2012年5月16日水曜日

金継ぎday

 「あたしゃ、破けたり穴があいてる服着てる人はだらしないと思うけど、継ぎがしてあればいいのよ〜。継ぎさえしてあれば」

「そうねー、でも最近、継ぎのあたったズボンはいてる人って見ないわねぇ〜」

30年も前のことだけど、皿洗いのアルバイト先だった新宿の居酒屋への出勤途中、同じエレベーターに乗り合わせた年配の女性従業員二人の会話だった。

この何気ない会話を耳にした二十歳の私は、「ん〜、もっともだー」と思った。だからといって、その後自分が着る服に継ぎをあてたことはあまりなかったが、その「継ぎ」という言葉は私の中に根付いた。

「欠けた茶碗は良くないと思うけど、継ぎがしてあればいいのよ。継ぎさえしてあれば」

と、ちょうど30年前、エレベーターの中で聞いた会話を反芻(はんすう)するように、ここ10年ぐらい私は我が家の器を「金継ぎ」している。

我が家の器は、作家モノ、古いモノ、ベトナム・ソンベー焼のモノが多い。これらの器は共通して独特の柔らかさと温もりがある。しかし、その分生地がもろいから、よく欠ける。欠ける以上に壊れると、生地のもろい陶器はポロポロと細かな破片になりがちで、そこまでいくと諦められる。だけどよくあるのは、ちょこっとフチが欠けたり、釉薬が剥がれたり。

「こんなことぐらいで使えないなんて耐えられない。でも、ずう〜っとそのまま使うのも何だな〜」

と、そんなときは「金継ぎ」だ。

ただ、器が欠けるのは一個一個。「金継ぎ」はその都度やってられない。だから、私は1〜2年に一度ぐらい、「金継ぎday」を設けて、その日は数々の器を「金継ぎ」しまくることにしている。先日の連休中の一日を「金継ぎday」にした。

まず、用意するモノは以下の写真。

●特製うるし(金)
●エポキシ系樹脂の接着剤

材料としてはこの2つ。写真では3つあるが、ちょうど古い接着剤がなくなりそうだったので、新しいのも写真に加えて、接着剤2つと特製うるし(金)だ。これに、

●竹串またはツマヨウジ(ツマヨウジも竹製が使いやすい)
●厚手の紙(菓子のパッケージなど、そのへんの余ったので十分)

を使う。

エポキシ系樹脂の接着剤はいろんなメーカーから出ているが、どこでもいいと思う。また、「透明」「白」など、樹脂が固まったときの色の選択肢があるが、器の色は様々だから「透明」が無難だと思う。また、「5分」「15分」など、硬化時間が何種類かあるが、私は「5分」を使う。そして特製うるし。これは元々釣り具(和竿)用だと思う。これも数種類の色がある。「金」継ぎにしたければ、「金」色の粉がついてる「金」を買う。「銀」もあったと思う。

元来、「金継ぎ」は、割れた陶器を金色の漆でくっつけるものだと思うが、私の場合、くっつけるときはこのエポキシ系樹脂の接着剤。また「欠け」が小さい場合は、特製うるし(金)だけだが、「欠け」が大きい場合は、この接着剤と特製うるしの両方を使う。

30年前の話なんかしてたら、長くなってしまった。次回のエントリで私流の金継ぎの実践編を書きます。

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