2016年12月13日火曜日

旅の土産は、400〜500人分

旅行に行って、義理土産を探し回るほど、煩わしいものはない。

こないだ、長らく世話になった「カンホアの塩」生産者の代表が退職間近ということで、彼と彼の鞄持ちの二人のベトナム人を日本に招待し、一週間の旅行を一緒にした。初めての日本ということで、京都→富士山→東京。コース・内容ともに超ベタだったものの、紅葉ど真ん中の京都や、部屋から富士山がでーんと一望できる旅館などに泊まった。こんなこともないと、こんな旅行は私にはないだろうと思った。

近頃、日本への外国人観光客が多いことは、知っていたものの、一緒に行動すると、「へぇー」ということがあるものだ。3年ほど前、イタリア人の旧友と日本を旅行したことがあったが、「外国人観光客」と言っても、イタリア人とベトナム人ではずいぶん違う。それもまた、いとおかし。

1.外国人観光客で、京都の一番人気スポットは、伏見稲荷

ネットでちょっと調べれば分かることだが、そういうことだったので、連れて行った。私にとっても初訪問。訪問者の8割方が外国人。あの千本鳥居と呼ばれる朱色の鳥居のトンネルが印象的なんだと思う。でもそのベトナム人二人は、途中で飽きてしまって、ちょうど中間地点ぐらいで、「もう、鳥居はいらない」と言い出した。すごい人数が列になって歩くので実質的に一方通行。ただ進むしかなかった。それにしても、

観光地、どこへ行っても、外国人

「今や外国人観光客がいないと、京都(の観光産業)は潰れます」とは、タクシーの運転手さんのお話だが、本当にそうだ。

2.河口湖畔の旅館の宿泊客の9割は外国人

旅館の方に質問したときのお答え。「週末は半分以上日本人になることが多いが、平日は9割は外国からのお客様です」とのこと。外国人観光客は、わざわざ料金割高な週末なんかに泊まらない。週末は、その日しか休みの取れない日本人が多くなるということだ。平日の五合目にも行ったが、8割は外国人観光客(アジア系多し)だったなぁ。

3.なんつったって、お土産がスゴイ

中国人観光客の「爆買い」と言われて久しいが、今回連れだったのは、ベトナム人。それもホーチミンなど都会のベトナム人ではなく、田舎のベトナム人だった。冒頭の写真は、彼らのお土産リストなんだが、リストになるのは、親しい人向けのお土産だけなので、これはほんの一部ということになる。私は、質問した。

「あなたたちは、いったい何人分のお土産を買おうとしているの?」
「全部でだいたい400〜500人ぐらい」

ぶったまげた。
最近、驚くことが少なくなってきちゃったなと思っていたが、これには久しぶりに驚いた。ぶったまげたが、その答えをにわかに信じられなかった私は、さらに質問。

「それは例えばどんな人たちなの?」
「会社の全従業員(およそ300人、詳しくは同じ会社でも、親しい人、遠い関係の人といろいろだが)、家族・親類はもちろん、自宅の近隣の人たち、知人・友人・・・・。周りの人たちを、幸せにしたいんだ」とは、この旅行の主役であるその代表者の話。

無論、お土産にもランクがあって、それがピラミッド型になっている。その底辺の300〜400人ぐらいの人たちには「(お印程度の)ちょっとしたもの」でいいらしい。しかし、大変なのは、(不公平感が出ないように)同じものということ。例えば、キーホルダーにしても、全く同じもの300個となると、ひとつの店にはなかなかない。そして、「made in Japan」と明記されてないとならない。「えー、そんなお印程度の安いもので、日本製なんかあるのかなー」と思ったが、これがあるのだ。

秋葉原のヨドバシカメラなど、外国人客の多い量販店に行くと、一膳100〜200円ぐらいの箸で、パッケージにでっかく「made in Japan」とか印刷されたものがあったりする。売る側も、買う側の事情をよく知ってて、その手の商品が並んでいるコーナーがあったりするのだ。見るからに、中国で作って日本で袋詰めしたかのような体裁で、とても「ちゃち」なものだけど、それを買うベトナム人は、その「ちゃち」さは十分承知していながらも、「これでないといけない」ということなのだ。お土産は、それがたとえどんなものであっても「せっかく日本に行ったのだから、中国製のものを買って帰っては馬鹿にされる」ということらしい。「同じ中国製でも、日本への輸出品と、中国国内向けの品物は違うと思うよ」と言う私の意見は通らない。

そして、家族など特に親しい人たちへのお土産も、これはこれで大変だ。その要求にはかなりのこだわりがあって、例えば、化粧品。「○○堂のコレ」などピンポイントで商品の外観写真などの指定があって、ちょっとでも違うといけないらしい。「そんなの発売時期がずれているせいで、少しパッケージが変わってるだけだよ」と言う私の意見は通らない。

この旅行に招待したのは、退職間近の代表者(主役)とその鞄持ちさん(脇役)なのだが、鞄持ちさんが必要なのがお分かり頂けたと思う。慣れない土地で青ざめながら奮闘してた彼が一番大変だった。彼は、京都や富士山など旅行の前半からお土産のことで頭がいっぱいで、そんな彼に私は「荷物になるから、お土産は最後の東京の二日間で買えばいいよ」と言っていたが、最初の二日間ぐらいでお土産ショッピングを済ませた方がよかったように、結果的に思った。写真のリストは、東京に着いてから見せてもらった。

まー、そんなあんなで、一週間の最後の二日間の東京滞在は、54年ぶりに降る11月の雪もあって、苦行のようだった。見渡す限りの見事な紅葉の清水も、雨に濡れて色っぽかった竜安寺の庭も、そして日の出前のぼんやりとした光の中に薄っすらと浮かび上がった窓枠いっぱいの富士山もぶっ飛ぶような、二日間の買い物でした。ジャン、ジャン。


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