2016年12月20日火曜日

大阪のふぐ

私は東京生まれの東京育ち。関西は京都界隈に2年ほどいたことがあるが、大阪は全く知らない。そんな大阪に、先月、出張した。一人で夕方以降に時間が出来て、その日は泊まり。これはどっかで一杯やらないとと思って、なんば駅から戎橋筋のアーケードを抜けて道頓堀へ。繁華街をしばらくウロウロした。冒頭写真の「道頓堀」というネオンが、大衆的な懐かしさを醸し出していて、「これ大阪っぽいな」と、勝手に思った。

歩きながら、「昔、『道頓堀川』っていう映画があったよなー」とか、「道頓堀劇場っていうストリップがあったよな、あ、あれは渋谷かぁ」とか、「大阪八百八橋って言うよなー」とか、「阪神が優勝すると、飛び込むのはこの橋からなんだな」とか、すっかりお上りさん気分に浸りながら、歩いていると、やや古びたように見える、ふぐ屋さん。店構えからこの店に決めた。ふぐ料理「与太呂」東店。
「一人なんですが」と入り、様子をうかがっていると、「こちらのカウンターでも、奥のテーブル席でも、どちらでもいいですよ」と声を掛けてくれた。入口すぐの細長いスペースに5〜6人のカウンター。広くなってる奥には、テーブル席が10ほどあっただろうか。テーブル席は常連客で埋まっている雰囲気だったし、「東京から来た心細い一見のひとり客」ということ、そしてテーブル席より仲居さんと少しは話しがしやすいかもと思い、他の客がいないカウンター席についた。

目の前に壁に「ふぐ料理」と題したメニューがかかってる。
ちりなべ 5,080円
お造り 2,480円
おぢや 390円
清酒 白精上撰 350円
ビール(中) 500円

何とこれだけ。
「ちりなべ、お造り、それとビールお願いします」。
それを仲居さんが厨房に注文を通すのだが、ひとこと、「両方!」。(笑)
そうだなー。メニューこれだと、選択肢は「なべ」、「お造り」、「両方」の3つしかない。

ビールを飲み終わった頃、てっさが出てきてた。あわててお燗を注文。「ヒレにしますかー?」と言われたが、ふぐ自体を味わうには、ヒレにしない方がいいように思って、普通のお燗。
すごいボリューム。お造りにしても、トウトウミにしても、東京の1.5倍から2倍はあるような・・・・。そして、薄くない薄造り。鯛や平目より少し薄いぐらいだ。ん〜、うまい。薄いと少しのふぐを大事に食べる感じになるが、この厚さだと「うまいものをしっかり食う」という感じになる。「スッゲーなー、これが大阪のふぐってことか」とちびちび飲んでると、なべ登場。
これがまたスゴイ量。(写真がどれも食べかけです)
脇役のポン酢・アサツキ・紅葉おろしが、上品な感じじゃなくていい。甘味がほとんどなくて出汁なんかが利いてないシンプルなポン酢に、アサツキ・紅葉おろしをドサッと加える。他店だが。ときどき出汁がしっかりきいた甘めのポン酢がふぐと一緒に出てくるが、あれはいけない。こういうのでないと。そしてこういったふぐはもちろん、ポン酢が「大阪では、ふぐは高級品じゃなくて、みんなのものだよ」と主張している気がする。うまい。うまいが、なべの後半は、何とかこれを平らげないと、「おぢや」にたどり着けないという思いでいっぱいだった。「ふぐは、おじやが一番おいしい」が今は亡き私の父の見解だった。

そして、何とか「おぢや」を注文。
おぢやを作ってもらうとき、化学調味料が使われることが多いので、一見客とは言え、そこだけは言わせてもらった。

「あのー、化学調味料が苦手なので、塩だけで味付けしてもらえますか?」
「そうなのよね。私も家では使わないんだけど、ここでは(何も言われなければ)使うのよね。(あなたの言うこと)分かりますぅー」

あー、よかった。そして、何とか「おぢや」まで食べ尽くした。しばらく動けない。

それにしても、この上ないシンプルなメニュー。カウンター席だったので、一応きいてみた。

「メニューが分かりやすいですね。余計なこときくようですが、まさか、頼めば白子や唐揚げがあるなんてことないですよね?」
「ありません。うちはこれだけなんですよー、すみませんねー」
「やっぱ、そうですよね」

まー、何しろ、ふぐ屋さんというと、東京では敷居が高いし、値段も高い。(最近は、安いチェーン店があるが、それも高いことの裏返しだ) 「大阪のふぐ」と話しには聞いていたが、本当に食い倒れた。

お会計は、ちょうどメニューを全部ひとつずつ頼んで、8,800円也。ただ、これは二人でちょうどいい量だということを言っておかねばならない。

会計の際、「東京から来たんですけど、東京の倍の量ですね」と言うと、「みなさん、そうおっしゃいますぅー」と軽く返された。「たらふくご馳走になりましたぁー」。これで私の慣れない上方の会話が成り立ったんであろうか。

ええかっこしいの東京のふぐ。「うまいもんは腹一杯食う」大阪のふぐ。しょっちゅう食べる訳ではないので、ちまちま頂く東京のふぐもいいのだけれど、もっと身近で気軽に腹一杯食うふぐの方が王道だな。

ところで、このふぐ屋さん、夏場も同じメニューでやっているのだろうか。それ、聞くの忘れた。でもやってそうな気がする。同じメニューでね。

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