそらく助成金が出るのだろう。ただし、政府のお墨付きになるには、「観光の収入は、農業の収入を上回ってはいけない」という決まりがあると言う。(上回るとただのリゾートホテルになっちゃうからね) 詳しいことは分からないが言えるのは、少なくともイタリア政府はこうして昔から農業振興のための政策を図っている。それは農業政策というだけでなく、文化的にもスゴイことだと思う。農業は黙々と農作物を作るイメージだけど、観光はまるっきりサービス業。それこそ畑が違う。でも、この異質な2つものの組み合わせが、大げさに言えば、新しい文化なんだと思う。
左の写真は、プーリア州オストゥーニ郊外にある、Masseria Salinolaというアグリツーリズモの主人であるお父さんとその息子。とても愛想のいい息子さんは、私たちの到着後すぐに英語で親しげに話しかけてくれた。そして、オリーブ畑への道すがら車の中で5分ぐらい話ができた。「このイタリア旅行は1週間の日程であちこちまわる。ここの後は、トリヴィーニョに行くんだ。慌ただしくて悪いね。君は1ヶ月とか休暇をとるんでしょ?」ときいたら、「何言ってんだ。オレは一年中休暇なんてないよ。今はオリーブの収穫に忙しいし、来月からは・・・、1〜2月は・・・」と一年間のスケジュールを説明し、1週間の休暇も取れずに働いているんだと真顔で言う。なんかヨーロッパの人って長いバカンスってイメージあるけど、もちろんみんながバカンスできる訳じゃない。当たり前だけどね。車を降りると、「そのへんあちこち勝手に歩いててよ」と言い残し、来客のピストン移動に忙しい。
一方、お父さんはテーブルのセッティングなど、私たちのオリーブ手詰み体験の準備をしてくれる。英語を話さないということもあろうが、終始黙々と作業をしている。この二人のコントラストが、なんかまばゆかったなー。この写真からも何となくその二人の雰囲気が伝わるように思う。そしてこの二人を見守るやさしそうなお母さんは、このとき、食事の準備の真っ最中だ。農業だけをやっている農家ではこういうことはなかろう。アグリツーリズモは、ときに家族の風通しのよさにも寄与しているように感じた。「頑張れ息子!」って感じです。
さてさて、このツアー旅行は「食」がテーマでした。
おいしいものいっぱい食べ過ぎて、何を書いていいやら・・・・・
それはこの次トライしまーす。
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