2021年2月16日火曜日

今年の「素人なりのベストなドブロク」


毎年作っているドブロクで、中心になる材料は、無論、米(掛け米)だ。その米は、ここ数年、知人が栽培しているイセヒカリにしている。一般的に酒用の米は、粒内部のデンプン質が多めの米が適しているのだが、食用米の中でイセヒカリは若干酒用の米に近いと感じていること。そしてそのイセヒカリは直接知っている人が無農薬で作っているということがそれを使う理由だ。そこで昨年秋、その知人に「今年もよろしくね〜」と連絡を取ると、何と「今年は、イノシシにやられてほとんど全滅。自分ちで食べる程度しか残ってない」とのことで、そのイセヒカリはボツになってしまった。

そうして意気消沈しているところに、このCovid-19。人様に上げることも考えていたので、何となく、(自分のためだけなら)「今年はやめとこうか」という気分になってしまった。いつもは、だいたい年明けから仕込みを始めて、2月初めに完成というスケジュール。それが一番安定した低温の一ヶ月という意味でベストと思っていたが、年が明けてもやる気が起こらず時間が過ぎた。でも、毎年やっていることを、いざやらなくなってみると、何とも言えぬ寂しさのようなものがフツフツと湧いてきた。


ん〜、どーしよー・・・・、ん、やっぱりやろう。


となったのが、1月も半ばを過ぎた頃。そこから、材料を手配し始め、今月初旬から仕込みスタート。三段仕込みの留め添えを終えた。あとは、三週間の発酵を待つ。


冒頭の動画は、その一昨日の日曜日、仕込みが終わって、自作の泡切り器をセットしたところ。いつもは仕込みが終わって一週間後ぐらいから、様子を見ながら泡切り器をセットしていたが、今年は一ヶ月遅れの仕込みなので、すぐにでも気温が高くなる日がやってくるかも知れない。そんな日は一気に発酵が進んで、ボコボコとモロミが瓶からあふれ出るから、いつも以上に気を使う。


何でもベストでなくても、「人間万事塞翁が馬」と言うし、これでどうなるのかの経験になる。(=新しいデータになる)


このブログで再三、ドブロクに触れてきたので、何度も書いているが、私が目指すところは、「素人なりのベストなドブロク」だ。材料は、米(掛け米)・米麹・酵母・水(プラス乳酸菌)と表向きはプロの酒蔵さんと変わりないが、素人は、酒蔵さんが使う材料と同じものを何一つ使えない。


酒米は通常手に入らないだろう。ただし一度だけ(15年ぐらい前)、とある酒蔵さんから山田錦を送ってもらって作ったことがあるが、雑味がグッと減った記憶がある。


酒用の麹はもちろん、その種菌(黄麹)も、通常は手に入らないし、我が家に麹室もない。ときどき段ボール箱で簡易的な室(ムロ)をこしらえて麹を培養する人がいるが、面倒と感じてしまう。一度だけ、(上記とは別の)とある酒蔵さんから酒用黄麹の種菌をもらったことがあり、ホットカーペットを使って自分で培養して使ったことがあった。もう20年ぐらい前のことなので記憶が曖昧だが、何とかそれなりに出来上がったものの、えらい大変だった記憶がある。


酵母菌は、通常、酒蔵さんは、協会酵母(7号、9号等々)と言われるアンプルなどに入った純水培養された酵母菌を使うが、酒税法上、素人は入手出来ない。


水は省略するが、乳酸菌は、お酒の原材料名に載ってないが、使うことが多いと聞いたことがある。これも酒用があるのだと思う。発酵の初期段階で、雑菌の繁殖を防ぐのが目的だ。


材料だけでなく、当然ながら、設備も一般家庭にある程度のものしか使わない。麹室や空調、タンクはもちろん、搾り器などの設備もない。


ここでね。「ない、ない、ない」と、嘆くのではなく、「じゃあ、普通に誰でも(合法的に)入手出来る材料だけで、家庭にある設備だけで、その条件の下でのベストを試行錯誤してみようじゃないか」というのが私のドブロク作りだ。だから、毎年少しずつ、材料、配合、工程などを変えている。(販売は致しません、念のため)


今年使用の原材料は下記。


米(掛け米):キヌムスメ(鳥取産)コシヒカリの孫かひ孫ぐらいの品種。

麹米:有機白米麹(マルカワ味噌)珍しい蔵付きの麹菌。

酵母:十二六(武重本家酒造)非加熱の濁り酒。ここに生きてる酵母菌を使わせてもらう。

水:東京都昭島市の水道水(一日放置後に使用)100%地下水、最低限の塩素。

乳酸菌:自然発酵乳酸菌(ウエダ家)とマイグルト生酛造り(片山)を併用


前にもこのブログで書いたような記憶があるが、市販のおいしいお酒よりおいしくないと思う。(当たり前ですが) しかし、市販のおいしくないお酒よりはおいしいと思う。

こうして年に一度きりだが、自分なりにドブロクを仕込むことで、「あー、酒蔵さんはいろんなことを意図し、様々なことを考えながら作っているんだなー。スゴいなー」ということを肌で感じることが出来る。つまりは、市販のおいしいお酒を呑んだとき、それを作った酒蔵さんへの敬意の念を、心から向けることが出来るのです。それが私の「素人なりのベストなドブロク」の目的であります。


さー、今年はどんなふうになるかなー。完成予定の3月初め頃まで、何とか最高気温20℃以下が続いてくれるといいのだけど・・・・。いやいや、20℃以上になったらなったで「人間万事塞翁が馬」だった。

2 件のコメント:

サムライ菊の助 さんのコメント...

ここまでこだわって造れば、立派な密造酒ですねえ。
私も酒飲みの頃は、ひと冬で80ℓほど作っていました。
なにせ、材料が山ほどありますから。
自分で作ったドブロクがあまりにも美味しいので、
市販の日本酒が飲めなくなりました。
下条さんも多分そうだと思います。

下条剛史 さんのコメント...

> サムライ菊の助さん

80リットルはすごいな。漬物用の薄黄色のポリ樽でしょう。
(販売せずとも)そっちの方がよっぽど密造酒じゃないですか。

何でもいい訳ではありませんが、普段私は、市販の日本酒をのんでます。
おいしさって、ひとつじゃないので、ある程度いろいろのむからこそ、いろいろなおいしさを楽しめます。
もっと言えば、プロの酒蔵さんの同じ銘柄でも年によって出来が違うこともありますし。
こんなこと言えるなんで、何とも贅沢な時代です。