2018年10月12日金曜日

タンドールへの道・その1


私が唯一録画予約して見ているテレビ番組が、タモリ倶楽部なのだが、先週の10月5日放送分を見ていたら、インド料理店でタンドリーチキンの真っ赤なソースに漬けた秋刀魚、レンコン、厚揚げなど和食の食材をタンドール(窯)で焼いて試食するという企画をやっていた。

私にとってタンドールとは、結構贅沢な調理器具だ。30年も前のことだが、インドを旅行中、タンドールで焼かれたナンを食べることはほとんどなかった。一年以上滞在した中で、3回あったかな。インドの主食は、大ざっぱに、北部が小麦で南部が米。つまり、インドでナンは主に北部のパンなのだが、大げさなタンドールがないと焼けないナンは、北インドとは言え、そんじょそこらにあるもんじゃない。また、南に比べ北インドの人たちは、あまり外食の習慣がない。家で食べるか、外で食べるときもお弁当を持って出ることが多い。私も、北インドを旅行中は、自炊が基本だった。

だから、大都市は別にして、北部にレストランは決して多いとは言えず、さらにその多くないレストランでタンドールを持っているレストランは一部。したがって、ナンを食べる機会も少なかった。(高価なレストランのことはよく知らない。念のため) 多くの北インドの人々はチャパティを主食としている。チャパティは、タンドールといった大がかりな調理器具は不要。日々各家庭で食べられている。私も自炊時によく食べた。

ただ、ナンではなくチャパティが主食となっているのは、タンドールの問題だけではないと思う。ちなみに、チャパティは、アタと呼ばれる細かく挽かれた中力の全粒粉、ナンは、マイダ(とかマエダ)と呼ばれるフスマを除いた白い小麦粉が使われる。日本で全粒粉はやや特別な感があるが、チャパティとナンを比べると、スパイスが効いた料理と一緒に日常的に食べるには、私はチャパティの方が好みだ。全粒粉のチャパティの味わいは奥深く、飽きない。ナンはたまに食べるにはいいのだけど、日常的にとなると、何となく物足りなく感じる。おそらく、多くの北インドの人たちも同じように感じていて、結果として、日常的にはチャパティということなんだと想像している。ちなみに、インドの人たちが、マイダ(白い小麦粉)をチャパティのように、鉄板で焼いたり、炭であぶったりして食べるところを私は見たことがない。

今、日本にたくさんあるインド料理店には、ほとんどと言っていいほど、タンドールが据え付けてあるが、昔と違って今ではインドでもそうなっているのだろうか、私には分からない。ただ、私は今でもタンドールと聞くと、贅沢というか敷居が高いと反射的に感じてしまう。

そんな私は、そのタモリ倶楽部の録画をカミさんと昼前に見た。すると彼女は「なんだか、インド料理が食べたくなっちゃった」とのたもうた。今やインド料理店はうちの近所のあちこちにあるものの、どーも、「おいしい」と素直に言える店がなかなかない。ネットでまだ行ったことのない店を探していたら、パキスタン料理の店が目に留まった。私にとって、パキスタン料理と言えば、まずはビリヤーニである。「よし、ビリヤーニ食べに行こ」と早速なり、向かった。東京・立川、ムガルキッチン。

そこで食べたビリヤーニが冒頭の写真。(食べかけ&ピンボケでごめんなさい) 祝日の月曜日だった。いざ行ってみたら、(チキン)ビリヤーニは毎週月曜日のみとのことで、ラッキーにもビリヤーニにありつけた。そして、おいしかった。ビリヤーニは、やはりこのバスマティライスでないと。スパイスの配合・味付けに感じるシェフのデリカシー。付け合わせのライタ(ヨーグルトとスパイス・塩が効いたサラダ)もスパイスのレシピをききたくなるほどおいしく、食後のチャイのスパイスはカルダモンのみ。私の好みだ。それにしても、多くのインド料理店でついてくる、市販のフレンチドレッシングがかかってるキャベツの千切りサラダは頂けない。インド界隈ではこんなの絶対にないのに、何故日本にあるインド料理店の多くがこれを付け合わせにしているのだろう。あまりに安易なんじゃないか。インドなら、アッチャール(レモンや青いマンゴの辛い漬物)か、紫タマネギのスライスと青唐辛子2〜3本といったところだが、日本じゃ難しいということか。

あと、ボヤキついでに加えると、日本にある多くのインド料理店のナンは甘過ぎ。砂糖多過ぎ。インドではあんなに砂糖入れない。砂糖を多くした方が発酵しやすいというせいもあるのだろうか。このムガルキッチンでは、ビリヤーニを食べたので、ナンはどんな味だったか不明なのだが、何しろあの多くの甘過ぎナンは頂けない。

さてさて、ボヤキはこのぐらいにして、タンドール。この店にも当たり前のように据え付けてあった。

食後のチャイを頂いた後、客は私たち二人だけだったので、パキスタン人のシェフに、タンドールを見せてくれないか頼んだ。快諾を得て、厨房に入らせてもらい、一通り使い方・掃除の仕方などを教えてもらった。それにしても、何とシンプルな窯だろう。間近に見てみて、しみじみそう思った。一口に言って、熱が上に向かう性質をそのまま使った素直な構造だ。そのせいで、目の前のタンドールは思っていたほど、燃料(炭)を使いそうにないと感じた。敷居が高いと思っていたタンドールがグッと身近に迫って来た。

先述のとおり、インドでは、一般の家庭にタンドールはまずない。あってもレストランだ。レストランには、次から次へと注文が入るから、無論大きなタンドールがある。しかしだ。こんな大きなものじゃなくて、家庭用に小さく、さらに言えば、持ち運びも出来るぐらいのタンドールは作れないものか。大きい方が温度は安定するのは当たり前。でも小さいなりに・・・・。そんなタンドールを私はインドで見たこともなかったし考えたこともなかった。が、初めてそう思った。

ところで、数年前、ピザ窯を庭に作ったことがあった。そのエントリは下記。

ピザ窯、完成(2011年12月27日)

このピザ窯の設計で一番考えたのは、上へ向かう熱気をいかに下に引っ張るかだった。最近増えたナポリ・ピザの店のピザ窯は結構現代的で、電動の換気扇が付いているのを見たことがある。そうして窯内の熱が上部ばかりに溜まらないようにして窯の床にあるピザを熱していた。ピザ(パンも同様)は、どうしても窯の床に置かねばならない。熱は上方に向かうのだから、それを下へ引っ張るなどの工夫が必要になる。しかし、タンドールの場合、ナンは窯の上部に貼り付けるし、チキンなどは長い鉄串の中半に刺して窯の中空で焼く。窯の底部にある炭の熱が上方へ向かい熱する。タンドールでピザは焼けないのであるが、タンドールの単純さがだんだん愛おしくなってきた。

今は、そのピザ窯を作った借家から引っ越してしまったため、そのピザ窯のレンガはバラして今の借家の庭の敷石になっている。今の家は建て込んで建っているため、焚き始めに煙がモクモク出るピザ窯を置けなかった。でも、小さなタンドールならそんなに煙も出ないし、さらにモバイルならば、どっかへ持って行っても使える。

タモリ倶楽部から始まったタンドールへの道。
まずは、ネットでいろいろ見始めた。
そして、適当な材料を見繕いに、ホームセンターをうろつき始めた。
出来そうな気がしてきた。(このぐらいのときが一番楽しい)

ここからは、準備や作業を進めながら、実況中継的にエントリーを書こうと思う。

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