さて、一年と3ヶ月ぐらい前に、現在の借家に越してきた。その引っ越し前、この物件の見学で訪れたときのこと。
家屋の南側に、「駐車2台可」のスペースがあり、いわゆる再生ガラと呼ばれる2〜3センチ大のコンクリートやアスファルトの破片が混じったのが一面平らに敷かれていた。その再生ガラを試しに5〜10センチほど手で掘ってみると、黒い防草シートが敷かれていた。さらにそれを剥がしてみると、土が見えた。我が家の車は1台なので、もう1台分を庭として花壇や小さな畑にしようと思った。オーナーさんに「ここ、このガラをどかして庭にしてもいいですか?」ときいたら、「現状復帰を条件に、オーケー」とのこと。元々、カミさんとともに庭いじりが好きで、小さな家庭菜園や季節の植物を楽しめる庭のある家が引っ越しの必須条件だったので、「それなら」と入居の契約をした。
当時私が抱いたイメージは、表面の再生ガラを土嚢袋に入れてどかし、防草シートを剥がして土を少し入れれば庭になる、といったものだった。どかした土嚢袋は家の裏にでも積んでおいて、退去時に、それを戻せばいいと思った。
契約後、5〜10センチ厚みの再生ガラを本格的にどけて、防草シートを剥がしてみた。当初、土に見えていたその層は、実際は土というより、10センチ大ぐらいの砕石(自然石)が土にからまっている層で、つまりはほとんど砕石で、厚みが10〜20センチぐらいもあった。「えー、これじゃぁ、何も植えられない」。弱った私は、少し考えた後、決意し、再生ガラと砕石を別々に土嚢袋に入れて、家の裏に別々に積み始めた。ホームセンターで買った一輪車は意外と安かったのがたったひとつの光で、それはそれは終わりを感じられないほど大変な手作業だった。再生ガラの方の量は想像出来たが、その下に埋まった砕石はどのくらいの量なのか想像しにくかったので、「掘っても掘っても出てくる」という気分で作業が続いた。また当然、砕石をどかした分だけ土は減ったので、さらに土を調達せねばならなかった。その土木工事を、引っ越し前の早朝や夕方、休日に一ヶ月かけて行った。へとへとに疲れた。繰り返すが、この家は自分の持ち物ではない。いずれ出て行く借家なのだ。
そうして、再生ガラと予想外に出た砕石が家の裏にうず高く積まれた。これらは退去時には戻す予定のものだが、思いの外、山が高く、特に重い砕石の方はこのままでは危なく感じた。子どもたちには、「危ないから近寄るな」と言った。しかし、この砕石を処分してしまうと現状復帰時にはどうするかという問題が残った。前の家ではピザ窯に使っていた煉瓦が余ってたので、それを処分せずに、庭のスペースの半分に敷き詰め、ちょっと洋風な地面になった。退去時には砕石の代わりに、この煉瓦を敷き、防草シートを敷いて、最後に再生ガラを表面に敷こうと予定を変更した。引っ越し前に何とかそこまで出来たが、疲れ果てた私は砕石の処分までには至らず、一年が過ぎた。
そして今から1ヶ月ほど前のある日。「ドスン!」と鈍い嫌な音が家の近くで聞こえた。そのときは分からなかったが、その音から一週間後ぐらいに、たまたま家の裏を見たら、積んでいた砕石入りの土嚢袋が崩れていた。「あ、これだったのかー」と思ったと同時に、このままじゃまいずいと危機感を持った。
いざ調べてみると、大量の砕石を処分するのはなかなか難しい。やっとこさ片道30分の処理業者を見つけ、つい先週末、処分した。2トンダンプを頼んで持って行ってもらう量だったが、結構高くつきそうだったので、自家用車でピストンして運ぶことにした。当初は、だいたい1トンぐらいかなと高をくくっていたが、処分した際、計ってもらったら、実際は3.26トンもあった。
結果的に3回に分けて、1500ccの2ボックスカーの自家用車で運んだ。通常、トラックやダンプは、最大積載量という数字が荷台に貼ってあるものだが、乗用車にはそれがない。車検証を見ても、乗れる人数は載ってても、最大積載量の数字は見あたらない。言うまでもなく、一度にたくさん積む方が運ぶ回数が減る。最初の1回目は、「まー、だいたいこのぐらいなら大丈夫かな」と勘を頼りに積んだら、サスペンションが“キー”と3回ぐらい鳴った。用心してゆっくり運転。無事、30分の道のりを走れた。それが、0.97トン。2回目は少し増やして、1.13トン。最後の3回目は、1.16トン。それで合計、3.26トン。処理代は、トン単価2,500円で、8,802円。計算が合わないが、細かいことは分からない。
かなり無理した感は否めない。いい歳こいて。3回だと、その日に終わらすことが出来たというのが、3回に分けた理由だった。まー、結果オーライという言葉があるが、決して人様にはすすめられない。
今にして思えば、入居を決める前、再生ガラのほんの一部だけを掘ってみて、その下が土だと楽観的に、または自分に都合がいいように思い込んだのがこの悲劇の始まりだった。
そして今でも、もうひとつの山、再生ガラが家の裏に積まれている(上の写真)。ご覧のとおり、一年経って、新たな問題が発生している。入れていた土嚢袋が劣化して破れ、中身がこぼれ始めているのだ。1トンはあるだろう。土嚢袋でおよそ40〜50。このままだと、この山の崩壊は時間の問題だ。この再生ガラを入れた土嚢袋は、正確には2種類。ひとつはベージュ色で「ガラ袋」という名で売られていたもの。もうひとつは、よくある白色の「土嚢袋」。2種類が混じって積まれているが、ベージュの方が破れが著しい。「ガラ袋」、「土嚢袋」の破けた穴から、中身がまるで砂時計のように、日々こぼれている。
指をくわえて見ているわけにはいかない。
同じ袋に入れ替えて積み上げたところで、一年経てば、同じことになる。そこで、ネットで検索してみると、ちょっと高いが黒色のUVカットタイプの土嚢袋を見つけた。一枚あたり100円ちょっと。
今度のお盆休みにでも、一度新しい白色の土嚢袋に入れ替えて、それをさらに黒色UVカットタイプの土嚢袋に入れ、つまり二重にして、積み直ししようと思う。一枚100円ちょっともする土嚢袋を40〜50枚も使うのは贅沢とも言えるが、それで1年でも長く持つのなら、その価値は十分だ。
最近流行りのガーデニング。以前、そんなブームに警告するように、京都のベニシアさんがNHKの番組で、「ガーデニングは、ほとんど土木作業ですよ」と言ってたのを思い出す。土は重い。さらに、煉瓦も重い。そして、石はもっと重い。
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