私がベトナムで塩を作り始めて18年ほど経つ。毎年1〜2度はベトナムを訪れるので、とても親しみのある国だ。そして、こうしてベトナムで仕事をしてこれた理由の一つに、ベトナム人が持つ日本のイメージのよさがあると思っている。ベトナムから見た日本は、「戦後、焼け野原だったところから見事に復興、そして経済発展を成し遂げ、今や世界でも有数の豊かな国」といったものだ。
そんなベトナムも、昨今の経済発展は著しく、毎年多くのベトナム人が来日しているのだが、その中で、「外国人技能実習生(研修生)」というのがある。詳しくは下記のサイト。
●公益財団法人・国際研修協力機構(JITCO)
この外国人技能実習生(研修生)という制度とは、国をあげて日本が行っている事業で、その趣旨は、「諸外国(主に発展途上国)の青壮年労働者を一定期間産業界に受け入れて、産業上の技能等を修得してもらう」というもの。しかし受け入れ側の日本にとっては、労働力不足(特に、建築業・農業)を補うことに使われているのが現実だ。
それがうまくマッチして、実習生は帰国後、日本で得た技能を発揮してうまくいっているケースもあるが、そうでないケースもある。その後者が、冒頭の新聞記事だ。(2016年5月7日朝刊、東京新聞)クリックすると拡大されます。
そして、それからおよそひと月後、下記の記事が同じ東京新聞に載っていた。これもクリックすると大きくなります。その実習生はおそらく先の記事の人と同一人物のようだ。経緯が酷似している。(2016年6月1日夕刊、東京新聞) 記事の中の専門家のコメントで、「(法務省の)極めて画期的な判断だ。・・・・」とあるが、本当にそう思う。
それにしてもこの問題はとても複雑だ。
現実的に、深刻な労働力不足を補わなくてはならない日本側。中には、最初の記事にあるようなヒドイ業者もいるのだが、一方、実習生の中には、日本入国だけを目してこの制度を使う人もいると聞く。実習生の賃金は一般より安い。その手の人たちは、入国後、(極端な場合はその空港で)逃亡し、不法滞在しながらカネを稼ぐ。いくらこの制度があっても、自費は必要だ。例えば最初の記事で取材に応じているグエン・チー・タンさんの場合は、「60万円」とある。多くの場合、(親御さん含め)借金してその費用を捻出しているから、そう簡単には帰国出来ない事情もある。さらに、日本の業者と実習生を繋ぐ存在として、その国のブローカー(斡旋業者)がいる。最初の記事の中に「(グエン・チー・タンさんは)ベトナムの送り出し団体に手数料60万円を支払って来日した」とあるが、「ベトナムの送り出し団体」がブローカー(斡旋業者)であり、無論ビジネスとして行っている。
冒頭に書いたとおり、ベトナム人が持つ日本のイメージはとてもいい。これは私の仕事に限らずとても大切なことだと思う。何とかそれが悪い方向に進まないようにせつに願っている。例えば、ベトナムには日本で技能を習得したい人が多くいるだろう。そして、日本には人手不足に悩む建築業・農業の業者が多くいるだろう。でも、こうしてこの制度を悪用する日本人・ベトナム人もいる。この絡まった状況が続くと、両国にとってよくない。この外国人技能実習生の制度をもっと現実に即すように、変えていかなくてはならないと思うのだが・・・・。
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