上の写真は、紅玉。先週末、初物として食べた。紅玉は、日本のリンゴの中で私が一番好きな品種だ。その理由は、適度な甘味にともなう酸味にある。私にとって、他のリンゴは甘過ぎる。糖度が高過ぎる。昔に比べ、日本のリンゴはどんどん甘くなってる。
私の子供の頃、最もポピュラーだったのは、「国光」という品種だった。他には、「スターキング」、「むつ」なんてのもあって、それぞれが個性を持っていた。しかしその後の「ふじ」の登場が、日本のリンゴの転換期だったように思う。「ふじ」は、「国光」よりも甘く、パリッとした食感が特徴で、独特の香りを放っていた。「ふじ」の出始めは、「何ておいしいリンゴなんだろう」と思って食べていた。最初は高価だったが、いつしか大衆品に変わっていった。そして、その頃から、どんどん品種改良されたリンゴが登場し、その度に糖度が増していった。
そんな中、なんとか残ったのがこの「紅玉」だ。私にとって、リンゴは、「甘酸っぱい」果物だ。「紅玉」の、甘さだけでなく、酸味もしっかり感じさせてもらえる味を味わうと、ホッとする。もう即虫歯になりそうなぐらい甘いリンゴを食べると、一切れ食べればもうそれでいいという気分になっちゃう。
なんで、リンゴはどんどん甘くなってしまうのか。
これはリンゴに限った話ではない。先のエントリ、勝沼「自然農法産」ぶどう狩り(8月28日)でも、ぶどうの糖度に触れたが、他にも、イチゴ、サクランボ、メロン、みかん、梨・・・・、挙げればキリがない。みんなどんどん甘くなってる。糖度至上主義にも感じるほど。果物じゃないけど、トマトやトウモロコシ、パブリカなどもどんどん甘くなってる。私の場合、甘いと一口目はいいんだけど、飽きるのが早い。そして、「この果物は、こんなに甘いだけじゃなかったハズだ」と思ってしまう。
少し大人なことも書いてみたい。人々は糖度が高いと「おいしい」と感じ、より甘い果物を求める。それで、果樹園の方々は、その「おいしい」のために日夜研究・努力され、高い糖度の果物が出来上がったのだ。そして、今や日本の甘い果物は海外でも人気が高く、重要な輸出品にもなっている。20年以上も前のこと、タイのバンコクの市場で、日本の柿や梨が山盛りになって売っていた。もちろん高い。あるタイの人に、「えー、こんなの買う人いるの?」ときいたら、「タイには果物好きな人がいるのよ。その人たちが買うのよ」とのことだった。
「甘さ」にはきっと魔力がある。
甘いリンゴを食べると「おいしい」と感じ、さらにより甘いリンゴを食べると「もっとおいしい」と感じる。そして、それより甘くないリンゴは「おいしくない」と感じる。
でもね。あえて言いたい。
酸っぱいリンゴもおいしいよ。青臭いトマトもおいしいよ。
「ふじ」が大衆化した中学生頃、私はすっかり甘い「ふじ」に傾倒していた。そのとき「リンゴ味」のガムを噛んで驚いた記憶がある。酸っぱかったのだ。そのとき、私は、「あれ、リンゴって酸っぱかったっけ」と「?」な気分になって驚いたのだった。それは「ふじ」の時代の前に食べた「青リンゴ」の味だった。そのとき、すでに「青リンゴ」の味を忘れかけていたのだった。
しかしその後、主に外国で食べたリンゴはみんなしっかりと酸味があり、それを「おいしい」と思うようになっていった。その後、日本の甘いリンゴを食べると、最初はおいしいんだけど、後から「くどい味」と感じるようになってしまった。
だから現在、何とか残っている「紅玉」が、私の一番好きな日本のリンゴになっている。あー、またあの酸っぱい青リンゴも食べたいなー。
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