2012年3月23日金曜日

オシャレな新しいベトナム人

先週、ベトナムへ行ってた。15年ほどベトナムに通っているが、この15年のめまぐるしい変化を動的だとすると、今回は新しい静的な変化をしみじみと感じた。

ベトナムへ通い始めた頃は、さほど慣れていなかったということもあろうが、どんどん変わるモノや経済に目を奪われた。例えば、どんどん新しい大きなビルが建ち、どんどん新しいオートバイが増え、自動車も増え、道はよくなり、しゃれたカフェ、豪華なレストランも増えていった。そして、その頃お目にかかったお金持ちの人々は(町ですれ違うぐらいの人も含め)商売で成功したようなギラギラした成金的な人たちがほとんどだった。次に越僑さん(海外在住のベトナム人)かフランス人。この両者は物静かで決してギラギラしてない。越僑は主に海外で稼いだカネを地盤としていて、フランス人は仏領時代の名残りもあって、いまだにヴィラなどを持っていたりする。

でも最近は違う。


上の写真は、最近サイゴンで流行りのレストランのテーブル。天板のきれいなアンティーク・テーブル。陶器は全てソンベー焼、箸はココナツの木製、ブリキ製の箸立て、栓抜きは氷割りの形(ベトナムで古くから使われているアルミ製の氷割りを模したもの)。一般的なベトナム人が見たら、「(サイゴンで流行りのレストランなのに)何でこんな古くさいの使うの?」と目が点になること間違いなしだ。おまけにツマヨウジの器は、見てそれとすぐ分かるよう大きく欠けていた。店内のインテリアも古いモノばかり。テーブルが並んだ部屋へは、かがまないと通れないぐらい低い、仕切り壁の開口を通るつくりだ。従業員は英語で注文をとりにくるが、メニューはベトナム語。客は、抑えの利いたオシャレな服装で、控えめの声量の英語とベトナム語のチャンポンで会話していたりする。ちなみに料理の値段は通常の3倍ぐらいする。

てっきり経営者はフランス人か越僑さんかと思ったら、生粋のベトナム人だった。今の一般の日本人に、この感覚はなかなか分からないだろうが、生粋のベトナム人がこの感覚で商売する、そしてその類の(ギラギラしてない)ベトナム人がたくさん来店し、繁盛している・・・・私には10年前は想像すら出来なかったことだ。もちろん、これはほんの一握りのベトナム人だが、10年前は一握りのこの手のベトナム人に私はお目に掛かる機会さえなかった。今は、いわゆる富裕層が厚みを増してきたのだと実感する。


上の写真は、私たちが食べた料理。何の変哲もないベトナム料理だ。しかし、調理が丁寧で、優しい味つけが印象的。化学調味料も使ってないかも知れない。奥に見えるジュースのストローは、太めの空心菜の茎。(←これも一般のベトナム人にはかなりショックだろう) 写真を拡大してみよう。手前の豚肉のスライスが盛られたソンベー焼の皿は、ボロボロとフチが欠けてる。このソンベー焼は最近のと違い形がしっかりしている。10年以上前のものだ。もー、一般的なベトナム人は、驚いて椅子から転げ落ちるか、気が狂うかも知れない・・・・それは言い過ぎとしても、黙って言葉を失うだろう。


このレストランのコンセプトは、現代の在ベトナムのフランス人のセンスに寄るところが大きいと思う。一部のフランス人は、郊外のいいところにコロニアル風のヴィラを建て、ベトナムの昔のモノを活かしたインテリアや道具とともに暮らしている。それに似ているから。

日本で例えてみよう。そうだな、1960年代、破れたジーパンが初めて若者の間で流行ったときがある。それを見たほとんどの年配者たちは、「なぜ、わざわざボロをはく?」って、ビックリしたと思う。それのもっと極端なものかな。

下の写真がこのレストランの入口だ。重厚な木戸が半開きになっていて、最初、「営業しているのかな?」と思いながら恐る恐る中に入ると、店内はお客さんで大賑わいだった。もちろんこの扉の半開き加減もこの店の演出だ。


生活スタイルが画一的に変わっていくと、必ずと言っていいほど、そのアンチテーゼのようなスタイルが登場するのだ。ベトナムも例外ではなかった。15年前の私には、それが想像できなかっただけかも知れないが、今回この静かな驚きは私の心にしみじみと染みいった。

下記が、このレストランのインフォメーション。サイゴンの中心地に近いが、ポッカリと静かな裏路地沿いにある。もー、いい歳こいたおっさんの私は、ビックリだぁ〜。

CUC GACH QUAN
10 Dang Tat, Tan Dinh, Quan 1
Sai Gon
tel. 08-38 480 144

★「オシャレな新しいベトナム人」、続編もあります。

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