2012年4月9日月曜日

ベトナム・ニャチャンのロシア料理レストラン


きょうのエントリも、3月下旬のベトナム出張時のときのこと。

私の出張は、主に「カンホアの塩」の生産現場、つまりはカンホアにある塩田なんだけど、そこは田舎で交通の便が悪いので、途中で必ずニャチャンという中型の町に立ち寄る。ニャチャンは、カンホア・プロヴィンスのキャピタルシティでもある。

ニャチャンは、町でありながら、ベトナムで有数のビーチ・リゾート。カンカン照りの下、ベトナム人は日陰に逃げるが、欧米人は甲羅干しに余念がない。冒頭の写真はニャチャンの町中のビーチだ。で、この1〜2年、その「欧米人」に大きな変化がある。

ロシア人が急激に増えているのだ。聞くところによると、ロシアからこのニャチャンまで毎日直行便が飛び始めているらしい。ロシアの3月はまだ寒いだろうから、きっと「暑さ」を求めてやってくるんだと思う。この20〜30年で世の中ずいぶん変わったが、ロシア経済・ベトナム経済の変化、また両国とも社会主義仲間だから、そのコネクションもあってのことだろう。

私のニャチャンの常宿は、外国人ツーリストが多い地域にある。ちょっと歩くと、もーロシア語の看板がズラズラで、英語に迫る勢いだ。(ちなみに日本語はまるでない) ・・・・というぐらいだから、本格的なロシア料理レストランも登場している。「本格的」とは、高級という意味ではない。ちゃんとロシア人が経営し、料理し、お客さんもロシア人であふれかえっているレストランだ。

このブログをお読みになっている方は、ちょっと思いつくことがあろうかと思いますが、先月、東京・新宿のロシア料理レストラン「スンガリー」のことを書いたばかり。(→3月6日:写真教室とボルシチ) どうも最近、ロシア料理に縁がある。

私はロシアへ行ったことはない。が、私にとってロシアは、何となく分かっていそうで分かってない、もっと知りたい国なのだ。例えばロシア料理といっても、ボルシチ、ピロシキ、ビーフストロガノフというベタな料理しか浮かばない。また、レーニン、トルストイ、ホロヴィッツをも育んだ大国だ。「もっと知っててもいいはずだ」という感覚は常にあるものの、なかなか東京にいてロシアの人と接する機会もない。

それに、戦後生まれの日本人である私は、知らず知らずのうちに、いわゆる旧西側諸国の価値観に偏っているかも知れない。そしてその裏側には、ロシアなど旧東側諸国の人たちが持ってる、私の知らない何か大事な感覚が存在するかも知れない。そして私にはそれが欠如しているかも知れない、という薄っすらとした思いもある。もしかしたらあるかも知れないその欠如を補うために、私が興味あるのは、生身のロシアの人たちの感覚だ。書物などで知るロシアもあろうが、直接のコミュニケーションの中で、体温を感じるようにそれを感じたいと思っている。

でまぁ、ニャチャンで、ロシア料理レストランがあると聞き、行ってみた。この1ヶ月で、「スンガリー」に続き2つめのロシア料理レストラン。続くときは続くものだ。

まずは外観から。下の写真は店の看板だが、全てロシア語。きっと店の料理のことが書いてあるんだろうが、忘れちゃいけない、ここはベトナムだ。ロシアではない。それも外国人ツーリストが多い地域なんだから、せめて「Russian Restaurant」ぐらい隅っこにかいてあってもよさそうなものだ。しかしながら、「ロシア人にだけ分かればいい」という何とも強いポリシーだ。こうこられると私の好奇心は、かえって刺激され、ゾクゾクしてしまう。


そして、下の写真が、きっとお店の名前。「P」のような文字と三角形みたいなロシア文字。どんな意味なんだろう? お店の名前でこんなに短くていいのか、と余計なことを考えてしまう。んで、面白いのは、その下にある、「14-20」。最初は番地かと思ったが、営業時間だった。20時閉店は分かるにしても、14時開店とはどういうことなのだろう? ロシア語は分からないが、この「14-20」という表示の仕方にさり気なさを感じる。店内は5〜6テーブル。木製の椅子とテーブルが見える。


上の写真は開店前(14時前)だったが、その日の夜に行ってみた。店に入ると、当然のようにロシア人で賑わってて、ラッキーにもテーブル席がひとつだけ空いて座れた。賑わってはいるものの、満席にしては話し声などどこか静けさを感じた。これもロシアなことなのか?

そして注文したのが下の写真。


右上がボルシチ。ベトナムでもたくさんあるディルがたっぷりのっている。左がポテトサラダのようなもの。手前がキュウリの漬物だ。ここまでを前菜にして、次の写真がメイン料理。


そう、ロールキャベツ。右上にちょこっと写ってるけど、パンはライ麦パンじゃなくてベトナムのバインミー(バゲット)だった。私にとっては、先のエントリで書いた、新宿の「スンガリー」での料理の記憶が新しかったので、ついついその線で注文し、比べてみたくなった。

で、そのお味はというと、新宿「スンガリー」同様、ほんとうに素朴で家庭的な味なんですねー。「スンガリー」の方が、やや味つけは繊細だったが、誰が食べてもおいしいって感じの、安心出来るような、心温まるようなお味でした。まだ2軒しか経験ないが、この素朴さがロシア料理の特徴のように思える。

ところで、写真にもあったように、この店、20時閉店なんだけど、私たちがメインのロールキャベツを食べ終わったのがちょうど20時頃だった。その10分前ぐらいになると、60歳ぐらいのロシア人男性店主は、従業員に片付けを指示し始め、私たちのテーブルの上の皿やグラスは淡々とどんどんかたづけられちゃった。「うちは20時に閉店なんだから」と念を押されるように。これも社会主義の名残りなのか? ただ、それがちょっと強引に感じたので、私が驚いた仕草をすると、隣のテーブルの若いロシア人カップルの女性の方が、クスクス笑ってた。もちろん、自分たちだって閉店間際までいる、私たちの仲間なんだけど。仕方なく「早く会計して店を出よう」って雰囲気になって、一緒に店を出た。

まぁ、その店主のぶっきらぼうな態度も、このレストランの味のうち。サービスが悪いとかじゃなく、きっとそんなもんなんだろう。決まった時間になれば、閉店して、従業員を帰らせるという、やさしいオジサンとも言える。隣のテーブルの女の子がクスクス笑ってくれたのには、ホッとさせられた。私たちも「そんなに悪いことをしている訳ではない」と思えたので。ん〜、何とも楽しい探検、いや食事でした。

先に書いたとおり、この店の名は「P」と「三角」の文字。
住所は、ニャチャンの、14A Hung Vuong通り。

もしかしたら、10年後には、ベトナムのどこかに、リトル・モスクワみたいなものがあるかも知れない。

0 件のコメント: