2016年5月9日月曜日

自前の船で、醤油搾り

遅ればせながら、今年の醤油搾り、3月10日に行った。
今年の新しいことは、何と言っても、船(搾り器)が自前になったこと。

いつもモロミを管理してくれている埼玉・秩父の黒澤氏が、昨冬、秩父の大きな古い農家にある蔵の整理を手伝っていたら、その蔵の中から、昔使っていた醤油の船(搾り器)が出てきたというのだ。おそらく何十年も使われていなかったので、復活にあたり、やや直しが必要なところがあったものの、十分に使えた。秩父には、「おなめ」と呼ばれる醤油のモロミに砂糖を加えて甘くした発酵保存食品が今でもある。モロミを食す食習慣が秩父にはあるのだが、私が想像するに、昔はそのモロミを搾って醤油を作っていたのではないかということ。しかし、搾るのは手間なので、今では簡単にそのモロミを甘くするなどして食されている、なーんて思うのだ。

そして、ビックリしちゃうが、古い蔵から醤油の船(搾り器)が出てきて、それを譲り受けたという同じような話しが、やはり埼玉・比企郡の川上氏にも今年あり、彼も今年は、自前の船(搾り器)で醤油を搾ったという。川上氏は、この3月10日の黒澤氏の搾りに、見学を兼ねて参加していた。

たまたま同じようなタイミングで、昔の船(搾り器)が2つも出てきて復活したということだが、こんな偶然ってあるんだろうか? と不思議な気分。そもそも自分たちで醤油を搾っていて、それを必要とする人たちが何人いるのか? 数十年も前に使われていた醤油の船(搾り器)が今一体いくつ残っているのか? 等々、考えれば考えるほど、不思議な出来事だと思う。しかし、数十年前までは、いろんな場所・地域で、醤油搾りが行われていたということは、言える。今のように、「醤油は買うモノ」が常識になったのは、この何十年かであって、その前までは、各地で(自分たちで)搾っていたのだ。それを私たちは忘れてしまっている。

以前、ドブロクについてのエントリで、私は下記のように書いた。

現代は、何でも「買う」ことが当たり前になってますね。便利って言えば便利だけれど、本当は、「自分で作る」がまずありきで、「自分で作れないもの」を「買う」ということだと思う。

●natural salt cafe: ドブロクのススメ(2014年1月30日)

さて、自前の船(搾り器)の復活デビューが一番の新しいことだったが、もう一つ、(今年の搾りのための)去年の仕込み直後に、温室のような醤油小屋を作ったことも以前のエントリで書いた。それがどのくらいの効果をもたらすかも、今回の搾りの注目点だった。

●natural salt cafe: 醤油小屋(2015年6月22日)

この醤油小屋は、去年お願いした搾り師の天野次郎氏のアドバイス「夏場の温度上昇が足りないのではないか?」を頂いて、作ったものだった。それまでは、吹きっさらしの軒下(南向き)にモロミの樽を置いていたのだが、それを温室に入れて、夏場の温度上昇を促した。結果、旨みが増した。色は、去年のゴールデンから濃いアメ色に変わった。香りも一段とよくなった気がしている。今年、天野搾り師に搾りをお願いしないのはやや負い目があるが、船(搾り器)を入手してしまっては仕方がないかと思う。

下の写真は、今年の搾り始め。
そして、搾り終わる頃は、


ちっとカメラのアングルが違うので分かりにくいが、去年と同様に、搾り終わりの頃の方が、透明度が増し、旨み・香りが増し、おいしい。去年の搾り時のエントリは、以下。

●natural salt cafe: 搾り師の醤油搾り(2015年3月17日)

やはり、ギューっと搾って、大豆の中心部からしみ出てくる醤油の方がうまいということか。「一番搾り」を珍重するオリーブの搾りとは反対なのだ。オリーブオイルはいわば、果実をそのまま搾ったジュースだけど、発酵・熟成したモロミ(大豆・小麦・塩)が搾られた醤油は、「最終搾り」がうまい。「一番搾り」というキレイに聞こえる言葉の響きに囚われてはいけない。

さてさて、搾りたての醤油は、当日少量もらってきたが、火入れ後の醤油を取りに秩父へいかなくちゃ。我が家は、この連休中、引っ越ししてバタバタ。なかなか行けないでいるのが気がかりだ。我が家の醤油が切れてきた。

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