2010年3月10日水曜日

牡丹雪の夜


3月だというのに、昨日、東京は雪が降った。重く湿気ったいわゆる「牡丹雪」だった。やや陽も長く感じるようになったこの頃だが、とっぷりと日が暮れた後、2人の子供と共に3人で、牡丹雪が降りしきる中、停まった車の中で1時間ほど過ごさなければならない事態におちいってしまった。

運の悪いことは、ときに重なるものだ。

夕方6時半過ぎ、仕事帰りに私は保育園のお迎えに行った。昨日は、2人が通う保育園の園内の様子の写真の展示があり、それを見ていたため、保育園での滞在時間が30分ほどになった。この展示は年に4回だけのもの。さて、保育時間は7時までなので、出るときは追い出されるように出た。・・・・・たったこれだけの些細なことだが、これがその後の決して些細とは言えない展開の序章だった。

お迎えには車を使っているが、駐車は近くの公園の公営駐車場。30分までは無料だが、過ぎると100円かかる。もちろん無人で、機械がすべて処理してくれる。この日は、写真を見たせいで30分を超えた。「きょうは100円かかるな」と思って、車に乗り財布を見ると、「小銭がない」。札も5千円と1万円のみ。千円札もない。駐車場出口の自動精算機では、硬貨もしくは千円札でしか払えないのだ。・・・・・このへんでこのドラマの展開が始まった。

しばし考えて、子供2人を車に残して、牡丹雪の中、保育園へ走った。2歳と5歳の子供をエンジンをかけ放しの車に残したままで大丈夫かなと、一抹の不安を抱えながらも、保育園に誰もいなくなる時間だ。一刻を争うため、ひとりで走った。インターホンを何度も押すが、何の反応もない。車へ戻りがてら、ソフトドリンクの自動販売機を2つチェックしたが、やはり5千円・1万円札は使えない。

近くにお店はないのか。歩いて10分ほどのところにコンビニとガソリンスタンドがある。ここはそんなに田舎ではないが、大きな公園の近くなため、夜営業の店舗が遠いのだ。片道10分、往復20分、牡丹雪の中、小さな子供2人を連れて歩くのはしんどい。

とりあえず、車を駐車場内のトイレの前に停め、トイレ・タイム。下の子は、今、トイレ・トレーニング中だ。「きょうはかあちゃん、あと20分ぐらいしたら、帰り道にこのへんを通るから、電話をくれるよう携帯にメール入れておこう」そう言って、車の車内灯を全部つけた。外の闇が増した。真っ暗な中しんしんと降る牡丹雪。誰もいない公園内の駐車場。何とも言えぬ静寂感に包まれた。その中で薄明るい車内灯の下、図らずも子供たちとのお話しの時間になった。ふと、山深い小さな家の囲炉裏ばたで話をしている気持ちになった。

上の5歳の娘が、「ねえぇー、恐竜って最初は恐竜だったの?」ときいてきた。「恐竜は卵から生まれるけど、恐竜が卵を産むでしょ。じゃあ、最初の恐竜は何だったの?」と続ける。「卵が先か、鶏が先か?」の話だ。「何だったんだろうなぁ〜」と返すと、「きっと恐竜の前は、王子様だったんじゃないの・・・・、不思議だね〜」。こういう訳の分からぬ子供の理屈はいいなぁと、やや心がほぐれたところで時計を見ると、もうカミさんから電話が来てもいい時間をずいぶん過ぎている。「おかしいねぇ〜」。子供たちはアクビを始めた。「横になって寝てもいいよ。車の中は暖かくてよかったね」と話していると、眠気を裂くように携帯が鳴った。

彼女は帰宅して誰もいないのに驚いて電話したらしい。この日は、たまたま受け取りたくない電話がかかってきたとかで、携帯をOFFにしていたらしい。だから、送ったメールも見ていない。それから15分ほどすると、100円玉を数個持って、傘を差したカミさんがやってきてくれた。駐車時間は1時間を超えていたが、表示された料金は「100円」だった。100円玉を入れると、ゲートは何事もなかったかのように、いつものように開いた。

重なるときは重なるものだ。

ポジティブにとれば、あの囲炉裏ばたのお話し時間は悪いものではなかった。が、これからは、車に100円玉を3つぐらいは常備しておくことに決めた。

2 件のコメント:

サムライ菊の助 さんのコメント...

よかったよかった^^読み終わって、ホッと胸をなでおろしました^^自動販売機の底のすきまに、100円玉が落ちていることを覚えておきましょう^^
では!~~ε=ε=ε=ε=┏( 菊・_・)┛

下条剛史 さんのコメント...

> サムライ菊の助 さん

そうでした〜。うかつにも、自販機の下はチェックしなかったなぁ。あと、おつりの返却口もあったなぁ。何しろ余裕がなくて。