2019年4月12日金曜日

9年もの梅干し


私は、毎年梅干しを仕込んでいる。だいたい「一年寝かせて食べる」を毎年繰り返しているから、一番長く寝かせた梅干しでも、だいたい二年ものということになる。しかし、「ひょんなこと」というのはあるものだ。こないだは、9年ものの梅干しを食すことが出来た。これまでで、そしておそらく将来を含めても、これが一番長く寝かせた梅干しということになると思う。

「カンホアの塩」の、かつてのユーザーに、紀州の梅農家さんがいた。毎年梅干しを作ってくれていたが、高齢のため、9年前を最後に引退された。紀州なので、無論梅は南高梅。皮は薄く、しっかり干されていながらも、ジューシーな仕上がりで香りがとてもよかった。塩気と酸味のバランスも私の好み。私が梅干しに使う梅は、こんな南高梅ではないので、同じようにはならない。でも、その梅農家さんの梅干しは、私の中のひとつの理想(お手本)だった。

それで、つい2〜3週間前、会社の棚の整理をしていたら、小箱に入った9年前のその最後の梅干しが出てきた。その梅農家さんが引退すると聞いて、多めに購入していたうちの一箱だけが残っていたのだ。

ポリ袋に入っていたので、水分はほぼ保たれていた。真っ赤だった赤ジソの色は茶色に、そして、塩辛さが減っていた。俗に「塩角(しおかど)が取れる」と言われるが、まさにこれがそうなんだと思う。また、梅干しを粒ごと食べて残った種。この種に梅干しの味がしっかり染み込んでいて、30分しゃぶっていても味が続いて、おいしい。梅の果肉の味が、この種に移ったせいで、果肉の酸味・塩辛味が柔らかくなった、なんてことがあるんだろうか?

慌ただしく過ぎていく日々の時間の中で、ひょんなことから9年前の梅干しを頬張ることになった。当然ながら、9年前に思いを馳せる。そして9年前からして今自分は、少しは何かが良くなっているだろうか、なんて考える。その「何か」はハッキリとは分からないけど、9年の間に少しずつ変化しているようには感じる。そしてこれからも変化していくと思うと、たまには、立ち止まって過去の自分の感覚を思い起こしてみるのも悪くないと思った。

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