2014年5月16日金曜日

ムクロジの定点観測(本編)

きょうは、前エントリの続きで、ムクロジの定点観測の本編です。前エントリにもあるとおり、いろいろ事情があっての定点観測だが、こうして1年を通して観測し、記録に残しているうちに、この木に対して、すっかり愛着が湧いた。観測場所は、東京は昭島市。

さて、冒頭の写真は、ムクロジの花。(2013年6月10日撮影)
小さな無数の花がついている。甘い香りもしたような。何せこの木が植わっているのは、隣の敷地なので、近づくことは出来ない。冒頭の写真は、ズームレンズの185mmで撮っている。
そして上の写真は、花の写真のおよそ1ヶ月後、7月7日の撮影なのだが、花は散って小さな緑色の実がなり始めている。実の形は先へ行くほどやや太くなっている。
上は8月18日。7月7日のあんな小さな実が、たった1ヶ月余りでこれだけ丸くなり、大きくもなった。重みで枝が垂れ下がっている。これだけ重くなると、強風などで地べたに落ちたものもあった。それが下の写真。最終的なサイズのすでに9割以上のサイズになっている。
残念ながら写真はないが、この緑色の皮を剥くと、中から白い汁が出る。それだけ水分もあるということ。しかし、それを皮ごと手の平で泡立てようとしても、ちっとも泡立たない。

少しムクロジから話しはそれるが、ムクロジの他に、エゴノキというやはりサポニンを含む実をつける木がある。同じく夏に実るエゴノキの実は、少し薄い緑色でムクロジのよりやや小ぶりだが、やはり剥くと白い汁が出る。これは皮ごと泡立てると泡立つのだ。この点が、似て非なるこの2つの木の実の大きな違いのように思う。

極めて個人的な話しだが、25年ほど前、都会育ちの私が頑張って山の中で暮らしていた夏の日、山暮らしが長い友人が、信州から訪れてくれた。そして、たまたますぐそこにあったエゴノキの実を手にとって、私にこう言った。

「タケシ、これはエゴノキっていう木の実でね。ほらこうして実を剥いて手の平で擦ると泡立つんだよ。昔、信州ではこれを石けんのように使ってたんだよ」

私は魔法を見たかのようだった。都会育ちの私だから、山での暮らしをしてみたくてしていたのだが、その魔法の感動が大きいほど、「私は山のことを何も知らない」と思い知らされ、自然に対して謙虚になれた思い出がある。そしてその数年後、先天性の病を患っていたその友人の訃報を聞いた。しばしは「まさか」と思ったが、「ありがとう」。

さて、話しをムクロジに戻す。
季節は変わった。上の写真は、11月16日の撮影。緑色の葉っぱも、部分的に黄色くなり始めている。そして、夏に緑色だった実は、黄色から茶色の色合いになった。こうなると実のサイズもMAXだ。ただ、その実には、夏場ほどではないにしろ、剥くと汁が若干出るほどは水分が残っている。しかしそれを泡立てようとしても、エゴノキの実のようには泡立たない。
そして、上は、12月1日。葉っぱはすべてすっかり黄色く色づいた。この直後から、この大ぶりの葉っぱが、隣の家の木とはいえ、我が家の庭を一面に覆うことになる。実の水分はかなり抜け、葉っぱとともに地面に落ち始める。この頃になって、ようやくその実が泡立つようになる。実と言っても、泡立つのは(サポニンを含むのは)、黄味がかなり抜けアメ色になった実の皮の裏側だ。夏場と違い、水分はほとんどなくなっているので(触った感じは蝋状)、水を加える必要がある。つまり、汁になるほど水分が残っているうちは泡立たず、汁が出ないほど水分が抜けた状態になってサポニンが生成されるようだ。

それにしても、これ以降の実の落ち方はすごい。普段は静かだが、風の強い日は、我が家の張り出したトタン屋根に大雨のような音をたてて落ちまくる。それにまだ慣れてない頃の夜中、その音を聞いて「何が起こったか」と飛び起きたこともあったぐらいだった。
さて、年が明けて、徐々に暖かくなり、桜も散った今年2014年4月12日の写真が上。4月だと言うのに、まだ実が残っている。そして新芽が出始めているの、分かりますか? 新たな一年の始りだ。

そして、きょう、5月17日、観測最後の写真を撮った。それが下の写真。上の写真からたった1ヶ月で、すっかり葉が生い茂った。まさに春の勢い。そしてこの時期に及んでもまだ枝についた去年の実がある。12月頃からこの実にサポニンが含まれるが、半年もかけて少しずつ落ちるのだ。・・・・なので、少しずつ拾うことになる。「竿でつついて落とせばいい」とか言わないでくださいね。何せ隣の家の木ですから。
以上で観測報告は終わります。
以下は、オマケ。
今、小さめのバケツ一杯に、我が家の庭に落ちたムクロジの実がある。前のエントリにあるとおり、コイツを割って、皮だけを布の小袋に詰め、洗濯機に入れる。そして洗濯が終わったら、洗濯物と一緒にその布袋を干して、次の洗濯に備える。

我が家の洗濯機は、ドラム式の全自動だから、「洗濯」→「すすぎ」→「脱水」と続けざまに全行程を終了する。・・・・ということはですよ。「洗濯」スタート時に投入されたその布袋は、「すすぎ」→「脱水」のときもそのままだ。ムクロジの皮は、粉石けんのように溶け切ることはないから、「すすぎ」のときもサポニンを働かせながら洗濯していることになる。かと言って、「洗濯」が終わったところで、いったん洗濯機を止めて、布袋を取り出すのも面倒だ。

でも、あ〜ら不思議。「脱水」までの全行程が終わると、サポニン感(石けんぽさ)が残ってるということもなく、洗濯物はすっかりきれいになっている。そう、これがムクロジの魔法なのだ。・・・・お後がよろしいようで。

2 件のコメント:

cox さんのコメント...

洗濯物と一緒に脱水して干しちゃうなんて豪快です!!
匂いとか残らないのでしょうか?

天然成分だから、完全にすすぎきらなくても気になららいのでしょうね。
そういうアバウトさがいいな~。

下条剛史 さんのコメント...

> coxさんへ

それが、本当に匂いとか残らないんですよ。それだけ、一般の洗濯洗剤は匂いがある(またはあり過ぎ)なんじゃないかと思うぐらいです。そもそもムクロジ自体の匂いがほとんどありませんし。

そうですね。つまり天然成分っていうのは、程々なんです。いいですよ〜、程々って。