上の写真は、「Newton」別冊(奇跡の惑星 地球の科学 誕生と歴史、構造と環境)の中の海水の量などにについて記載のあるページ。
★先のエントリ「塩の資源(その1)」の続き。
「世界中で塩が大量に作られ続けていて、海は大丈夫なのか?」
という命題について、先のエントリでは、地球上の海水は「圧倒的な量」のため、近い将来は変わらなくても、遠い将来は変わるハズだ。と、結論した。
ただその結論はひとつの理屈なので、このエントリでは、人間が海水から作るのに毎年消費している海水量は、地球の全海水のどのくらいに当たるのかを試算してみようと思う。数字に苦手なため、結論的な数字だけではなく、その過程も披露させて頂きたい。
最初に、年間、世界中でどのくらいの塩が生産されているか?
日本語のweb上にあったものを2点、以下に記します。
1.約2億8千万トン
塩事業センターのサイト内にある「塩百科」(世界の塩の需給状況)によると、「世界の塩の生産量は、年間なんと約2億8千万トン」とある。
http://www.shiojigyo.com/siohyakka/number/sufficiency.html
また、下記ページの「統計/各種調査」のページ内、「世界の塩生産量」をクリックすると、「2014年塩生産量(国別)」(出典:British Geological Survey)という50カ国分の数字があり、それらの総計は、278,645千トンとなる。おそらく、上記「塩百科」の「約2億8千万トン」と関係していると思われる。
http://www.shiojigyo.com/a080data/
2.約1億8000万トン
たばこと塩の博物館のサイトでは、「現在、世界中で1年間に約1億8000万トンの塩が生産されています。海水からつくられる塩は、そのうちの約1/4で、残りは、岩塩や塩湖など海水以外の塩資源から採られます」とある。
https://www.jti.co.jp/Culture/museum/collection/salt/s4/index.html
ちなみに、私が作っている「カンホアの塩」のwebサイト内のに、「いろいろな「塩」の違いとは?」という章があり、そこでは、たばこと塩の博物館の「約1億8000万トン」と記載している。しかし、「約2億8千万トン」の方が新しいデータのような気がする。その理由は、近年、年ごとに塩の需要は増えているからだ。
地球の人口は増える一方だから、食用の塩の生産も増えているのだが、それよりずっと大きな要素がある。例えば日本で消費される塩の需要として、食用は10〜15%に過ぎない。最も多い塩の用途は、ソーダ工業用(苛性ソーダなどの生産)で、その割合はおよそ75%にものぼる。そして、現在進行形で世界中の国・地域では、年々工業化が進んでいる。
詳細はともかくとして、話しを進めるために、世界での、年間の塩の生産量は、
約2.8億トン
ということにする。
次に、世界で作られている塩の、3分の2(およそ67%)は岩塩で、およそ8%が湖塩、残りの4分の1(およそ25%)が海水塩だ。つまり、「約2.8億トン」のうち、海水を消費して作られている塩は、
約2.8億トン × 25% = 約0.7億トン
となる。
次に、この「約0.7億トン」の塩を作るのに、どのくらいの海水を必要とするか?
海水の塩分濃度は、およそ3.4%だが、その塩分(3.4%)の中でNaClは78%ほど。きっちり全78%を塩にすることは出来ないので、大ざっぱに75%とすると、
約0.7億トン ÷ 3.4% ÷ 75% = 約27.5億トン
「約27.5億トン」の海水が必要、となる。
ところで、先のエントリで書いたとおり、「Newton」別冊にある海水の量は、
1,348,850,000立方キロメートル
となっていて、重さではなく体積になってる。ややこしくなってきたが、ここで諦めずに、「約27.5億トン」の海水を体積にしてみようと思う。海水の比重はおよそ水の1.024倍として、「約27.5億トン」の海水を体積(立方キロメートル)に換算する。
約27.5億トンの海水 ÷ 1.024 = 約26.9億トン分の水の体積
ということになり、「約26.9億トン分の水の体積」を「立方キロメートル」に直す。「1トンの水=1立方メートル」として、「1立方キロメートル=1,000,000,000トン(=10億トン)」。したがって、「約26.9億トン分の水の体積」は、「約2.69立方キロメートル」となる。
で、やっとこさ、地球の全海水量の中で、一年間で海水塩を作るために消費する海水の割合が出る。
2.69立方キロメートル ÷ 1,348,850,000立方キロメートル = 0.000001994%
このパーセンテージを大ざっぱに「およそ0.000002%」とする。そして、仮にだが、このペースで海水から塩を作り続け、地球の海水の1%を使うまでの年数はと言うと、50万年という計算になるのだが、いったい地球の海水を何%使うと、海の生態系に影響を及ぼすことになるのだろう。私には皆目見当がつかないが、切りがいいからと「1%」で50万年という例はよくない。0.001%では、500年。0.0001%では50年。このぐらいだと、感覚的に現実味が出てきはしないか。
ただ、この「0.001%では、500年。0.0001%では50年」というのは、海水を一方的に使う場合だけの数字で、雨や河川で海に戻っていく成分は考慮していない。単なる目安だ。また海水塩と岩塩・湖塩の関係も考慮してない。この続きはまた改めて。
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