2010年4月16日金曜日

塩粕


きょうはちょっと珍しい食材のこと。その名も「塩粕」。パッケージには「漬物用酒粕」となっているが、用途は、何も「漬物用」と限らない方がおもしろいので、通称「塩粕」と呼びます。漬け床とも言えるし、調味料とも言える。酒粕に塩をあわせ、2年寝かせて熟成させたものだ。奈良にある久保本家酒造という酒蔵さんが作っていて、有り難くも送って頂いた。「生もとのどぶ」「睡龍」の酒蔵と言えば「あぁ〜」という人もいるかも知れない。もちろん純米酒。生もとの酒蔵さんだ。だから、生もとの酒粕。こんなのがあるなんて、聞いたこともなかったので、私なりにいろいろ試してみた。

まずは、パッケージのウラの説明書きはこんな感じ。

昔ながらの酒造り「生もと純米酒」の酒粕を
蔵で塩と一緒に熟成させた漬物用です。
蔵人の賄い料理にも大活躍している栄養豊かな
酒粕をどうぞお料理にもご利用くださいませ。

一見、粕漬けの床みたいだが、違う。一般の粕漬けは酒粕にみりん(ときには砂糖)を合わせるが、原材料は「米、米麹、食塩」、つまり酒粕と塩だけ。これに大豆が加わると味噌のようだが、麹の糖分はお酒になってるから甘くはない。ただし酒粕に塩を合わせただけの味じゃぁ〜ない。2年熟成され、色は味噌のようなアメ色。酒粕っぽさは穏やかになり、ほのかなうま味もあるものになっている。何とも表現が難しい初めての味なのです。

まずは、豆腐の味噌漬け風に、絞った豆腐を「塩粕」に漬けてみる。・・・・正直、やや物足りない。たぶん味噌漬けに慣れてるせいだと思う。豆腐の味噌漬けに使う味噌は、糀が多めの味噌が好き。糀の甘さやうま味がしっかりあるからだ。それに比べ、「塩粕」はその甘さ・うま味が少ない分サッパリしている。

次に、鰯の丸干しをそのまま漬けてみた。あぶって食す。ほんのり酒粕っぽい香ばしさもともない、とってもおいしい。鰯のうま味と、適度な酸味もある塩辛さは、もーお酒がないといけない感じ。豆腐とは違い、味噌ではないこの「塩粕」だからのおいしさだ。

どうも動物性はいいかも知れないと思い、今度は豚肉を漬けて焼いてみた。世間には豚肉の味噌漬けなんかがよくあるけど、私はそれを「子供向けな味だなぁ〜」と感じるときが多い。妙に甘いからだ。味噌に比べ甘さ・うま味が少ない分、魚・肉などそれ自体にしっかりうま味がある素材には、「塩粕」で「大人向け」な味に仕上がる。・・・・おいしい。「大人向け」とは言いながら、5歳の娘も喜んで食べていた。

ところで、この「塩粕」、元々は蔵人の方々のまかない用だったとのこと。また、一緒に送ってもらったレシピを見ると、砂糖や生クリーム、チーズ、マヨネーズなどとあわせて調味料のようにも使われている。何かプラスアルファが鍵かも知れない。

そこでアッサリなおいしさ志向の私は、パンに「塩粕」を塗ってトーストした後、細かく刻んだパセリをのせてみた。ちょうど庭のパセリが収穫時だったので思いついた。ん〜、なーんかこれは新しいおいしさ〜。それは鰯や豚肉のような、うま味ベースのおいしさではなく、パセリのさわやかな苦みが「塩粕」の芳醇さと仲良くしていまーす、というおいしさだ。トーストするとき、エメンタールチーズも加えたら、アッサリ・プラス・コクになった。豆腐の塩粕漬けも、ひとひねりすると変身するかも知れない。


使い慣れてない食材なので、まだまだ未知数。きっとその可能性はたくさんあるだろう。

この「塩粕」をわざわざ送って頂いたのは、実は昨夏、「カンホアの塩」を使った「塩粕」が仕込まれたことがキッカケ。2年後は、来年2011年の夏。「カンホアの塩」でどう変わるかな。あー、待ち遠しい。

※このブログの続編 “豆腐の【味噌漬け】と【塩粕漬け】(5/28)” もあります。

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