2009年9月1日火曜日
ブノワトン 高橋幸夫氏 逝去
(後記:写真は、9月28日行われた偲ぶ会のもの。麦の穂を捧げた。)
ブノワトンの高橋幸夫氏が8月1日に逝去されたことを、先週知った。彼はご家族とともに、日本におけるパンの新しい世界と可能性を見せてくれた。
それはおいしいパンというだけに留まらない。一見とてもパン屋さんとは見えない店構えのブノワトン(神奈川・伊勢原)の中に入ると、眺めているだけでもおいしさが伝わってくる様々なパンたち。「もー最初は大変でしたよ。バゲット切ったら中に穴が開いてるってクレームになってたんですから」というところから始まり、その後は東京から買いに来るお客さんも珍しくなくなった。次のお店は和の佇まい、足柄麦師をオープン。そして「神奈川でパンを作っているのだから、神奈川の小麦を使いたい」と、自分で粉屋まで始めた。その小麦は「湘南小麦」と名付けられた。功績はとても語り尽くせない。
去年の夏、高橋さんと話す機会があった。彼は家庭でパンを手軽に作れる「手作りパンキット」のようなものを考えていて、「そのキットの塩として100〜200gぐらいの小さいカンホアの塩【石臼挽き】を作らないか? また(小さい方が)お店でもお客さんは買いやすいですよ。パッケージのデザインは・・・・」と提案された。お店で使ってもらっているのは20kg、小さいのは500gしかなかった。それまで考えはしていても実行にちっとも移ってなかったが、その声で背中を押された私は実行に移り、今年の春、それが発売になった。だから、カンホアの塩【石臼挽き】の150gは私なりに思い出深い。
初めてお会いしたとき、「カンホアの塩、おいしいです。オッケーです」とニコッと微笑みながら言われたときは嬉しかった。私は「ブノワトンのパン、おいしいです」とは思っていても、とてもそれを言えるようなタマじゃない。いろいろな思いを胸にギュッと詰めて、私は私なりに進んでいくしかない。
ゆっくり休んでください。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
合掌
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