2011年1月19日水曜日

菜懐石「仙」の料理

この間の土曜日、東京・三宿にある、菜懐石(ナカイセキ)「仙」へ行ってきた。「カンホアの塩」のサイトでも塩料理のレシピを作ってもらっている、カノウユミコさんの料理屋だ。肉・魚・乳製品・砂糖は使われていない精進料理で、おまかせの懐石コースのみ。個室3部屋だけの完全予約制。隣の部屋の声も聞こえないから、次々に出てくる料理に集中出来る。内装はちょっと変わった和風な感じで、何せ居心地がよく、いつまでもいたい雰囲気でもある。

さて、彼女は、「誰でも作れる」ことを主眼として、料理教室や本なんかでは料理を紹介している。また今月と来月は、「キューピー・3分クッキング」(日テレ系)の毎週土曜日に出演してもいる。

でも、この「仙」では、「誰でも作れる」料理は出てこない。きっと彼女にしか作れないだろう料理が次々と出てくる。だから、見たこともないような珍しいものがあるので、きょうはそれらを紹介したいと思う。

トップバッターは下の写真。

食前酒:ガラリ酒
先付け1:落花生豆腐
お茶:ハマ茶


一番上の小さなグラスに入ったちょっと赤味を帯びたのが「ガラリ酒」。これ、実はもう半分以上飲んだ後。この日、私は全部の料理の写真を撮ろうと意気込んでいたんだけど、料理が出されて説明を受けると、もうその料理のことに気持ちが向かってしまい、ついつい写真撮らずに食べたり飲んだりしてしまった。そんな訳で料理の全景がなかなか撮れなかった。これもその1枚。3人で食べていたので、3人で「忘れないようにしようね」と念を押し合っていながらも、気がついたらもう食べ始めている・・・・。中には、気がついたらもう食べ終わってたのもあった。それは魔法にかけられていたかのようだった。その点、ややお見苦しいとは思いますが、ご勘弁を。

では、料理の説明に戻ります。

「ガラリ酒」は、「ガラリ」という名前の奄美大島のプラムを玄米焼酎に漬け、メープルシロップで甘味をつけたもの。もちろん自家製。ほんのり甘く、滋養がある感じで、「さー食うぞー」という気分になる。左の白いのが落花生豆腐。生の落花生を絞った汁を葛で固めたもの。ねっとりした食感の中に、落花生が持つ甘味と香りが口の中に広がる。そして添えてあるワサビが引き締めてバランスが取られている。素直においしい。そして右のお茶は、ハマ茶。マメ科の植物「カワラケツメイ」を焙じたお茶とのこと。「カワラケツメイ」は、その昔、お茶の木がうまく育たない地方に弘法大師が「替わりにこれを育てて飲みなさい」と広めたものという。このお茶の「カワラケツメイ」はカノウユミコさんの出身地、山陰地方の砂地に生えてるものらしい。砂地じゃお茶は育ちそうにない。いわば裏のお茶だけど、豆の仲間だから身体には良さそうだし、その素朴な香ばしさが落花生豆腐とマッチしている。

そして次。

先付け2:栗のすり流し

栗と豆乳のスープ、やや昆布だしが利いている。栗の風味がたまらない。和な栗のポタージュだ。これも半分以上食べちゃった後の写真。「この時点で写真のこと思い出しました」とも言える。

へこたれず、次、行きます。

前菜:春菊の生姜和え、切り干し大根と京人参の酢の物、干し柿の酒粕和え、豆腐の味噌漬け、小さな椎茸の煮物

春菊のほろ苦さ、酢の物の微妙な酸味、干し柿と酒粕のほのかな甘さ、味噌漬けの非常に淡い塩辛さ、ドンコの子供みたいな椎茸から染み出る柔らかい旨み。これら五味の訴えが柔らかく、人の優しさのように感じられ、どれを食べてもしみじみとします。

さらに、

蒸し物:聖護院かぶらの蒸し物

これも半分以上食べちゃった写真(魔法ですから)。おろした聖護院かぶらの中に、百合根、蓬の生麩、白しめじ、銀杏が入っている。これもザ根菜・聖護院かぶらをしみじみと味わいながら、百合根などのいろんな具が楽しい一品です。

続いて、

焼き物:精進のうなぎモドキ

これは珍しく食べる前に撮れました。3枚あるうち一番右のは、うなぎの皮(?)が見えるようにひっくり返しました。「これがウナギじゃないなんて・・・・」と思いますが、ウナギじゃないんです。タレは、醤油とみりんとお酒かな?のようだったけど、舌にシルキータッチな上品な味。下に敷いてあるのは、紅芯の大根(甘ーい)、隠元に手前がムカゴ。いろんな味を楽しめます。

次は、

お造り:生湯葉など、おぼろ昆布を巻いた青のり生こんにゃく、イギス、アロエ、ソルティーナ

残念ながら、この料理は、全部食べた後、写真忘れたのに気がついたので、写真はない。器は織部だったことは覚えているんだけど。「イギス」は、海藻を練って固めたもの。主に日本海側で採れる海藻です。信州では「エゴ」、福岡では「オキュウト」なんて呼ばれているものの仲間ですね。アロエはほとんど苦くなく、そのへんのアロエではない。身体が元気になる感じ。ソルティーナは、若干の塩気を感じるやや肉厚な葉物野菜。シャキシャキした歯ごたえがこのお造り全体のアクセントになっている。ソルティーナはたぶん「ソルティー菜」。料理を運んでくれた女性に「スベラーズみたいですね」と言ったら笑ってた。同年代らしい。

さて、次行きます。

揚げ物:アピオス、オレンジ薩摩芋、葉付き京人参、ふきのとう、柿の木茸ときく芋のかき揚げ

これは珍しく、食べる前に撮れました。一番手前の2つのコロコロがアピオス。北米インディアンが好んで食べている、滋養たっぷりの芋というお話。ホクホク感がありサツマイモと栗の間ぐらいな味。まー、そのへんじゃ見かけませんが、精のつきそうな感じです。京人参は小さく、葉っぱの方をたっぷり食べるような天ぷら。そんで、「鳥取の雪の下から取り出した」というこのふきのとう、味が濃かったなー。大寒の前にも雪の下で芽生えている生命力とでも言うんでしょうか。オレンジ薩摩芋は甘かったし、きく芋は私の好物なので、嬉しさひとしお。これらをシンプルに塩だけで食す。塩は、カンホアの塩の【石窯焼き塩】。

ここでやっと、

ご飯:湯葉山椒のせご飯
椀:なめこと菜の花の赤だし
香物:白菜漬け・梅干し・赤カブの漬物


ここまで結構食べてるんで大丈夫かなと思いきや、食べられるんですねぇ〜。湯葉山椒も白いので写真では分かりにくいですが、ご飯の上にちゃんとのってます。この湯葉山椒でご飯が進み、お代わりしちゃいました。個室のせいでしょうね。お代わり用のおしつがありました。もちろんおしつのご飯にも湯葉山椒がのってまーす。赤だしは、そのスルッと喉を通る優しさ軽さがが精進のいいところって感じます。香の物は全部シンプルに塩漬け。自信のほどがうかがえます。写真はもちろん少し食べちゃった後のもの。毎度毎度ですみません。

さぁー、ついに最後です。

デザート:サツマイモの寒天ケーキに無糖の苺ジャム添え
抹茶:無農薬の抹茶


最後となって安心したせいか、写真がありません。もちろん砂糖が使われてないので、ケーキは芋と苺が持っている甘さです。長かったようですが、写真を撮り忘れるぐらい次から次へという感じで、終わってみたらあっという間でした。ごちそうさまー。

季節柄、根菜類のオンパレードでしたが、これが季節が変わるとまたいろいろあるんだろうなー。最後に気になるお値段ですが、懐石のおまかせコースのみで、9,240円/1人(税・サービス料込み)。ちょっと高めだけど、しょっちゅう行く訳でもないし、ご覧のとおり、その価値は十分にあるでしょ。

菜懐石「仙」は、「カンホアの塩」のサイトでも紹介している。
菜懐石「仙」のご案内

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