1.やきみそ
淡い味のぬかごが、食感とともにアクセント。柚子のきき方がとても穏やかで差ほど塩辛くない上品なお味と風味。
2.だし巻玉子
ミルフィーユのような玉子の層、出しのきき方に抑えがきいてて玉子自体もおいしく感じる。付け合わせの野沢菜のおひたしは、丈が半分ぐらいに育ったところを収穫した野沢菜のものだ。この11月ならでは。育ちきったものより、葉の味が淡く、独特のシャキシャキ感がいい。
3.三種のおひたし
この店のご主人(狭山湖の方らしい)がご自分の畑で育てたという無農薬の葉物たちのおひたし。(←先の野沢菜もそうだった) 左からイタリアンパセリ、広島菜、白たい菜(と店の女の子が言ってたが、しゃくし菜のよう)。パセリのおひたしは、以前このブログでも書いたことがあるが、こうして3種が並んでいると、イタリアンパセリの個性が際立つ。ただしどれも淡い味付けが嬉しい。こういうシンプルな味付けにこそお店の色が出ると思う。
4.里芋の田舎煮
箸休め的に頼んだ。よくこの上に柚子がのってるのがあるが、見てのとおり、これは至ってシンプルなのが潔い。やはりご主人が育てた里芋らしい。やや甘い味付けながら、お袋の味的な心地よさがある。しっかり染み込んだ味と煮崩れる直前さがいい。関西の人にこの感じが分かるだろうか。
5.三度豆と四角豆の天ぷら
三度豆とはインゲン豆。年に三回収穫出来るとか。四角豆は断面が四角の南方系のサヤ付き豆。帰宅後「四角豆なんての食べたよ」とカミさんに言ったら、「去年、ウチ(の食卓)でも出したの忘れたの?」なんて言われた。おー恐わ。
6.合鴨のロースト
野趣あふれるというよりは、柔らか〜くてクセの少ない鴨。添え物の果物は、生の柿と薄くスライスされた半乾燥のラ・フランス。蕎麦のかえしとともに。クルミがのってる様は、最初のやきみそのときのムカゴのよう。柔らかな鴨の食感にメリハリがついている。鴨にフルーツは定番だが、柿とラ・フランスは初めて。柑橘類のような刺激がないので、やさしく上品なコントラストだ。
7.白貝のかき揚げ
正直言って、こんへんになると酔ってきていて詳しくは忘れてしまった。
8.せいろ(小)
ん、うまい。この蕎麦で酔いが醒めた。
9.碾きぐるみ
せいろで酔いが醒めた私は、この「碾きぐるみ」で、心を奪われた。蕎麦が出てくると、いつも一箸目はつゆにつけずにそのまま食すのだが、その瞬間、世界が変わった。口の中から鼻へと伝わる感動するほどの豊かな香りと舌の奥へ広がるほのかな蕎麦の甘味。その感覚は翌日まで口の中に残っていて、思い出す度に唾液が出た。これぞ在来種。それも新蕎麦なんだ。いや、これはそれ以上のような気さえした。
蕎麦は、無論、打つ人にとって難しさはあろうが、食べる側にも難しさがある。ある蕎麦屋で、「あっ、この蕎麦うまいなー」と思って再訪しても、同じ蕎麦は食えない。この日のほんの2日前も、他店でそうだったので、あまり期待してはいけないと自分に言い聞かせていたところだった。在来種の蕎麦でもいろいろあるし、玄蕎麦の出来や鮮度にもよるだろうしと、自然に由来したいろいろな要素があるからだと思う。その点、幸い自宅にも近いこの無庵は、だいたいいつ行っても、うまい蕎麦を出してくれる。平均点が高いのだ。特に、この日の「碾きぐるみ」は、「こんなのもう食えないんではなかろうか」と思えるほどうまかった。常に変化する蕎麦だけに、とっても幸せな気分に浸れるのだ。一期一会とはこういうことなのだ。
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