2009年8月21日金曜日

梅干しが教えてくれるもの


やっと昨日、梅干しの土用干しが終わった。私は東京在住。今年の「梅雨明け宣言」はたしか7月末頃あったが、それは名ばかりだった。8月になってもどんよりとした曇り空の日が続き、ときには熱帯のスコールのような雨も降った。いつになったら「土用干し出来るのだろう」と心配し始めたお盆も過ぎた今週、やっと真夏らしくお天道様がギラギラした。このときとばかりに3日間土用干し。今、一安心したところです。

梅干しを仕込む人は多くはないと思うので、ざっとその工程を書いてみます。

  1. 梅を塩漬けにする・・・梅から出た汁(梅酢)が上がってくる

  2. 塩もみした赤シソを加える・・・汁と梅が赤く染まる

  3. 土用干しする・・・直射日光に当てて干す

  4. 取り込んで1年ぐらい寝かせる


梅が熟すのが6月中旬から末、赤ジソの収穫時が7月初旬、梅雨が明けるのが7月下旬。この自然のリズムをなぞるように次々と工程を踏んでいき、梅干しは出来上がる。自然と共に暮らしていた昔の人の知恵。すばらしいですね。

毎年梅干しを作り始めて10年ぐらいたった。塩は手前塩のカンホアの塩で同じだが、毎年違う梅、シソを使い、天気も毎年違う。「梅干し作り」というと、とてもシンプルに聞こえるかも知れないが、実は毎年いろいろ違い、いろいろなことがある。

今年の特徴は、現実的な梅雨明けが遅かったこと。土用干しするのが、いつもより3週間ぐらい遅くなった。なかなか土用干し出来なかったため、梅漬けの時間が長くなり、カビが生えた。「なかなか梅雨明けしない」ということは、同時にその間「高温多湿の日々を過ごす」ということ。よってカビが生えやすくなる。カビは梅から出た汁(梅酢)に浮き草ようにポツポツ生える。この10年で、カビが生えたことは1〜2度あったが、カビはほんのちょっとから始まるから、軽症なうちにスプーンですくえば問題ない。しかし、今年はお盆も過ぎたせいで、チェックを怠った。おかげで、カビは軽症とは言えなくなり、初めて梅酢を加熱した。その詳細は、新たに「正統派・梅干しレシピ」に載せた。梅酢の加熱は何となく抵抗があったが、思いの外うまくいった。つまりおいしい梅干しになりそうだ。

思いの外うまくいったのは、同時進行で梅干しを仕込んでたうちのカミさんの助けがあったからだった。助けと言っても、作業を手伝ったくれた訳ではない。私に比べ、彼女は大ざっぱな性格なので、例えば、梅を仕込む前に容器などを熱湯消毒するが、容器はしても重石はしてなかったりする。「そんなんじゃ意味ねぇ〜じゃん」と言うと、「いいの、いいの、だいたい(消毒)したから」と言う。だから、私よりもずっと早くにカビが生え始める。いつもだと、土用干しまで私のはカビが生えず、生えても軽症で事なきに終わる。

でも、今年は違った。7月中旬に彼女の梅酢は早速カビ始めた。「それ言ったことか」と全くカビの生えてない自分の梅を誇らしげに言う私。しかし、彼女は涼しい顔をしてその翌日ぐらいに加熱消毒した。そして、梅雨の明けない日が続き、8月も1週間過ぎると私の梅もちょっとずつカビ始めた。最初は「軽症、軽症」とちっちゃなカビを取ってたが、お盆がらみでカビは増殖。立場は一気に逆転し、彼女のは全くカビなしなのに、私のはカビカビになってしまった。彼女のは、およそ1ヶ月も前の加熱にもかかわらず、カビは再発生していない。そこで彼女にご指南頂き、私は初めて梅酢の加熱を経験し、うまくいった。梅酢の加熱はひとつの非常手段なので、出来たらしたくないが、加熱しても思ったより梅干しの仕上がりに影響しないことが分かった。

カビがちょっと多めになったと思ったら、即思い切って加熱してしまった方がいい。そして、加熱すれば1ヶ月はカビが生えない。もう土用干しを終えた人も多いだろうから、来年の話になるけど、参考にしてください。そして、なかなかこの世に「正解」というものがないことも。

2009年8月10日月曜日

真夏の夜の酒


暑い。
こう暑い日が続くと、胃腸も疲れ気味になるのが分かる。ビールが進む、ということもあるが、どうもそれだけでは心身共に落ち着かない。そんな真夏の夜の、私の密かな楽しい時間は、就寝前の15分にある。家族が寝静まった、だいたい夜10時前後。洗濯機のタイマーを翌朝にセットし、歯も磨いた後だ。

築40年は楽に越えてる愛すべき我が文化住宅的借家には、自作の月見台がある。畳2枚弱の、板張りの小さなスペースにちゃぶ台を置き、60ワットの電球にスイッチを入れる。それまで意識の向かなかった虫の音が響き始め、遠音に電車の音がときどき聞こえる。その音源の多摩川にかかる鉄橋は2kmほど離れているが、この時間になると風向き次第で聞こえてくる。まさに静寂を演出する音だ。これに少しの風がそよぎ、風鈴がちょっと音を立ててくれば「とてもいい夜」になる。隣の家の夫婦喧嘩もご愛嬌、と思っていたら・・・おっと〜、蚊取り線香つけるの忘れてた。

さて、ここでの主役は、酒だ。肴は雰囲気だけでいい。冬場はここで酒を飲むことはないが、春秋は焼酎・ウィスキー・ブランデーなど蒸留酒を主にストレートで味わう。コテっと寝る前の一杯だ。しかし、この2〜3年の夏場は胃腸の疲れを考えて、日本酒を飲むことが多い。酒は秋から春までのお燗もいいが、こんな真夏の夜は、涼しめのときで常温、暑いときはロックにしたり(上の写真)、疲れているときはさらにソーダで割ったりする。

私は、普段から酒は純米酒しか飲まないが、特にこうして氷やソーダで薄まるときは味のシッカリした純米酒がいい。いや、そうでないとダメだ。上品な端麗タイプやいわゆる「きれいなお酒」は、たとえ純米酒であってもこの飲み方にはそぐわない。純米吟醸は芳しいが、食中はかえってただの純米酒かせいぜい特別純米止まりの方が、食べ物とのバランスがよく、食が進む。だから、普段純米吟醸はあまり買い置きしない。したがって、こうして一人静かに酒を楽しむときも特別純米止まりになる。純米酒だって香りがない訳じゃない。こういうときはかえってその微妙な香りがいとおしく思えたりもするものだ。

これを書いてて、「たまにはこの時間のために、純米吟醸を1本買ってみるか」と思い立った。あまり買わないので、酒屋さんで迷いそうだ。そんなこと思ってたら長い針が下を向いている。おやすみなさーい。

2009年8月5日水曜日

夜の訪問者


夕べのこと、網戸も開けてた我が家にカブトムシ(メス)が飛んできた。場所は、東京の西の方、昭島市。最初、カミさんが「何か飛んできた」とシャウトした。辺りを探しても何も見つからず、そのときは「?」。それから30分ぐらいした後、私のTシャツの中で何かがゴソゴソ動いているのに気がつき、シャツをまくってみると、あ〜らカブトムシさん。私は東京生まれの東京育ちだから、こんな経験は多くない。子供と一緒に喜びを分かち合った。意外とツルツルしてる背中をなでてみたり、お顔をよーく拝見してみたり、腕にはわせてみたり。最後は網戸にとまってもらって記念撮影。子供と「もういいな」と最終確認した後、外に投げたら飛んでいった。

・・・とここまでは、よくある話だと思う。

実は、このカブトムシさんの1時間ほど前、別の訪問者がいた。カミさんが「テンだ! イタチだ!」と庭を指さし、やはりシャウトした。スーパーマンでも来たかと思ったが、かなり慌てた声にあおられ、私も慌てて庭をみた。庭には部屋から4mぐらい離れたところに、昔からよくある高さ1.5mほどのコンクリートの塀がある。その塀の上を3匹繋がって、何とハクビシンが歩いていた。「小走り」の方が近いかな。外は真っ暗で、部屋の電球にうっすらと照らされたその鼻筋にハッキリと白い線が見えた。それは薄ら明かりに咲くドクダミの花のように真っ白に見えた。それを見た私は、瞬間的にハクビシンだと思った。それまで特にハクビシンに興味があった訳では全くない。ただ、発作的にハクビシンだと思ったから不思議だ。

その白い線の残像が脳裏に残っているうち、早速ネットで調べたら、紛れもなくハクビシンだった。漢字だと「白鼻芯」。ん〜、そのものだ。wikipediaには、「人家近くに生息して屋根裏でも繁殖する」とあった。何だそんなものか。また「植物食中心の雑食性で、果実、種子、小動物、鳥、鳥の卵などをたべる。なかでも果実を好む」。3匹は20〜30m先にある梨畑へと続く塀の上を立ち去って行った。そろそろ梨が実をつけ始める頃かぁ。

「いそうでいない」というより「いなそうでいる」夜の訪問者たち。残念ながら、夕べの最初の訪問者の写真を撮る余裕はなかった。