2009年7月2日木曜日

ベトナムの銀行で


きょうは食べ物の話ではない。銭の話、大げさには経済の話。

先月のベトナムでのこと。手持ちの米ドルを現地通貨であるベトナム・ドン(VND)に両替しようと銀行に行った。待たないで済むようにと、(外国人など)両替をする人はいなそうな銀行に入った。そこの両替の窓口へ行ったら、思いの外、混んでいた。5〜6人待ってたか。ただ外国人らしき人は一人もいなくて、みんな地元らしき人々。番号札もなく、列を作るでもない。その人たちは手に何枚かの札(さつ)を握りしめて片ひじをカウンターについたりして、ややイライラしながら順番を待っている。私のような両替が目的ではなさそうだった。馬券を買う窓口ってこんな雰囲気かなぁ〜、とも思った。

その人たちに混じり、何となく順番を待っていた私。「いつになったら自分の番が来るのかな〜」と思っていたら、窓口のお姉さんはその5〜6人の順番をちゃんと覚えていて、正しい順番で声を掛けられた。ん〜、さすがベトナム・・・と、今回はそういう話ではない。

待ってた間、この人たちは何をしにこの窓口に来てるのか、ここは(両替の他)何の窓口なのかと、当然気になった。そして窓口の脇にあった小さな張り紙を見て分かった。それが上の写真。定期預金の金利表である。2009年4月17日の13時の日付が見える。このレートの開始日だろう。

縦に数字が4列並んでいるが、左からベトナム・ドン(VND)の年利と月利、3列目がUSD(米ドル)、4列目がEUR(ユーロ)だ。外貨預金が出来る。そして、横列は、“1 TUAN”が1週間、“12 THANG”が12ヶ月。そして驚くべきは、その数字。一番低いユーロで、1年ものの年利0.9%、米ドルで2.00%、そしてVNDに至っては何と8.00%。私はこの手の話題に疎いが、1年預けての8%がメチャクチャ高いことぐらいは分かる。(ちなみに日本はと、ちょっとネットで調べてみると、今の都市銀行の定期は、年利0.2%から0.3%ぐらいのようだ) もちろん米ドルやユーロと比べ、VNDが著しく高いのは、そのインフレ度合いが反映されているのだろう。疎いので詳しくは分からないが、米ドルとユーロでも倍以上違う。何しろ一番低いユーロだって、日本での日本円の4倍近いのだ。これをある税理士に話したら、「金の借り手が多いのでは」とのこと。なるほど。そしてもちろん現地通貨であるVNDは、8%なのだから、預金するのは当然とも言える。それでこの窓口で順番を待ってる人たちは、「小銭が貯まると預金」を繰り返しているという訳だ。後でこのことをベトナムの知人に話したら、「あ〜、最近はそういう(セコい)ヤツもいるな〜」と言っていた。でも、何となくそのセコさが憎めない。

ここはニャチャンという町で、ベトナムでも南部に属する。南部の人はよく言えば、おおらか。例えば、友達同士10人でカフェにコーヒーを飲みに行ったとする。払いはだいたい一人がする。割り勘はあり得ない。必ず同じメンバーで再びコーヒーを飲む保証はもちろんないが、何となく「きょうは私が」となり、それが続く。ルールがあるようなないような。しかし例えば「最近アイツの子供は病気で金がかかってる」とかは暗黙のうちに配慮されるだろう。この習慣は、私のような比較的金を持っていそうな人間が混じっていても変わらない。だから、私も様子をみながら、たまに払う。他の国・地域と同じように、ところ変われば経済感覚も変わる。

ベトナムは今、景気がとてもいい。さっきの高い金利の話でも、金の借り手と預け手の両方が多く、金がどんどん動いているのかも知れない。町を歩いていても、建設中の建物がいっぱいなのは誰でも分かる。人件費・物価もバンバン上がっている。「バブルがはじける前だからね」と言う人も少なくないが、これがもう10年続いてる。ベトナムは、タイ国に追いつこうとしている。バンコクへ買い物に行くのは、ちょうど日本人が30〜40年前にハワイに買い物に行くような、ひとつの「憧れ」だ。見ていて「憧れ」を持つことはいいことだし、羨ましいとさえ思う。それは謙虚さなしには持てない気がするから。そんな人たちの経済は今後どうなっていくんだろうと、銀行を後にしながら考えた。

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